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心が枯れたらおしまいおしまい

山の葉が赤に染まり、紅葉狩りが出来そうな秋の夕暮れ、烈と閃は新撰組屯所でそれぞれ土方の手伝いや山﨑への医療方の指南をしていた。ちなみに土方は容赦なくこき使ってくれる。



「・・ここに居たか。」

新撰組の納屋のような物置場で、使えそうな道具や薬剤がないか探していると、三番隊隊長の斎藤(さいとう) (はじめ)と、四番隊隊長松原 忠司が入り口に立っていた。


「お疲れ様です。見廻りはどうでした?」


埃を払って立ち上がると、大事ない、と返事をした斎藤は、懐に手を入れて何やら紙を出した。


「手紙だ。八ヶ代宛にも来ていたが、何やら平助達が持っていった。」


斎藤の手には二通。

受け取って差出人を見ると、松本と外守が連盟で一通、お鈴の名前で一通来ていた。


ああ・・・うん。やっぱお鈴ちゃんの手紙見てるときの閃って少し違うよなあ。


「ありがとうございます。」

礼を言って手紙は懐に仕舞う。

うわ、少し前まで暑かったのにもう寒い。

庭のススキを見てもうそんな時か、と感慨深く思う。


あれから、一年だ。

訳のわからないこの時代に来て、あの世界から存在が消えて、一年。

捜索願いも出されていないだろう。


(気付いてすら、ないかも・・・)


ふいに、いつも懐へ入れている携帯が重く感じた。これは、この時代にはあってはならないものだ。


「・・・ダメだよ。」

斎藤が道場へと去り、残った松原がぽつり、とこぼした。

顔を上げる烈に近寄り、耳元で囁く。


「ダメだよ。その懐の物は隠しておきなさい。それから、見るのもダメだ。」


「・・・え?」


「昔、my phone・・だったかな。僕達の世界ではもう使われていないんです、新撰組 医療方総取締 五百夜 烈。貴方がこの時代の人間ではない事は、私達の時代でも噂されている。だから、貴方を観察した。明らかに、貴方はこの時代の人間じゃない。



・・ダメですよ。この世界の人間に悟られていけない。」


もう、使われていない?

医療方総取締?

私達の、時代?

なんの話だ?


「貴方は、確か平成、と呼ばれる時代に居ましたね。私はそれから300年後の時代の人間です。」


松原がにこ、と笑う。その笑顔が怖い。

なんだ?なんの話をしている?

何を、言ってーーー


「時渡りの一族は、私達の時代にはもう居ない。だけど一度だけ、現れたんです。この時代(えど)の人間が。」


「・・・松原、さ・・・・・」


「大丈夫。貴方はまだ死なない。言ったでしょう?僕は・・そうですね。元は学芸員(キュレーター)をしていました。とりわけ、この時代について調べていた。偶然でした。・・・この時代の未来を変えれば、僕達の時代の未来を変える事が出来るかもしれない。なんて、思ってるんですが。」


流暢に横文字を話す。

そして未来を、変える、と言った。

知っているんだ。

この江戸(じだい)を。


「救う、って?」


「・・・言えません。だけど、一つだけ。貴方の時代以上に僕達の時代の人間の心は枯れてしまった。」


松原は哀しそうに首を振った。

心が枯れる。

何れ、人の死にすら無関心になるような時代が、来るというのか。


「貴方をお待ちしておりました。私は・・・長く、新撰組(ここ)に居すぎました。だから、この命、新撰組の為に最後まで使う所存。例え時代から私という存在が消されても、私は新撰組が最後まで生きる道を探します。」


「・・・松原、さん。」


居たんだ。やっぱり、居た。

消えていったジョンは、自分の時代より数年前の人間だった。

やっぱり、自分より未来の人間が、居た。



「・・・世界という物は不均衡だ。貴方の時代の新撰組の忠実と、私の世界の新撰組の忠実は違うかもしれない。だから、今は、何もしないで、己の使命を全うして下さい。


何も、知らないフリをして、上手く、溶け込んで下さい。」


松原がそっと烈に何かを握らせた。

松原が出て行った後でそれを見ると、水と火がプラスチックのような楕円形の中で燃えたり揺れているペンダントだった。


現代では到底加工出来ない技術。

ぐ、とペンダントを握りしめた。

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