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異世界は適応力が大事。

 澄んだ空気に、風に揺れる葉の音。

 視点を上にあげれば、木々の隙間から暖かな陽の光がこぼれる。正に自然あふれる風景。


 「へぁ?」


 随分とマヌケな感じに口を半開きで声が漏れ出した。

 ボク、ティルナは今地上にいる。


 手帳の日記を読んで少し反省などもあった日から結局、【結界】を作り出した魔道具のマナが切れるまで1月(時計も無く、日の浮き沈みも割らからないので感覚的になってしまうけど。)も地下に閉じ込められることになってしまった。


 でもまぁ、楽しい日々であったのは確かだ。

 

 日の光や外の新鮮空気が吸う事が出来ないだけ。屋敷にあった、本や魔道具本体にその魔道具を作る材料、布や服、剣に鎧、食糧、と言いた物を【結界】の魔道具を誤作動させる前に地下の牢屋に詰め込んでいたお陰で餓えや退屈とかは感じなかった。


 むしろ、屋敷で働かさせられていた時よりもちゃんとした食事もとれ。マナを注げば水が湧き出る魔道具のおかげで身体もしっかり洗え。ボロくて汚れて茶色くなった布の服(?)からまともな白地のワンピースの姿に。等々の生活水準が向上し。


 時間も魔法の勉強と魔道具を自作出来ないか実験したりしてあっという間だった。

 

 剣や鎧は、・・・ん~あれだ、なんか見てるだけで強くなれそうな気がした?

 だってさ、剣とか鎧って超重いんだよ!

 

 自己防衛のために役に立つかもしれないと思って、屋敷の倉庫に眠っていた物を頑張って運んできたものの。

 今のボクは食生活が良くなったから少しは肉付きが良くなり始めているけど、まだまだ身体は成長途中の子供。持ち上げるには力が足りず、無理に振り回そうものなら間違えて自分を傷つけて仕舞い兼ねない。

 正直に言って、キッチンから持ってきた包丁の方がまだ武器として扱える。


 とりあえずは、部屋のインテリアとしてその辺の片隅に転がして置いた。

 大事に倉庫にしまい込んでいた所から考えて、かなり価値のある代物なのかも知れないけど。使えなければ置物ぐらいしかならないのでしょうがないね。


 っと屋敷で奴隷扱いの時よりも、ずっとマシな生活が送れていたので【結界】が切れたい今でも、このままこの地下暮らしを続けても・・と思えるくらい良いものだっだ。


 でも、まだ大量に残っている食糧だけど、毎日は食べ、日を置けば傷んだりもして減っていく物だから、補充しなければいけないし、外の様子もどうなったか確認しければいけなかったので地下から出て来た訳なのだけど・・・


 出てみるとそこは青々とした緑が生い茂る森の中だった。・・・ナゼ?

 

 視界に広がる緑に疑問が浮かぶのは、至極当然事だ。

 前に地下から出て来た時は、真紅の高級が絨毯が床には敷かれ、真っ白な壁と廊下を照らす金の豪華な装飾が施された灯りの魔道具が壁に備わって、しっかりとした2階の床である天井があった。・・・のだけれど。


 今は、床も壁も天井もみんな何かも無くなり、かわりに木と草が生えている。

 

 「は?なんで?」

 

 いや、確かに違和感は上へと続く階段を上っている時に感じた。なんせ、上の出入り口が木の根っこに塞がれていたのだから、おかしいとは思ったさ。


 小さい身体だったから根っこの隙間を何とか潜り込ませて出る事は出来たけど。

 出たらそこには屋敷の見る影も無くなっているんだよ?ありえないでしょ!?


 もしも【結界】が壊れ、魔物が屋敷に入り込み暴れ回って屋敷を破壊の限りを尽くしたとしても、この木々は何だ?どう見ても1~2ヶ月程度で成長したレベルじゃなく、何十年も昔からここにありましたって程の大木まであるぞ。


 ボクの頭の中は予想してもいなかった異常に対処しきれず混乱を極めていた。

 けれど、一つの光明が頭の中に閃く。


 「・・・ファンタジー世界だ、こんな事もあるだろ!」

 

 ティルナはフカク、カンガえることをヤメタ。


 前世の一昔前のゲームだとこんな感じのテロップが状態異常を起こした時に流れて来たっけ。

 これは別にふざけている訳じゃない。・・・ほんのちょっとは、あるかな。

 でも、深く考える事を止めたのは事実。 


 魔法や魔物などの前世ではフェクション(作り物)だったものがこの世界では当たり前の様にあるのだ。

 ジ〇リに出てくる某森の主様的な能力を持った魔物がいて。ソイツが屋敷を壊したか壊れた後に来てここら一体に草木を生い茂らせ、驚異的なスピードの成長速度も与えたのかも知れない。


 前世なら確実に病院を進められそうなバカげた考えだけど、この世界ならあながち否定できないのだ。

 異世界転生を果たした時点で物理法則とか色々な物を超えてしまっているのだから、深く物事を考えた所で確実の答えは得られないだろう。


 ・・・どんな理由であれ、ボクが地上で暮らす家が無いって事には変わりない。つまり

 

 「ティルナは、引きこもり生活からサバイバル生活にレベルアップ?した。」

 テレレテッテテー。


 頭の中でむなしいファンファーレが聞こえた気がする。

 

