月
ぴかりんは、天気が良いので、おばあさんと二人で庭で日光浴をしていた。すると、おばあさんの娘がやってきた。なんだか神妙な顔つきだ。おばあさんは「どうしたの?」と聞いた。すると、「しばらく泊めてくれる?」と言い出した。娘は、客用の寝室に入ったきり何時間も寝ていた。おばあさんはぴかりんに「もう夕方になるよ、大丈夫かね」と心配していた。娘は、夕飯になっても寝続けた。夜になり、起きてきて、ぼっーっとテレビを見ている。おばあさんは「何かあったの?」と聞いた。「離婚しようか悩んでいる」娘はうつむいて、答えた。ぴかりんは、娘が帰ってきたら、嫌だな、追い出されるかもと不安になった。娘は猫が嫌いなのだ。おばあさんは「あれは、昔から神経質だからね。大したことなければいいんだけど。10年も連れ添った旦那と今さら離婚だなんて大変よ。」といつもみたことのないような顔をしていた。二人には子供がいた。でも、事故で数年前に亡くなっている。娘はそれから、元気がなくなり、心療内科に通うようになったそうだ。ぴかりんは、ニコルおじさんに相談した。ニコルおじさんは「うーん。精神的に病んでるね。もっと花や海、空、景色を見て、心を外に向けなきゃ、内に内にこもってしまっているよ。」ぴかりんは、昼夜逆転した生活の娘に、夜、月光浴をしたらどうかとおばあさんに提案した。おばあさんはそれはいいわねと言い、月の綺麗な日に月の光を浴びる事で癒され、心が軽くなる話を娘にした。娘は知らん顔していたが、ぴかりんが、椅子に座って月を見ていたら、やってきて、窓を開け、月をじっと見ていた。「気持ちいいわね」娘は外に椅子を持って出て、二時間も月を見つめていた。戻ってきた時には、本当に優しい顔つきになっていた。それから、毎日娘は月光浴をした。どんどん顔が優しくなり、穏やかになった。「ギャンブルばかりして、家庭をかえりみない夫が嫌になったの。」娘は一言ぴかりんに話した。「私も自分の好きな事を見つけるわ。それから、決断してもおかしくないでしょ?」と笑った。次の日、娘は家に帰って行った。娘は外国語大学を出ており、英語が得意だった。留学の経験もあり、専業主婦だった彼女は、通訳として働く決意をした。就職先を見つけて、どんどん変化していった。もう経済的にも自立して、夫の収入に頼る事もなくなった。結婚はしたままだから、彼女はいつでも一人で生きていく力ができた。それは、欠かさずしている月光浴のおかげだった。月はすごいパワーを持っている。優しくなった娘とぴかりんは仲良しになった。ぴかりんは、「私たちは宇宙の一部なんだから、どうやっても宇宙から外には出れないのよ。大きなお家みたいなものね」と話した。




