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恋は盲目

近藤は斬首。首は歴史通り晒される事はなかったが、土方の必死の助命嘆願は無駄に終わった。

沖田と共に会津に到着し、土方達を待っていた新撰組に届いたのは、土方・閃が宇都宮攻防戦に巻き込まれ、闘ってで負傷した、という報せだった。


「土方さん!!閃っつ!!」

土方は戸板で運ばれてきたあたり、重傷らしい。すぐに療養となり、閃は足を負傷したようで引きずっていた。


「どうだ?痛むか?」

「・・・少し。」

銃で撃たれたらしい足は、良順が診たとかで綺麗な手当がしてある。あの閃が、怪我?それも足を引きずる程の。歩いていたあたり重症ではなさそうだが、引きずりながら歩いては悲しそうな表情をする閃を見て、ある感情が芽生え、大きくなっていった。


「烈。お前、最近寝てないんじゃないのか。」

フランス式訓練をしていたらしい鈴谷が、洋装で此方にやってきた。

彼女の顔には不安そうな表情が浮かんでいた。


「・・・お前には関係ない。」

ふい、と視線を反らす。鈴谷は目を見開いて必死な表情で声を張り上げた。

「関係ある!私はお前とっつ・・・!」

「だから、なんだ?」

低く、冷たい声でそう言い放てば鈴谷がびくっ、と肩を震わせた。

もう疲れた。哀しい。辛い。いろいろな感情が入り混じっては消えてゆく。

人の感情は簡単じゃない。いろいろな想いが入り混じっているのだ。


「お前が俺に対してどんな感情を持っていようが関係ないが・・それを笠に俺を守るだの、出しゃばって勘違いをするな。俺はお前なんかよりももう遥かに強い。それに俺にもう話しかけるな。お前がその感情を出して話しかけてくるなら迷惑だ。」

烈の言葉に、信じられない、という表情で鈴谷が此方を見た。

暗い感情が渦巻いては消え、また渦巻いては消える。


「女は今の新撰組に必要ない。目障りだ。消えろ。・・・それに、お前みたいな女、誰が相手にするか。」

烈の辛辣な言葉に、今度こそ鈴谷が珍しく動揺してわ、悪い、と呟いて何処かへ消えた。


* * * *


辛い。身を切るように、つらい。いっそ死んでしまった方が楽かもしれない。今まで何を舞い上がっていたんだろう。何も、烈は何も言わなかった。ただ勝手に、同じ気持ちだと勘違いしていた。バカみたいだ。あたり前だ。こんな男女、それも恋人が居たような女、誰が好きになる。頭では分かっているけど、辛かった。あれから三日。出来るだけ顔を合わせないように、訓練を積んでいた。ふとした拍子に、新撰組に居る意味はあるのだろうか?と考える。だが頭を振って、訓練に没頭した。


「・・・・辛い。」

気付けば勝手にそう呟いていて、慌てて頭を振る。見てるだけでもいい。もう話しかけないから、せめて、仲間で居るだけでもいい。

手を伸ばしたから、いけなかった?

後悔が後から押し寄せる。


ふ、と顔を上げれば、視線の先には烈が立って居た。

(・・・なんでこんな時に・・・・・・)

慌てて木陰に隠れて様子を見る。

何やら閃と話し込んでいるらしい。二人はいつも仲がいい。

すると、烈が真剣な表情で閃に近づく。サラッッ、と烈が閃の髪紐を解いて、ゆっくりと二人の顔が重なった。

ああ、閃の髪は絹のような髪だ。なんて、場違いな事を思っていた。

そういう事なら、早く言ってくれればよかったのに。

暗さが心を満たしていく。どっちにしろ、だ。

どっちにしろ、もう新撰組ここには居れない。


パキッツ、と枝が折れる音がして、バッツ、と二人の視線が此方へ向く。

やらかしてしまった。此方を向いた時の烈の表情は、困ったような表情だった。

さようなら、私の恋心。



* * * *


「・・・・・俺の中で何かが死んだ気がする・・・・。」

鈴谷ーーーー涼が立ち去った後、木にもたれながら崩れる。

疲れた。本当に疲れた。つーか俺、仕方のない事で男といちゃいちゃする事多くね?

もう嫌だ。罪悪感で途端に胸がいっぱいになる。だがこれでいい筈だ。


「へえ?貴方たちはやっぱりそういう関係だったんですか。」

沖田がからっとした表情で木陰から出てくる。勿論キスはしたフリだ。


「馬鹿を言わないでください。分かってんでしょう?演技だって。」

一気に気疲れした。それと共に、泣きたくなるような感情が一気に押し寄せてきて慌てて起き上がる。


「・・・あれで、本当によかったのか?」

髪を髪紐でくくりながら閃がそう問う。

その言葉にまた泣きそうになるが、こらえて笑う。

ああ、無理やり笑う笑顔はこんなにも苦しい。


「俺は、怖いんだ。お前が怪我をしたと聞いた時、真っ先にあいつが怪我をしたらって考えた。それから一気に怖くなった。アイツが死ぬくらいならこのままこの場所で別れて穏やかに過ごしてくれた方がマシだ。」


ごめん。ごめん涼

俺は、お前を守れる自信がない。

それに。


(あれは、やっぱそういう意味だったのかーーー人生初すぎて、傷付くのが怖くて勘違いしないように必死にーーー)


なんで俺なんかを。俺はずっと自宅警備員してたろくでなしだぞ。もう少しで魔法使いだぞ。人生で1回もモテた事ないんだぞ。見る目、ないなぁ。


ははっ、と乾いた笑みは空気に消える。

これで、良かったんだ。


戦場では迷いは死を招く。

もう考えないようにしよう、と霞がかかった頭でそう決意した。

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