 「・・・・・・」

 

 ボクはその後しばらく呆然と森を眺め、狭い木の根の隙間を通って地下に戻り丸一日不貞寝した。




 「いつまでも寝ていてもしょうがないので、やれる事からやって行こう。」


 次の日、昨日の気持ちを払う様に朝からテンションを上げていた。


 「さて、当初の考えだと、魔物の暴走モンスタースタンピードが静まった頃で逃げ出そうとしていたけど。・・・取り敢えずは留まろうかと考えている。」


 何故こんな考えになったのかと言えば、魔物の暴走モンスタースタンピードが起きてから多分2ヶ月も過ぎているのに近くに人がいる気配が無いからだ。

 ボクが地上に出ても直ぐに魔物に襲われることが無かったので、魔物の暴走モンスタースタンピードは治まっている可能性が高い。なのに、誰も人が戻って来ていないのはおかしい。


 街の人達が戻らない原因を考えてみて、思いつくのが2つ。


 1つ目は、街の人達が無事に逃げ出す事が出来ず、全員死んでしまった。


 あの日、直接魔物を見た訳では無いので、どんな魔物がどれだけの数いたのかわからないけど。街が崩壊するスピードから凶悪な魔物が数多く人を襲い、魔物の遠吠えも多く聞こえたので数もそれなりいたのは間違いない。 

 街から逃げ延びたにしてもしっかり装備を整えていなければ途中で力尽きる可能性だってある。

 

 2つ目は、この土地を放棄した。


 少し地上に出て周りを眺めただけなので断言できないけれど、森に街全体が飲まれているはず。

 屋敷の跡なんて地下の入り口があるぐらいで、それ以外は跡形もなく、草木ばかりがあるだけ。街もこんな感じなら、例え街の人達が無事に生き延びて戻って来ても。

 復興というお話のレベルじゃなく、何もかも始めからやり直しの開拓し直し。それだと元の街に戻すのに町に住んでいた人の倍は要るし、お金も莫大にいる。


 クーデターが起き、治安が悪いことを証明しちゃっているので人は集まりづらい。街も壊滅していてお金になるモノも無いだろうし。もの凄い貴重な資源がある訳でもない辺境の地だったので、こうなれば土地を諦める考えも出てくる。


 どちらも在り得そうな考えなのだけど気持ち的には、後者であって欲しい所。街の人間が全員死亡はボクが街の人を見捨てて1人生き残ったみたいで、気分がよろしくない。

 見ず知らずの人間を命を賭けて助ける!なんて性格じゃないし、あの時のボクに誰かを救う能力もなかったけれど、全員死んでいて欲しいとも思うほど非道ではない。

 

 街の人達は生きていて、森に呑まれたこの土地を見たか他の調査に来た人間に聞いたかして。

 もう街に戻うるのは無理、新しい土地でやり直そう。そんな風に思ってこの土地を諦めてくれている方がボクの気持ち的には良い。

 

 でもこれはボクの予想であり、確実な正解ではないかもしれない。


 しかし、別の場所に移り住むにしても、移動手段やその際の襲われた時の防護か反撃の手段など無いし。魔法は勉強していたけど、地下の密閉区間だったので、暴発、暴走事故を恐れて実際に使った試しは無いので、今すぐ頼りになる訳でもない。

 なにより、5歳児の子供の身体で当てもない長旅に耐えられか解らない。


 それにやっぱり、手帳の日記やその他の本から読みとったこの世界の情勢から考えると、余り人を信じれそうにもない。

 若干、人間不信に陥っている節はあるのかも知れないけど、人殺しを平気でする盗賊団とか奴隷制度がまかり通っている国。 なんてモノがあるみたいなので用心に越した事はないだろう。


 この土地を離れ旅をするにしても、出来ればもう少し体が大きく成長する、もしくは自己防衛が出来る力を獲得するまでは留まりたい。


 なにより、サバイバル生活が始まるっと言っても地下にはまだ食料もあるし、これからに役立ちそうな物資もあるので。何も無いゼロからのスタートじゃあないので問題は少ない。

 魔物も【結界】の魔道具がまだある(今度は、しっかりと取説を読んだ上で動かすので問題ない。・・はず。)し、最悪の場合は再び地下に引きこもれば良い。

 


 「したがって、何か致命的なトラブルが起きない限りはこの場所を拠点にして行動する。」


 てな感じで、ボクはこれからの指針を早めに決断し、サバイバル生活を開始した。


 それから【結界】の魔道具をちゃんと設定して正しく起動させ、正常な【結界】を張る事に成功。その【結界】の内側にテントを張り地上での生活を始め。

 周りを警戒しながら街の方も観てみたけど、殆どが森の木々に呑まれて人工物らしきものは残っていなかった。それに加えて魔物とかの事も考えれば街の人達が戻ってくるのは本当に無理そうだ。


 それを目で確認して、しばらくは本当に他の誰かに害される事もなく、のんびりとした暮らしが送れるだろうと確信すると拠点に戻る。


 拠点では、長期的に考えて【結界】内に小さな畑を作り食糧の自給と魔法の本格的な練習を始めた。

 色々問題もありつつ、地下から引き続きのんびりスローライフに近いサバイバル生活を楽しみ、日々が過ぎ去っていった。

遅くなり本当申し訳ないです。



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