表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

美少女戦隊ナイス・バディーのエシャーレット 〜乳酸菌発酵調教の末、美味しく食べられる〜

作者: ぬか漬け推進委員会

『子曰、里仁爲美、擇不處仁、焉得知』

 先生が言った。仁愛の心に重きを置くことは美しいことだ。だが、自分の利益のために仁愛を軽んじるなら賢明な人間だとは決して言えない。

(論語 里仁第四の1)

「来たなエシャーレット。一人でよく戦った。まさか、ヌーク四天王、キャロット、ラディッシュ、キューカンヴァ、エッグプラントを破り、ここまで来るとはな……。だが、私は倒せないぞ!!」とヌーカは独特の異臭を放ちながらエシャーレットの前に立ちはだかる。


 さすがは悪のリーダーね、四天王が倒されたからといってまったく動じていないわ、とエシャーレットは思いながら、ヌーカを睨みつけた。だけど……


「あんな萎れた奴らに私は負けたりはしない! 悪の根源、ヌーカ! これで残ったのはあなただけ! 滅びなさい!」


「ははは! 私は滅びはしない。人々は私を求めるのだ。ある者は美容に良いと、喜んで手を染める。夏の暑い時期など、一日に二度、私を求めてしまうくらいにな!」


「五月蠅い! だまれ! その異臭が迷惑なんだ! それに、お前のために切り捨てられた人々がいることを忘れるな! 無残に搾り取られ、捨てられた……」


「くだらないな。必要な犠牲だ……」


「巫山戯るな! 捨てられた側の気持ちがお前には分かるか!」


 もう、あんな無残に搾り取られ、うち捨てられた姿を見たくはない。エシャーレットの悲しい思い出だ。


「馬鹿を言うな。どうせ、三角コーナーに捨てられる運命だった。奴等はゴミだ。捨て野菜だ。有効に活用してもらっただけ、ありがたいと、私が感謝されたいくらいだ」


「あなたとはどうやら平行線なようね……。もう、戦うしかないのね。残念よ、ヌーカ!」


「私と戦おうというのかね? 馬鹿なやつだ。今の東京の気温は23度。もっとも私が活発に活動する時間だ。もっと暑ければ冷蔵庫で眠っていたものを……。憐れな奴だ」


「私を憐れむな!」


「憐れまなくてどうする? 私には分かるぞ……。そうだな……エシャーレット。そのままで戦えるのか? 最後の戦いだ。余興継いでに、お前が変身をしている間、何もしないでおいてやろう」


「当たり前だ! 変身ーーーーーーーーーーーーー」


 その瞬間、エシャーレットの全てが露わになる。白い陶器のような肌。だが、肌は柔らかく、光沢がある。膨らむ所は膨らみ、そして細いところは細い。そして緑色の髪から漂う、朝シャンを終えたばかりの女子高生のような香り。


 ヌーカは、そのまま食べてしまいたい衝動に駆られながらも、ぐっと我慢する。奴の生意気な女は、完全に屈服させ、自ら「どうか私をお食べください」と懇願させるのが一番だ。そして、それが自分の存在意義であることも知っている。


 ・


 ・


 ・


「待たせたわね! これであなたも終わりよ!」と変身を終えたエシャーレットは、ヌーカに向かって仁王立ちをする。


「ふはははは……。エシャーレットよ、お前の変身シーンを見ていて、気付いたことがある。お前……寄せているだろう?」


「はっ! こっ、この変態が!」


「だが、反論は出来まい?」


「くっ……」


 エシャーレットは反論できなかった。たしかに、エシャーレットは寄せていたのだ。


 完全な余談であるが、美少女戦隊ナイス・バディーはFカップ以上でしか、その戦隊に加わることはできない。そして、エシャーレットはその基準を満たしていなかった。


「所詮は偽物だな……」


「わ、私を偽物だと言うな! 私はエシャーレットだ!」


「寄せていたことは否定しないのだな? 柔らかくて、おっきい。まさかそれが偽りだったとはなっ!」


「……」


 エシャーレットは何も答えることはできない。なぜならそれが真実だからだ。嘘は付くことはできない……。嘘を付いたら、自分の正しさを全て失ってしまう。いままでの自分に嘘を付きたくはない。


「それに、お前は分かっちゃい無い。お前は世間知らずだ。箱入り娘だ。外の世界の厳しさを知らない箱入り娘だ! だが、私には分かるぞ! お前はしょせん、《らっきょ》だ!」


