デスゲーム
湖のほとりで待つこと5分弱。俺らの目の前に4人のメンバーが現れた。
背の高い順で見ていくと、一番背が高い奴はめちゃくちゃ背が高い男だ。190くらいか? 短髪で年は俺らよりも若干高そうだ。多分スポーツとかやってるな、体つきががっしりしている。だが怖い印象は受けない優しそうな男だ。
2番目は身長175くらいで俺より少し背が高い男だ。こいつの年齢も俺らと同じかチョイ高いかって印象がある。だがなんか一番目の男と比べるとヒョロイ。ボサボサの髪に眼鏡をかけて俺たちを見ながら『ほほう』とか言っている。つか眼鏡も再現されんのか。
3番目は俺より少し小さいってくらいだが女だった。一目見て巨乳だから間違えるはずもなかった。髪もロングのストレートだしな。ただ目つきが鋭くて相手に威圧感を与える雰囲気だ。多分大学生。
そして4番目は……なんつーかひょうきんなおっさんって感じのおっさんだった。身長は160ちょいくらいで年は50くらいか? 白髭が生えていて頭髪は前のほうがかなり危なくなっている。ちょいメタボ。
ついでにマキは4番目のおっさんと同じくらいの身長で年は多分俺らと同じくらい。髪は肩まで伸ばされていて若干茶髪に染めている。目がくりっとしていて、どことなくリスを思い浮かべる雰囲気だ。だがうざい。胸はザコ。
「いや~ユウ君のリアル顔初めて見るけど、とんでもない二枚目さんやないか!」
「でしょ~トトさん! 静さんもそう思いません?」
「別に」
「またまた~そんな事言っちゃって~。彼氏の前だからって遠慮することないんですよ? ねえドラさん」
「いや俺に振るなよ。静が無愛想なのはいつもどおりだろ?」
「そうですけどやっぱり静さんの感想も聞きたいじゃないですか!」
「マキちゃ~ん、おいちゃんにも話し振って~」
「みみさんの感想はパースでーす」
「ええ~、おいちゃん傷ついちゃうよ~」
観察していたら何だか勝手に話し始めた。
どうやら1番でかい奴がドラで2番目の眼鏡がトト、3番目の女が静、4番目のおっさんがみみか。
「つーかみみって何だよ……ギャップありすぎだろ」
「ん~? それはおいちゃんがゲームの中では美少女キャラを演じているからだよ」
「マジかよ」
「ん~マジマジ。周りからは癒し系って呼ばれてるよ~。君もそう呼んでくれてもいいんだよ?」
「ぜってー呼ばねー」
「ええ~」
美少女のキャラでみみなら納得するが、初めからおっさんだってわかってると違和感しかねえよ。
しかも癒し系って何だよ。おっさんが美少女やってるとか考えるとどっちかっつーと卑し系だよ。
「まま! とりあえずは自己紹介から、ということでワイの名前はトト言います、よろしゅう!」
「俺はゲーム内ではドラって呼ばれているよ。よろしく」
「私は静。よろしく」
「おいちゃんは癒し系~、どうぞよろしく~」
「ああ、トト、ドラ、静、みみだな。俺はリュウ。此方こそよろしく」
「ええ~」
とりあえずこれで全員の自己紹介は済んだわけか。
ユウもリアルの姿で会うのは初めてだから自己紹介するのかと思ったが、どうやらしないみたいだな。
「あ、そういや全員の役割ってどんな感じに分けてんだ?」
俺のそんな質問にまずユウが答えた。
「そういえば7人での構成は言ってなかったね。僕はタンクやるって前に言ったからHPとVITに多くポイント振ったけど、一応念のためにSTRとDEXも若干高めにしてるよ」
「ワイは魔法重視でMP、INT、MND高めに振ってあるから後衛職やで」
「俺は純粋な盾役をしようと思っているからHPとVITにそれぞれ40ずつ振ってあるよ」
「私は攻撃重視。STRに50、DEXに15、AVDに15、HPに10、VITに6、後は全部1」
「おいちゃんはMPとMND重視。回復は任せてね~」
「私はトトさんと同じ魔法特化。どんな構成にするかは……トトさんと相談かなぁ?」
ユウの発言からトト、ドラ、静、みみ、マキの順番で自分の才能値について教えてくれた。
なるほど、まあなんとなくだが大体わかった。
