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涙がしょっぱいのはそれだけ思い出あるから

「京に付いたら、必ず手紙を書きます。先生、今までお世話になりました。」


地面に頭が付くかと思うほど腰を曲げ、誠意を伝えようと声を張る。

そんな烈の元に、何かが差し出された。

顔を上げて見てみるとそこには笹にくるまれたおにぎりと、紙と葉でくるまれた何かがあった。


受け取るとそれは金属で、金であることに気付く。


「餞別です。道中腹が減るでしょうからお食べなさい。風邪を引かないように。」



『寝てしまいましたか。お恥ずかしい。おや・・・体調は、どうですか?』



ふ、とここに来た時の事を思い出す。

死にそうな所から、始まったんだよなぁ。

なんとか、生きてたなぁ。

知らない街で、今日まで。


急に目頭が熱くなり、なんとか抑える。

うん、なんつーか、



生きてこう。

これからも。



「・・・ありがとうございました!!」

二つの包みを受け取り、歩き出した。

松本良順。彼の生き様は詳しくは覚えていないが、推測が正しければ彼と行動すれば必ず戦火に巻き込まれる。自分が元の世界に戻りたいのかはまだよくわからない。

戻る家はあっても、場所はない。


ただ、歩こう。

真っ直ぐ、真っ直ぐ。



「・・・まさか、河原で拾ったのが狐の子孫拾ってきて、更にそれが未来人拾ってくるとは。」


遠ざかる背中にぽつりと嘉六が溢す。


隣のデカい僧は、頭をぼりぼり掻いた。

「仕方ねぇだろ。ほっとけなかったんだ・・・拾われたのが腹黒の医師(くすし)で後悔しなかった日はないぜ。とっとと財産遺してくたばりやがれジジィ。」


憎まれ口を叩く斎泉の腕を合気道方式に捻り上げながら嘉六は斎泉の叫び声をBGMに微笑みながら呟く。


「・・懐かしいですねえ。」


『お腹が減っているんですか?これ、食べます?』


にこにこ、と笑う嘉六ーー当時は六斎青年は、懐からおにぎりを差し出す。それをみて腹の虫が鳴る斎泉少年は、涙目でふいっと顔を背けた。


『情けなどいらんっ。』


その言葉に嘉六はすこし眉尻を下げた。

『そうですか。それでは遠慮なく。』


あろうことか、目の前でおにぎりを食べ始めた。それはもう、美味そうに。きらきらと光る米粒に、斎泉は目を輝かせた。唾液が後から後から流れてきて、思わずごくり、と唾を飲む。


ふ、と嘉六は笑い、少年の口におにぎりを突っ込んだ。


『〜〜〜〜っ!?』

ぶわっ、と涙が溢れてくる。

塩辛いのだ。よく見れば米には塩にまぶしたのかとでも言うほど塩が付いている。


どうした訳か、涙が溢れて溢れて止まらない。


『丁度その失敗したおにぎりを食べて頂ける方を探していましてね。良かった。良かった。ありがとうございます。』


涙が、溢れて、溢れて



『これからも失敗した私の料理、食べて頂けませんかね?』


暖かくて、


『・・・っ!早ぐ、うまぐなれよ、』


嬉しくて、


『・・・善処します。』


止まらなかった。



「あのおにぎりも塩辛いんじゃないんだろーな・・・・。」


「旅立ちには刺激が必要です。私なりの応援ですよ。」


後に咳き込みながらおにぎりを食べる少年達の姿を思い描き、なんだか不憫になった。


「・・・達者でな。」

ぽつり、と低く呟いた言葉は冬の冷たい風に掻き消された。

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