「その名前で私を呼ぶなぁ!!!!!!!!!!!!!」


 完全に本題であるので説明しよう。エシャーレットは品種でいえば完全に「らっきょ」である。エシャレットは、柔らかい土を「寄せた」ものだ。そして、柔らかい土で育て、固くならないように軟白栽培した。そして、ピチピチのうちに収穫したものを言う。ゆえに、らっきょとは違い、生で食べても美味しいのだ。だが、そのような調理法では、この小説の意味がなくなってしまう。





「だまれ、らっきょ!」


「うぅ……私は「らっきょ」じゃない……。私はエシャーレット。お洒落なの……」

 

「戦意喪失か? ならばこちらから攻撃させてもらうぞ!」


「や、やめて! 私を脱がさないでぇ! 汚れちゃってるのぉ!」


 エシャーレットの懇願空しく、エシャーレットが纏っていたスケルトンの服……つまりサランラップがヌーカにより剥ぎ取られた。


「くくくぅ。泥まみれだったとはな。ますます食べたくなったぞ! 新鮮で歯ごたえも良いだろう。若々しい肉だぁ」


 エシャーレットは産地直送のため、泥がついている。


「なっ……なんて嫌らしい手つき。キスしている間に、すっと右手を背中にまわして、右手だけでホックを外されているみたい!」


「その、緑色の髪を束ねたリボンも外させてもらうぞ!」


「や、やめて! それは、過疎化と高齢化に悩む村で、農家を継いでくれる誠実な人が私に巻いてくれたリボン。毎日私に足音を聞かせてくれて……まるで嫁を送り出すように私を送り出してくれた人が……! あっ……」


 その瞬間、Zwillingの包丁によって無残にもそのリボンは切られた。


「あ……あぁ……」

 その瞬間、エシャーロットの体の力が抜けていくのが分かった。エシャーロットは力なくその場に座り込む。まるで、まな板の上の鯛と形容するに相応しい、見事な「らっきょ」であった……。


「ははは。もう抵抗はできまい。このまま私が食べてしまおうか?」


 ヌーカの声に迷いはなかった。エシャーロットはその声が急に恐ろしくなった。エシャーロットは、花も恥じらう……というかまだ花も咲かせたことのない初心な乙女である。


「お……お願い……せめて、この泥を……。汚れたままじゃいや……」


「ぬははは。それでは私が自ら手洗いしてやろう。それに、水気が残らぬようにキッチンペーパーで綺麗に拭き取ってやろう」


「こ、この変態!」


「ほら……洗ってやるぞ。ほらほら……」


「やっ……そこは……。お願い。そこは……そこは駄目!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ・


 ・


 ・


「こ、こんなことをして許されると思っているの! ヌーカ!」


「ふふふ。もう遅い。お前がいる場所はどこか、分かっているのだろうな?」


 エシャーレットの体が沼地に沈んでいく……。


「なっ! ここは! 体が沈んでいく! ここから出して! なに? この匂い!」


「ははは! このヌーカ様の体内だ。お前はこのままぬか漬けにされるのだ!」


「お前の体内? け、汚らわしい……! ここから出しなさい! それに臭いわ! い、痛ぃ。叩かないで。お父さんにも打たれたことがなかったのに……!」


「馬鹿を言うな。お前を叩いているわけではない。糠を叩いているのだ。空気が入っては上手く発酵しないからな」


「な……なんてことを……私をどうする気?」


「お前をこれから美味しく食べてやろうというのだ。お前はすぐに、私を食べてと自ら懇願するだろうよ」


「そっ、そんなことはないわ! 私の体をどうにかできても、私の心はヌーカ! あなたの思い通りにはならないわ!」


「気丈だな。エシャーレット。常温なら2日、冷蔵庫の中なら4日か。お前ほどの強敵は久しぶりだ」


「や、やめて。蓋を閉めないで。暗いのは苦手なの……」


「ははは。さらばだエシャーレット。このままお前は、数日の間、乳酸菌発酵調教を受け、そして最後は、私に美味しく食べられるのだ!」


「そ、そんなのいやぁぁぁぁぁぁ!」


 その後、エシャーレットの姿を見た者はいない……。

エシャーレットのぬか漬け以外の美味しい食べ方をご存じの方は、感想欄にその料理法を教えて戴けたらとっても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