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熊だってこっちを恐れてる

ぱち、ぱちんと火花が弾ける。

焚き火は敵方に居場所を晒す事になるが、最早ここは戦場で、あちこち焼け跡や残っている火が燃えているから問題ないだろう。今の内に体をやすめておこう。ここ数日ろくに眠れてないが、それは総司や五百夜、八ヶ代も同じ事だ。会議やら何やらで忙しい。実践という物が分かってきたのかやっと打ち解けた会津藩兵の中にも、未だに正面突破を、それが武士だ、などとのたまう者が居る。

(疲れた、な・・・・・)


動きっぱなしの身体は、そろそろ満身創痍になるだろう。五百夜は隊長としても医師としても休む間もなく働き、ある程度の傷は自分の回復能力を信じて黙って自分で止血や手当をしている。そろそろ限界もあるが。ぱきっつ、と枝を踏む音がして、振り返る。殺気はないから敵ではないだろう。

予想通り、そこには五百夜と八ヶ代、総司とどういう訳か離脱した筈の鈴谷も居た。


「・・・どうした?」

声をかけると、異変に気付いたのかすぐに五百夜が俺の洋装の裾をめくった。

生生しい傷を、不恰好に手当された包帯が現れる。五百夜は表情を曇らせると、桐箱から道具をとり出しててきぱきと処置し始めた。


「毎回毎回、斎藤さんは我慢強いですね。」

心なしか斎藤の表情がゆがんでいる気がして、すぐにズボンをめくる。

すると自分で処置したのか、不器用に巻かれた包帯と生生しい傷が見えた。

今、烈は人生で一番忙しい。医師として、隊長として、二つの役割をこなしているからだ。

だからだろう、彼は烈に気を使って言い出せなかったのだ。傷は歩くのも痛いであろう程酷い。よくもここまで耐えたものだ。


創傷処置を施し、筋肉を傷めていないか確認する。よかった、内部は大丈夫なようだ。だが数日の疲れがたまっているだろう。足の裏を軽くマッサージし、固定する。出来る限りの処置はしよう。


「失礼しますね。」

服の上から触診しただけでは分からないだろう。表情を彼は表に出さない。

だからボタンをはずして脱がせる。やはり、脇腹にも怪我をしていた。銃弾がかすめたのだろうか。酷くはないが、彼一人で処置をするには大きい。布にアルコールを含ませて傷口の周りを消毒する。


やっぱり、彼を一人のするのは不安だ。

彼は自分が限界である事を、誰にも言わない。だから、きっと回りに気にかけてくれる人が居なければ一人で倒れるまで突っ走るのだろう。


「・・・尾形さんに、最低限に医療の知識を伝えました。そして、斎藤組長の事も頼んでおきました。彼は最後まで貴方と共に戦うだろう。だから、無理をせず彼を頼ってください。」


手当を終え、顔を上げる。しっかりと斎藤の顔を見つめて、伝えなければ。

最後かもしれない別れを。思えばよくもここまで生きてこれたものだ。奇跡といっても過言ではない。


「私たちは、これにて会津新撰組と一旦別れ、函館へ向かったという土方さんたちを追います。途中で投げ出す形となってしまい、大変恐縮ですが、ここでお別れです。」


烈の言葉にふ、と斎藤が笑う。


「ずっと考えていた。俺は八ヶ代と一緒の年で、お前の年下だ。丁寧な言葉遣いは、本来俺の方がすべきだろう。」

そ・・・・そういやこいつ、年下なのか!!!!!

衝撃の事実。俺、なんか老けてね?


「・・・確かにな。んじゃ、一。・・・・・新撰組を、頼む。」

頭を下げる。気のいい奴らだった。一緒に居て楽しい、一緒に生死を分けて戦ったーーーーーー


「土方さんに伝えてくれ。俺達新撰組は、闘っている、と。」


「ああ。必ず伝える。」

年下とは思えない程しっかりした動作で、斎藤もまた頭を下げた。


「いままで大変世話になった。感謝してもしきれない。またどこかで会おう。お前には、一番辛い役目をさせてしまうかもしれない。だが頼む。新撰組を最後まで見届けてくれ。そして、共に戦おう。」


斎藤の言葉に、しっかりと頷く。最後まで、闘おう。俺は戦場で生きる。

沖田がごほ、と嫌な咳をして、言葉を発する。


「私はそろそろまた限界のようです。一旦、戦場を離れてからまた函館で戦います。

・・・・・・近藤さんの分も。」

沖田の言葉にひやり、と嫌な汗が流れた。知って、いたのか。一同茫然として沖田を見る。

沖田はにこ、と笑うと、当然でしょう、と呟いた。


「隊士を一人、脅したら簡単に喋ってくれましたよ。何度土方さんを殺そうと思った事か。---でも、もういいんです。」

ものすごく物騒な言葉が聞こえた気がしたが、心の内にとどめておこう。


「居場所をなくし、私を拾ってくれて、居場所を再びくれたのは近藤さんだった。私のとって、あの道場は、嫌な事も沢山あったけど、家族みたいな所だったんです。だからーーーー近藤さんの、私の家族がーーーー土方さんや一君、左之さんや永倉さんが生きるなら、私も生きる事にしました。この命、新撰組の為に使おうと思います。だから、一君も、生きて。」



沖田の言葉に斎藤はしっかりと頷いた。

そして頭を下げる。


「互いに志を遂げ、また相見えんことを。」


斎藤の言葉に、3人、頷き合う。


「いくぞ!」

行こう。舞台を終わらせる為に。

繋がりを終わらせる為に。


幕引きは、すぐそこ。

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