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それでも俺は  作者: 有馬五十鈴
5番目の街
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再会

 俺はニヒルな笑みを意識して作りながらユウを見る。


「りゅ……リュウ……?」


 ユウは俺がここにいるのが信じられないといった様子ではあるが、俺の方へ近づきつつも弱弱しく俺の名を呼んだ。


「ああ、そうだ」


 そして俺はそんなユウに一言強くそう言って肯定した。


「ほ、本当にリュウなのかい……?」


 だがユウはまだ信じられないのか俺に向かってまだ疑問形の声を洩らす。


「んだよ。てめえは親友の顔も数ヶ月したら忘れちまうような奴だったのか?」


「いや……そんなことはないよ……僕がリュウの事を忘れることなんてない。だって……親友だからね」


 ユウはやっと俺の存在を確信したのか、やや涙声になりつつも俺に向かってそんな言葉を紡いだ。


「ならいいんだけどよ」


 俺はニヒルな笑みを続けつつ、ユウの目の前まで歩いてきた。


「会いたかったぜ、ユウ」


「うん……僕も……会いたかったよ……リュウ!」


 俺が目の前まで来てそう言うと、ユウは涙ぐんだ顔で俺に抱きついてきた。


「ぶあっ!? やめろ! てめえ! 離しやがれ!!!」


「ああ! リュウだ! 本当にリュウだ!! リュウだああああああああああああ!!!!!」


「うるせえ!!!!! 人の耳元で叫んでんじゃねえ!!!!!」


「ああ! リュウが温かい! リュウの体は温かいなあ!!!」


「う、うわあああああああああああああああ!!!!! やめろ!!! さっさと離れやがれえええええええええええええええええええええ!!!!!」


 いきなりぶっ壊れたユウを俺はSTRの差で無理矢理引き剥がした。


 ユウをぶん殴って正気にさせようかと思ったものの、それは街の中でHPが保護されている時にしたほうがいいかと思い直してなんとか自重した。


「いい加減にしねえとぶっ飛ばすぞ、ユウ」


「ごめん……突然の事でちょっと取り乱してた」


「おう、わかりゃいいんだよわかりゃ」


 数ヶ月ぶりの再会はユウの奇行によって台無しにされてしまった。

 まったくふざけやがって。時と場所を考えてふざけやがれってんだ。


「それで……どうしてリュウは……こんなところに?」


「そんなの決まってんだろ。てめえらを追いかけてきたんだよ、『攻略組』」


「ぼ、僕達を……?」


「ああ……てめえらも久しぶりだな。トト、ドラ、静、みみ、マキ」


 俺はユウの背後にいた5人の人物にも声をかけた。


 そいつらはあの時、俺らがこの世界に閉じ込められた時と同じ顔ぶれでそこに佇んでいた。


「……ホンマにリュウちゃんなんやな。あまりの出来事にワイの思考回路もショート気味やで!」


「リュウか……まさか君が俺達に追いつくとは思っても見なかったよ!」


「久しぶりね、リュウ」


「リュウ君が元気そうでおいちゃんも嬉しいよ~」


 トト、ドラ、静、みみが俺に向かってそんな言葉を投げかけてきた。


「…………」


 そしてマキだけは俺を警戒しているというような顔で睨んでいた。


「ねえリュウさん、確かあなたってSTRに才能値を全振りしたのよね? なのになんでこんな所にまで来れたわけ?」


 マキは俺に向かってもっともらしい事を聞いてきた。

 確かにあの時お荷物認定された俺がここにいるのはおかしいわな。


 だけどてめえ、久しぶりに会った奴に対してそんな態度はどうなんだよ。


「……マキ?」


「ユウ! ソイツから離れて! モンスターが化けてる可能性があるわ!!!」 


「!? ちょっ! てめえ! いきなり何言い出してんだよ!!!!!」


 つかコイツ今ユウの事呼び捨てにしてやがったし!

 ユウもユウでコイツの事呼び捨てにしてやがったし!


 てめえらこの世界に来た時はユウさんマキちゃんって呼び合ってたじゃねえかよ!!!


