ニャートスの不安
無敵のニャートスにも解決できない問題が!大好きなお母さんを傷つけたくないから。落ち込むニャートス。心配するぴかりん。
お母さんが仕事から帰ってきた。「ニャートス」玄関から声がする。ゆっくり台所の椅子に座り込むお母さん。ニャートスはテーブルに飛び上がり、体をくねらせて、お母さんに甘えた。「ニャートスはいいわね。」お母さんは疲れきっていた。別居中の夫の事で深く悩んでいたからだ。夫は浮気をしていた。お母さんが仕事と家事を両立させ、どんなに働いてきたか見てきたニャートスは、夫を許せない気持ちだった。お父さんとニャートスは心で呼んでいたが、今はお父さんだなんて思わない。勝手に出ていってしまい、お母さんがどんなに苦しんでいるか。夫は両親の住むアパートに身を寄せている。そこから、女の家に通う生活だ。ニャートスは、お母さんが、争うことなく、離婚したい気持ちをよくわかっていた。だから、いつものように、探偵や刑事のような真似はしない。プルル、、、ニャートスの携帯にニコルおじさんからのメッセージが届いた。夫の女が妊娠しているということ。そして、慰謝料を払うことなく離婚しようと画策していることが書いてあった。ニャートスは悲しい気持ちになった。お母さんが知ったらどんな気持ちがするだろう。心配そうに見つめるニャートスに、お母さんは、「もう、いいのよ。私もまだ30代だし、やり直したいわ」そう言って台所に立つと料理を作り始めた。お母さんは家では唯一、ニャートスだけが話し相手だった。「あなたには、分からないわね」と笑ったが、ニャートスは「お母さん、全部知ってるよ。お母さんが知りたくないことまで、知ってるんだ」でもお母さんには、ただ にゃーんという鳴き声しか聞こえない。しょんぼり窓際に座るニャートス。コツコツ 小さい音で外を見るとそこには ぴかりんの姿が!「なに?」「遊びに来たの。話がしたいから。」「ごめんね。今日は何も話したくないんだ」ニャートスはすっかり落ち込んでしまった。ぴかりんは そっとその場を離れた。ニコルおじさんにメールを送る。ニコルおじさんは今ニャートスがお母さんの事で辛いんだと説明した。「何かあたしにも力になれないかしら?」ぴかりんは、ニコルおじさんに教えてもらった女の住所に行ってみた。すると「わぁ、かわいい三毛猫!」20代らしき女がぴかりんを抱き上げた。そして、そのまま自分のアパートに連れ帰った。女は皿に牛乳を入れて「ほら、飲んで」と言った。ぴかりんはすぐにおばあさんの顔が浮かんだ。「ぴかりん、牛乳は飲んじゃダメなんだよ」おばあさんはわざわざ子猫用ミルクを買ってきてぴかりんに、飲ませてくれていたのだ。「飲みたい」ごくんと喉をならしたが、ぴかりんは牛乳を飲まなかった。女は次にパンをちぎって口に運んでくれた。「美味しい」我慢できずにパンを全部食べてしまった。女は大きなお腹をしていた。部屋にはベビー用品が置いてある。とても幸せそうに見えた。「この人、悪い人じゃないんだけど、ニャートスのママを苦しめてるのよね」ぴかりんは女に同情しそうになる気持ちを押さえて、なんとか、ニャートスのママに有利な情報はないのかと探すことにした。「猫ちゃん、今日はここに泊まりなさいよ。」女はぴかりんをそっと抱き上げ、自分のベットへ連れて行った。「あったかくて、気持ちいい」そう言って、女はぴかりんを抱き締めた。ぴかりんは、いつの間にか眠っていた。気づくと女の枕元だった。女はベットで寝ており、その横にニャートスのママの夫が眠っていた。ぴかりんは、ニコルおじさんにこっそりメールした。おじさんは「分かってる。こちらからでも、見えているよ。でも、ニャートスのお母さんは、夫と傷つけ合って別れたいとは思ってないんだ。ただ、この二人の悪いところは、ニャートスのお母さんを苦しめていることになんの罪悪感もないことだ。それだから、慰謝料を払わずになんとか別れる方向へもっていこうとしているんだよ。」それを聞いたぴかりんはため息をついた。ニコルおじさんは「ぴかりん、おばあさんが待ってる。早く帰りなさい。」ぴかりんは急いで家に向かった。