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きつねってかわいい

草木も芽吹き、陽が暖かくなって来た春。

夕暮れの小道を、烈は閃と歩いていた。


新撰組との関係も幾らか良好になり、(芹沢一派以外)原田や沖田が非番の日は酒盛りをしたりする仲となっていた。


今日も今日とて、原田と原田繋がりで仲良くなった藤堂(とうどう)平助(へいすけ)永倉(ながくら)新八(しんぱち)、沖田と6人で酔った藤堂や永倉を介抱しながら夜道を歩いていた。


「暖かくなりましたねぇ・・月が綺麗だ。」

沖田が月を見上げ、其れに倣い烈も月を見上げた。


吸い込まれそうな程綺麗な夜空に浮かぶ月が夜道を照らしていた。

今なら手が届きそうだ。

心地よいくらいに頭をぼんやりとさせたアルコールが、思考を鈍らせる。


だから、月に見とれて気がつかなかった。


「こんばんは。」



沖田も、永倉も、藤堂も、原田も、烈も。

酒を飲まなかった筈の閃でさえ。


月に照らされる、狐の存在に。


殆んど条件反射のように閃が動いた。

狐の面を被る一人に襲いかかる。

振り上げた長巻は、玩具のように簡単に狐が放つ一閃で弾かれた。

ぼうっ、と閃が火を吹く。

狐はその火をくるり、と刀を回していなす。

火が辺りに飛び散った。


閃は火に飛び込み、鉄扇を一閃する。

だがそれよりも速く、狐は上へ飛び、閃の腹へ蹴りを一閃するとその上へ飛び乗った。


「あぁあああう!!!!!」

殆んど獣に近い雄叫びを上げ、咬みつこうとする。だが狐はその顔を踏み付けた。


「・・久方ぶりに出会った兄に対してそれはないんじゃない?」



面の下から閃によく似た声が響いた。

ひゅん、と音がして、原田の槍が一閃される。狐が槍を避けつつ掴むと、掴んだ場所から発火した。


「・・物の怪かよっ!」

何時の間にか酔いが覚めたらしい藤堂と永倉が狐の背後に回っていた。


だんっ!と一歩踏み込むと、横に2人は一閃する。だが少し服の裾が切れたくらいで、狐は原田の槍を支点に上へ飛び、2人の横面を蹴った。


「・・・っ!」

刀が駄目なら体術。

物の怪だろうが生きていれば必ず心臓がある。重心を低くくし、身体の中心から少し左、心臓を狙って身体の軸を固定し、精一杯身体を捻る。顔を殴られ、痛みが走る。だが烈の後ろから沖田が斬撃を繰り出そうとしているのを見て、なんとか堪えて作戦を実行する。見れば永倉も逆側から斬撃を繰り出そうとしていた。


狐は舌打ちすると永倉の斬撃を刀で弾いた。沖田の斬撃を避けるためか、身体を反らす。

もう少しで、届く。

服に手が触れ、少し手応えがあった所で背後に高く飛び退いた。


「・・・やるね、そこの子。天火ーー今は、閃だっけ?の友達?」

民家の塀の上に立った狐が穏やかに問う。

身体の操作が上手くいかないのだろう、痺れが見られた。


だが腕がじわり、と痛む。見れば腕から出血していた。どうやら飛び退く際に一矢報いてくれたらしい。


狐が面に手をかけ、面を外した。

「・・・久しぶり。閃。」


慌てて取り押さえた閃は、一心に狐を睨みあげていた。

狐は、綺麗な顔をしていた。

閃に少し似ている。役者の花形をやれば一発で売れるだろう。

「・・・てめえはっ!!!!」

急に永倉が声を上げる。

藤堂、沖田、原田の三人も同じように殺気を出している。


「久しぶりでんなぁ。壬生狼の皆はん。おばんどす。」

にっ、と弧を描く唇が月に照らされて酷く印象的な男は、急に声色を変え、京訛りで話し出した。


「壬生狼の皆はんには日頃お世話になっとります。商いをやっとります。日々(ひびや)改めーーーーーー鬼灯頭領、時屋(ときや) 丁火。今は長州に協力してる、かな。(いぬい)君の事はごめんね?あんまり情報詮索が過ぎるからさ。ちょっと頭に来ちゃった。」


あくまでも笑顔で丁火は淡々と述べる。

永倉は反射的に襲いかかった。

「だからってあんな惨い死に方しなくたっていい筈だ。乾はあんたを信じたからこそ真実を探ったんだ!」


「・・・感情的になっても、なにも生まないよ。彼だって危険な事は分かっていたさ。ま、君達にも死んでもらう。そこの馬鹿にもね。妖の一族は僕が最後で十分だ。」


含みを持った声色は酷く恐怖を感じさせた。



言い終わらぬ内に沖田が三段突きを繰り出す。見えない程の速さ。だが日頃ゲームをしていただけあって動くものを追うのが得意で、なんとか追った。


だが全てを避け切った狐は、にやり、と笑った。

「性急さは大切だが、失うことにもなる。例えばーーーーーーー」


丁火は小路の角まで飛び、刀を翻した。

その先には、壬生浪士組隊士一名が震えながら此方を伺っていた。






「部下の命、とか。」


ぶしゅ、と綺麗に赤が舞った。

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