「うるさい! リュウさんなんかがこんなところまで来れるはずなんてないんだから! 私達を甘く見ないでちょうだい!!!」


「てめえ今俺なんかとか言いやがったな!? 上等だゴラァ!!! ちょっと表に出ろや!!!!!」


「ちょ、リュウもマキも落ち着いて――」


「うっせえ! てめえは引っ込んでろ! 何馴れ馴れしくコイツの事マキだなんて呼んでんだよ! てめえ女嫌いの童貞だろ!!!!!」


「ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!? いきなり何言い出してんの!? やめてよ?!?! パーティーメンバーの前で変なこと言うのホントやめてよ?!?!?!」


 俺が口を滑らしたユウの赤裸々な真実にユウは顔を真っ赤にしながら抗議の声をぶつけてきた。


 こんな反応をするという事はユウは今も尚貞操を守り続けているという事か。

 ふう、ビビッたぜ。


 もしユウとマキがそんな関係になっててアハンウフンとかだったらちょっと俺、ユウの親友続ける自信なかったからな。


「えっと……ユウって童貞……なんですか?」


 そして俺の発言にマキが食いついた。

 てめえユウの貞操に興味津々かよ。


「い、今はそんな話してる場合じゃないでしょ!!! リュウ! 君は一体どうやってここまで来たんだい!!!!!」


 マキがこれ以上この話を続けないようにか、ユウは大きな声を出しながら俺に詰め寄ってきた。


「……まあそのへんはワイらも聞きたいところやなあ。いや、別にリュウちゃんがモンスターかもしれないとか疑うてるわけやないんやで? さっきの漫才がモンスターにできるとは思えへんしな」


「そうだな。リュウがモンスターでないというのは明らかだとしても、確かに場所が場所だけにどうしてリュウがここにいるのかは聞いておきたいところだな」


 そしてそんなユウに援護射撃をするかのようにトトとドラがマキより前に出てきた。


「おいちゃんはユウ君の話でも全然構わないけどね~」


「そうね。私も聞きたいわ」


 そしてみみと静は悪乗りが過ぎるのか、ユウの貞操問題を続けてもいいと取れる発言をした。


「みみさんと静まで何いっちゃってんの! 僕の事なんて今はどうでもいいでしょ!?」


 そんな2人にユウは怒ったように抗議をしていた。


 つか色々と緩そうなみみはともかくとして静がこの話に乗るとは意外だな。

 もう少し固い奴なのかと思ってたが。


「ふふ、私が聞きたいのはユウとリュウの関係よ」


「あ? 俺とユウの関係?」


「やっぱりリュウが攻めでユウが受けよね」


「「!?」」


 微笑を伴った静の発言に俺とユウはピキッという擬音が鳴るんじゃないかというほどに固まってしまった。 


「リュウがユウを追ってきたのも愛が成せる業よね」


「おいやめろ。そういう想像マジ止めろ。俺とユウの関係をそんな風に邪推するな」


 俺は本気で静の発言を否定しにかかった。


 俺とユウは健全な仲だ。

 そこに何かアハンウフンな関係があるわけがない。


「そ、そうだよ静。リュウはそういう想像されるのがとても嫌いなんだ。だからいつもの本性はできるだけ抑えて」


「……残念ね」


 そうして静はフウっとため息を吐いて俺とユウを交互にチラチラ見ながら微笑を作り出していた。


 あんまコイツには近づかないほうがいいのかもしれねえな。

 マトモな部類の人間だと思ってたのにイメージ駄々下がりだよ。


「…………つかてめえは俺がここまで来れた理由とかどうでもいいのかよ。てめえだって俺の事お荷物だとかボロクソ言ってたじゃねえか」


「あの時と今では違うでしょ。もう3ヶ月以上も経っているんだから。それだけの期間があればリュウだって何かしらの成長を遂げていたとしても私は驚かないわ」


「そうかよ」


 確かにあの時静は今のリュウじゃお荷物というような言い方をしていた。

 静は一応俺が始まりの街に置いていかれてもユウ追いかけてくる可能性を考えていたという事か。


 と、そこまで会話が続いたところで突然ドゴオン!というような大きな音が部屋中に響き渡った。


「! なんだ!?」


 俺らは音の発生源を探すべく、部屋の中を見回した。


 すると部屋の中には俺ら7人以外にあと2人いることが判明した。



 バルとシーナだった。



 バルは小さい体でシーナを背負い、俺が落ちてきた穴のところに佇んでいた。

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