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しっかりしてる奴は大体年下

江戸の朝ご飯は質素だ。

味噌汁に白米、漬物。


味噌汁は閃が作り、漬物は烈が切った。

うっわあ。人が作った飯なんてスーパーのおばちゃんの惣菜以来だ。涙が滲む。


規則正しすぎる生活だ。

俺、無事に過ごせるかな。

本能のままに生きてたから正しい生活習慣など過去に置いて来た。


「・・いただきます。」

手を合わせ、まずは暖かい汁を頂く。

暖かい。程よい塩加減。やばい。美味しい。

茄子の漬物。歯応え抜群。

白米はこんなにも美味しかったのか。


烈が感動する中、閃は黙々と白米を咀嚼していた。そして思い出したかのように口を開いた。


「本日の、嘉六先生との約束は辰の刻よりだったな。」


閃の言葉に固まる。

辰の刻。辰の刻って何時だ。

いや、確か国語辞典に乗ってた。

丑三つ時は午前2時。

多分。たしか、午前8時か。


「・・はい。」

口の中の漬物を飲み込んで返事をする。

というか、江戸時代の時刻ってどうやって知ったっけ。時計なかったよな?

そこまで考えて、烈はひらめいた。

確か、此方に来た時に時計を身につけていたはずだ。


高校合格祝いに親から貰ったものが。動いているかどうかは別として。

いや、動いているうちに江戸の時刻を知ろう。

確か鐘ついてたハズだ。

鐘の長さで判別する、と辞典に書いてあったような。


「そうか。では終わったら迎えに行く。」

閃の言葉に違和感を覚える。迎えに、行く?そういえば。


「・・・閃さんって、何の仕事をしているんですか?」

烈はこの男の事を何も知らなかった。

知っているのは名前。それと白米を食べれて、少し人里から離れた場所に一軒家を持てることくらい。


閃は茄子を飲み込むと、静かに答える。

「雇われれば何でもする。用心棒に道場の打たれ役、剣術指南、船頭、魚獲り、嘉六先生の助手。・・・本日は剣術指南だ。」


改めてこの男の凄さを知る。

料理が上手く、殺人術に長けただけではないらしい。この男もまた、生きるためにあらゆる術を身につけたのだろう。


「それから、暮れ六つには吉原の用心棒だ。お前も来い。」


「・・へっ!?」


閃の言葉に驚く。吉原!?吉原ってあのお姉さんがアンアンする!?花魁の!?

用心棒!?死亡フラグやん!


「まっ・・・待て待てまって!俺に用心棒!?無理無理むりっす!あなたも見たでしょう!俺の出来なさを!」


「あれくらい出来れば充分だ。酔った男の一人や二人くらい、どうってことないだろう。」


「いやいやいや!俺素人っすよ!!無理!」

烈の言葉に閃は溜息をつく。


「・・・何のための長巻だ。それに言った筈だ。働かざる者食うべからず、と。」


恩人の言葉に烈はう、と詰まる。

そうだ。ここに居る間はこの人が神様仏様ご主人様だ。逆らえば飢え死に。こいつにとって俺の生死など関係ないんだ。ちきしょう、四面楚歌か。一寸先は闇どころか崖っぷち。



「・・わかり、ました。」

「ああ。それから、敬語は要らない。恐らくお前の方が年上だ。」


「へっ!?せ・・・おま、いくつ!?」

驚きすぎて素が思わず出る。

年下?この何でも出来る完璧少年が?



「21だ。嘉六先生によると、お前は一つ上だな。」

21。江戸時代は確か数え歳だから、、20歳。いや、下手したら19。ええええ。

一つ下だと言う少年に少なからずショックを受けた烈は、力無くごちそうさまでした・・・と漏らした。


自分より遥かにしっかりしている。

自分より年下の少年が。

顔、剣術、料理、全てにおいて負けた。


俺、何してんだろう。

心から切なくなってきた。



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