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偉そうな奴程大したことない

恩師に恐ろしく塩辛いおにぎりを貰って数日。

いや、何日たったのかは正確には分からないが、将軍とともに良順の助手として入京した烈と閃は、拠点をなんとか確保し、家財道具を整えているうちに守護職に呼ばれ、京都守護藩邸に来ていた。



守護職・松平容保の護衛は殺気を抑えているらしいが一目で分かる、絶対勝てない。

旅の間も修行は怠らず、むしろ厳しくなったくらいだというのに上には上が居る。


内心汗を流しながら良順のそばに控えていた。

こんなんで食事?無理無理美味しくないもん。

泣きそうになりながら隣の男を見れば、平然とした顔で魚をつついていた。

百戦錬磨ってか!くそう!


「今日集まって貰ったのは例の浪士組の頭に合わせる為だ。個人的な頼みになるが、必要な時には彼等の手当も承って欲しい。----入りなさい。」


す、と小気味の良い音を立て、失礼します、と入って来たのはガタイの良さそうな男が3人。一人は柔和な雰囲気を纏い、一人は厳格な雰囲気を纏い、また一人は鋭利なーーその雰囲気だけで人を殺せそうな雰囲気を纏った男だった。


3人とも、強い。

本日何度目かわからない絶望と共に直感する。


「例の浪士組の京都残留決定組の筆頭、近藤(こんどう) (いさむ)芹沢(せりざわ) (かも)、それから根岸(ねぎし) 友山(ゆうざん)だ。」


その言葉に三人は頭を下げた。


「これはこれは・・・幕医の松本良順です。後ろの襟巻きをしておりますのが、助手の五百夜、その隣、口布をしておりますのは護衛の八ヶ代と言います。」


良順の紹介に、ぺこり、と頭を下げる。

いつの間に口布をしたんだ、こいつ、と隣を見る。それよりも、だ。


近藤 勇?

どっかで聞いたことがあるのは気のせいだろうか。会津藩預かり浪士組の。

いやいや、そんな馬鹿な。

一人そう頷き、納得させる。

気のせいだ。


「彼等は壬生浪士組(みぶろうしぐみ)と名を名乗る。彼等が怪我をしたら見てやってくれないか、松本殿。」


気のせいじゃなかった。

待てよ、マズイよこれぇええええ

死亡フラグ立っちゃうよおおおお


確か壬生浪士組って後の新撰組だった気がする。


おああああ



「ああ。話は聞いております。未来の気高き武士達ですなぁ。まだまだ未熟な腕前でございますが、私で良ければ身体に不調がありますれば、いつでもお申し付け下さい。」


何時もの暖かい笑顔で、良順がそう微笑みかける。その笑顔を見て幾分か心は落ち着いた。思考はごちゃごちゃだけど。


すると柔和な雰囲気の男ーー近藤というらしいーーは、頭を下げた。


「手前もまだまだ剣術は未熟ではありますが、志だけは誰にも負けない意気込みであります。よろしくお願い致します、先生!」


子供のような男だ、というのが印象だった。頭を上げて下さい、と良順が宥める中、ふっ、と殺気が辺りを巡ったのを烈は感じ、条件反射で懐の鉄扇に手を伸ばした。だがそれよりほんの数時速く、何かが良順の方へ飛んで来た。


はっ、と一同気付いた時にはそれーーー鉄扇は、閃が放った小刀によって雪見酒にと、開けっ放しだった障子を越え、雪降る庭の積もった雪にさく、と音を立て突き刺ささった。


ふん、と鋭利な雰囲気の元凶の男ーー芹沢は、鼻を鳴らした。閃は真っ直ぐ芹沢を見つめている。


「・・・・な、なにをするのです!芹沢さん!」

顔を青くした近藤が芹沢に詰め寄る。だがそんな近藤が見えていないかのように芹沢は口を開いた。


「矢張りか。ーーー八ヶ代とやら、主、人殺しの目をしている。幼い頃から生にしがみ付いて生きてきたような。・・・その手でいくつの命を刈り取った?」



芹沢の一言で静まり返る。

松平の護衛の興味深そうな視線。

近藤の何か言いた気な視線。

それから、松平の芹沢への呆れたような視線。


閃は口布の下から、口を開いた。


「・・・生きるのに、必要なだけ。」


その声色は、凛として、それでいて酷く哀し気だった。

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