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噂話は真実二割嘘八割

「・・・へっ?」

思わず、間抜けな声が漏れる。

良順が、指導?

嘉六は烈に向き直り、真面目な顔で烈に申し渡した。


「烈。今日限りで私につくのはやめ、良順の指導に従いなさい。質問は受け付けますが、指示を受けるのは良順にしなさい。貴方は充分に知識を蓄えた。足りないのは、経験です。私の元では、それは補えない。だが良順は有名だ。外国にも通ずる。更にあちこちを転々としています。沢山経験を積めるでしょう。


これにて、師弟関係は仕舞いです。」


嘉六の言葉に、ぽかん、と呆気にとられた。

良順の、下で学ぶ?

そんなこと、しても、いいのか。



「・・・いいんです?手塩かけて育てた弟子でしょう。」

良順が少し意外そうに聞いてくる。

待ってくれ。頭が考えることを放棄してるんだ、だがそんな烈を嘲笑うかのように会話は進む。


「ええ。私は、立派な医者が育てばそれで。」


嘉六の言葉に良順はうむ、と満足気に頷いた。


「今日から宜しく、五百夜君・・・だったかな?松本 良順だ。」

人懐こい笑顔でそう言った。

待って。待って。いや、だが今、俺は確実に人生の変わり目に立っている。


「宜しくお願いします。松本先生。」

気が付けば弱弱しく、だがしっかりはっきりとそう言っていた。




* * * *


「あらぁ、れっちゃん。アンタ昨日から先生んとこ解雇されたんだってえ?なにしたのよぉ?」



翌日。良順の所へ行く準備をしていた烈に、朝早く、朔乃が押しかけてきた。


・・・・解雇?

あれ。解雇だったのか!?

やっぱりか。何が悪かった!?ってかなにしたっけ?やっぱりあれか?性癖(サド)が合わなかったか。


衣擦れの音をさせながら出てきた閃に、ごいんっ、と朝から一発殴られた。軽く火花が見えた。


「しっかり自信持て。・・・きちんと別の先生の下では学べない事を学べる師匠を与えられただけだ。」


迷惑そうに朔乃を見ながら、そう言い放つ。

朔乃は閃の姿を認めると、キラリと瞳を光らせた。


「あらぁ?アンタ達、破局したんじゃなかったのぉ?閃ちゃんが近頃れっちゃん振って家出した、とかぁ、きいたわよ?」


にやり、と下卑た笑みを漏らしながらそう問い詰める。女ってこの手の話好きだよなぁ。・・・・振った?



「いやまて、閃は男だぞ!?・・ってえ!」

朔乃へ抗議した瞬間、次は長巻で殴られた。痛い。だってそうだろう。明らか烈は女に見えないのだから。閃は不服らしいが。


「知ってるわよ一緒に風呂入った仲だもの。だから、しゅ・う・ど・うよ!衆道!」

(*衆道=BLのこと)

しまった。心配するベクトルが微妙に違ったらしい。そういや普通に江戸はBLが飛び交ってたんだっけ。今より差別的でもなく。というか、風呂入った?


「んなわけねぇだろ。いくら女にちやほやされないからってそりゃあない。」

烈の言葉に朔乃はあらぁ?と子供のように目を輝かせた。


「なら閃ちゃんは今までどこにいたのよ?それに人にあまり接しない閃ちゃんが同居まで許したんだし。そりゃあもう衆道しかないじゃない?で、どこまで行ったの?」


うん。いるよなぁこういうおばちゃん。そしてお分かり頂けるだろうか。話がすり替えられていることを。


「てか風呂一緒に入ったんすか?」

こういう時は話をすり替えるのが一番。

暇だなぁこのおばちゃん。隣の殺気は気にしない。


「にゃあん。」


小判が首の鈴を鳴らしながら優雅に出てきた。

「あらあ。小判ちゃん。こんにちは。おきたばっかりかにゃあん?」

うっわ。リアルに鳥肌立ったよ。にゃあんて。良順先生ここにひとり頭の方を怪我してる方がいますよぉぉおおお


色々な葛藤をしている中、閃が今のうちに行け、と耳打ちしてきた。感謝感謝。


こそり、と出来るだけの速さで気配を消して横をすり抜けようとする。だが閃が思い出したかのように待て、と烈を止めた。


「・・・?」

ゆっくりと閃の方を向く。同時に忘れ物だ、と渾身の力で烈の長巻で突かれた。

胃の中身が出るかと思った。


小判は嘲笑うかのようににゃぁああん、と泣いた。

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