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ナニコレ?

 ボクが前世の記憶を思い出してから1週間ほど経った。

 

 夢であった理想のスローライフの為に動き出したボクは、現代日本とオタク的な知識の中で想い付く限りの行動を起こしてみた。

 

 まず、ボク自身にラノベの主人公みたいなチートな力があるのか

 ステータスやメニューとかのゲーム的な物や魔法が頭の中でイメージしたら出来たとか

 見た目、子猫や小鳥なのに凄く強い神獣もしくは伝説の魔物をこっそりペットにしている。など検証してみたけど。


 ・・・まぁ、無かった。


 うん。 いやね、そうそう都合よくいかないのが現実だって解っていたけどね。

 物語の主人公みたいに異世界転生をしたんだから・・・っと、甘い考えだったかぁ。

 

 でも、もしかしたら何かしらの条件があるのかピンチに陥れば覚醒するとか、かも知れないけど。

 それを調べる時間も無ければ、命の危険を冒してまで試したいと思わなかった。


 っと言う事で、とりあえず現在のボクはチート的な力は無かった訳だ。


 もし物語の主人公みたいなチート能力があれば、この屋敷や街から直ぐにでも逃げ出して

 どこか安全な街か村を探し、そこで夢であるスローライフな日々を送る事が出来たのだけど。


 無いモノに頼る事は出来ないのでしょうがない。

 なので地道にこの世界の情報を集め、迅速に逃げ出すプランに頭を切り替え動いたのだけれども、これが思いのほか上手くいった。


 ここで、領主の屋敷に転生したのが功を奏したんだ。


 周りの人間が敵だらけで生活が奴隷並みの劣悪な環境だけど、ここは一つの街を収めている領主の屋敷。

 幾ら、現在のブタ領主がまともに働きもせず女遊びばかりしているからと言って。


 先代か、はたまた先々代の領主も同じ様な人間とは限らない訳で。歴代にはまともな領主がいた。

 その人が街の資料や自身か後継者の為にと勉学の本を集め、蔵書室に大量に保管していてくれたのだ。


 しかも、現在の領主はもちろんこの屋敷で働く者たちも滅多に蔵書室には入らないし。

 ボクに1階の掃除の仕事をさせられることも多く。丁度1階にある蔵書室に出入りしても変な疑いをもたれる心配もない。


 お陰で、この世界の文字を学ぶ事が出来て、ある程度の文字を読む事ができるようになり。街の資料や様々な本からこの世界の情報も知る事が出来た。


 更に、魔法や錬金術なのどの入門書から上級者向けの専門書を偶然にも発見した。のだけど、専門用語など難しい単語が多く中々読み進められてはいない。

 それでも、ファンタジー定番の魔法と錬金術が学べるとあって並々ならぬ熱意で勉強中です。



 あと、少し話がそれるけれど。今世は前世の記憶と比べて、格段に物覚えが良い。


 前世は英語はもちろん難しい漢字はスマホで調べるぐらいの記憶力で、学生時代もそこまで成績は良くなかった。なのに今は1,2度見るだけで文字を覚えてたり、覚えた事の応用も簡単に頭に浮かび出来てしまっている程だ。


 この一週間という短い期間でここまで文字を取得できたのも頭のスペックが良かったからだと思う。でなければ前世の記憶力のままだったら、たとえ子供用の解りやす学習用の本が在っても、今でも唸り声でも出しながら本とにらめっこしていたはず。

 地味にこの時、初めて転生していてよかったな。と素直に想えた瞬間だったね。



 さて、話を戻すのだけど。

 とりあずこの世界の情報が手に入り、ついでに屋敷の庭にある倉庫から古くて使われていないボロの麻袋や食糧庫から生でも食べれそうなもを少し拝借・・・いや、日ごろの給金代わりに持ってきたりして生活環境を向上してみたりもしたのだった。


 そんな感じで割りと一週間、屋敷の人達にボクが逃げ出そうとしている事を悟られない様に気を付けつつも色々と行動を起こし、このまま何事も無く数ヶ月もあれば逃げ出す事も夢では無い。と希望が沸き始めていた所。


 ・・・だったはずなんだけども。





 いつもならボクは絶対に上がる事の無い2階の部屋の窓から外を観ると。

 屋敷を囲む塀の向こうに夜中で辺りは真っ暗闇なはずなのに、多くの人達が松明を片手に持ち、怒声を上げながら屋敷を取り囲み明るく照らしている。


 この様子を観れば誰でも理解するでしょう。

 えぇ、そうです。・・・クーデターが起きました。


 いや、そうだね。最近の街の資料とかも見ても街の経営はガタガタで税を絞れるだけ絞り上げ、まともな仕事は一つもしない。

 治安維持も全くせず・・・ていうか。むしろ、領主側の人が平然と罪をでっち上げて無実の人間を処刑したり、女の人達を攫っているぐらいで治安を悪くしていたし。

 それで遂に、街に住んでいる善良な市民が怒りを顕にしたんだろう。


 


 ふう。・・・マジかァァァ


 タイミング。このタイミングでかぁ!


 そりゃあ、ここまで最低な領主にキレない方がおかしいのだろうけどね。


 せめて、ボクが逃げ出した後か、いつでも逃げる準備万端の時に起こして欲しかったよ!

 

 うぁああぁぁ、最低な時にクーデターに巻き込まれてしまったぁぁ。





 ・・・はぁぁぁ。くそ、落ち込んでる場合じゃない!落ち着いて、冷静に今の状況を整理しよう。


 観た通り、屋敷の周りは怒りで満ちた民衆がぐるりと取り囲んでいて、松明を片手に持ちや鍬や斧で武装している人や剣とかちゃんとした武器を持った兵士の姿もちらほらしている。


 ただ、クーデターにいち早く気が付いた領主が防衛用の強力な結界を発生させる道具を使った為、今の所は屋敷の敷地には誰も入って来れずにいるけど。それも時間の問題。


 屋敷正面の門の前には、数人のそれぽいローブを着た魔法使い風の人達がいて、木製の杖を高く掲げて結界を壊そうとしている。その証拠に、その木製の杖の先端は淡く輝き、何もないはずの空間が蜃気楼みたいに揺らいで観えるのだから。


 例え壊せなくても人が通れる位の穴を開ければいいのだから、時間さえ在れば出来る事だろう。

 

 それで、屋敷の中はと言うと。

 外と打って変わって、しんと物音一つ無く静かなものだ。


 普通ならもっと慌てふためく叫び声や防御用のバリケードを扉に作る為の物音が聞えて来るのだろうけど、何も聞こえてはこない。

 それもその筈。だって、この屋敷の中にはもう、ボク以外の人は誰も居ないのだから。

 

 

 屋敷で働いていた人の数名は事前にクーデターが起きるのを知っていたのか、前日から居なくなっている者や日が落ちて暗くなってからこっそりと裏門から出ていった者が多く。

 残りの領主一家とクーデターの事を何も知らなくて残っていた使用人たちは、金に換えられそうな物だけ持って領主の執務室にある秘密の地下通路を通って屋敷を、街から逃げ出した。今頃、街の外に出ている筈。


 逃げ道が確保されているなら、どんな人間でも自身の命惜しさに逃げ出すのは自然な事だろう。

 では、何で僕が屋敷に一人残っているのか。

 

 奴らが逃げ出す時の事。ボクがいつもの地下の牢屋部屋に居ると慌ただしい物音が聞えて来たので、様子を見に地下から出て行ったのが良くなかった。

 地下から階段を上がり玄関前の広間に顔を出した所で、突然後ろから誰かに羽交い絞めにされたのだ。


 ボクを羽交い絞めにした人物は、腹違いの兄でボクを捕まえると大声で

 「オイ!誰かロープを持ってこい!コイツを餌にして時間を稼ぐんだ!!」

 

 歪んだ笑みを浮かべヤツはそう宣うとボクを無理やり2階の部屋まで連れ込み、使用人が持ってきたロープと部屋にあった椅子にボクを座らせ、そのまま雁字搦めに縛り上げた。


 「じゃあな!たっぷりと時間を稼げよマヌケ!!」

 そう言い残し、高笑いしながら部屋を出っていった。


 その後ボクは、割と大雑把な感じに縛られてたので多少時間が掛かったがロープから抜け出す事が出来た。 あいつらの逃げる方法も聞こえていたので、ボクも逃げようと秘密の地下通路のある執務室まで行ったのだけど地下通路は土で埋まって通り抜ける事は不可能な状態だった。


 多分、あいつらの誰かが追手がこの道を通って来ない様にする為に魔法かなんかで道を塞いだんだと思う。


 塞げるんなら、ボクを残す必要ないだろう!!


 クソ仔豚野郎のバカな考えで、こうしてボクは一人屋敷の取り残されたんだ。

 

 それで再び2階に戻り、窓から外を確認すると松明を片手に持った民衆が屋敷を既に取り囲んでいて。

 もう逃げだす余地は無かったんだ。

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