だが俺と同じアタッカーの静は攻撃重視とか言ってもSTRに50しか振ってないのか。
なぜか全部の才能にポイント振ってるみたいだし。よくわからんな。
「それでリュウはどんなふうにポイント振ったの?」
「俺はSTRに100ポイント全部入れた」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「おいなんだその反応は」
全員同じ反応とかビビるわ。
「ええっと……リュウ、もしかしてゲームの情報とかまったくない状態で始めた?」
「? おうよ」
「このゲームの才能値はレベルアップ時の能力の上昇値と比例するんだ。だから才能値を0にしたらその才能は今後育たないということなんだ」
「攻撃だけすりゃいいんだから別に問題なくね?」
「たしかに物理攻撃をするならSTRを上げれば攻撃力は上がるけど、それと同時にDEXも上げる必要があるんだ」
「DEX?」
「……DEXは器用さを数値化したものだよ。これを上げることで物理攻撃の命中率が上がっていくんだ。ちなみにVITは頑丈さ、AGIは敏捷、INTは知力、MNDは精神力、LUKは運ね」
「つ、つまり?」
「今のままだと攻撃力はあっても敵に攻撃が全然当てられないってことだよ……」
「なん……だと……」
「完全にビルド失敗してるっちゅうこっちゃな。悪いこと言わへんから素直にキャラ作り直しときー」
トトの発言に他の五人は全員うんうんと頷いている。
まあ確かに攻撃当てられないんじゃ役立たずだわな。
元々何か問題があればキャラを作り直そうとは思っていたんだから今作り直すのも良いだろ。
とりあえずDEXに15くらい振っとけば良いか?
そんなことを考えていた時、突然空が闇に包まれた。
「な、なんだ!?」
「ちょ、上見てみい!」
咄嗟に上を見上げると、そこには空を覆いつくすかのようなでかい人影が俺たちプレイヤーを見下ろしていた。
その黒い影は何の特徴も持っていないから一体誰なのかまったくわからない。
と、俺たちプレイヤーが全員上を見始めたからか、その影はもぞもぞと動きだした。
そして本来口のある部分が三日月に割れ、ニタリと嗤っているかのようなシルエットに変貌した。
『自由の世界へようこそ。我々はこの世界で言うところの神、君たちが元々いた世界ではゲームマスター、GMと呼ばれている存在だ』
影は俺たちに向かってそう自己紹介した。
声から察するにこいつは男か。しかしなんつうか言い回しがくどいな。
これはこのゲームの演出か何かか?
『さて、とりあえずこの世界には9000人ほど君たちプレイヤー、新人類の諸君を招待させてもらったのだが、この世界は君たちに気に入ってもらえたかな?』
新人類? このゲーム内でのプレイヤーの呼び名か?
それにまだ始まって間もないのにこの世界は気に入ってもらえたかとか聞いてやがるし、どんだけ自信まんまんなんだ。……まあ確かにすげー再現度だとは思ったけどよ。
「おーいGM-! ログアウトボタンはどこにあるんだー!」
知らないプレイヤーの1人が影に向かってそんなことを叫んでいた。
そうだ、このゲームの良さとか聞く前にまずはその辺の不具合についての謝罪が先だろ。運営何やってんだ。
だがそのプレイヤーの質問を聞くと、影の薄笑いを浮かべている口元がさらに吊り上っていった。
『この世界にログアウトボタンなどという無粋なものはいらない。ゆえに消去させてもらったよ。それについ先ほど、各種通信システムの全てを凍結させてもらった』
……なんだと?
どういうことだ? ログアウトボタンがない? じゃあどうやって現実世界に帰るんだ?
俺の疑問を周囲のプレイヤーも全員思ったらしく、次々と質問、抗議、非難が飛び交い始めた。中には怒声や悲鳴さえあげている連中さえいる。
「ログアウトボタンがないんじゃ俺たちはどうやってログアウトすりゃいいんだよ!」
「これは犯罪行為だぞ! わかっているのか!?」
「このあと仕事があるんだ! 頼むからログアウトさせてくれ!」
次々に生み出される声の嵐を前にして、目の前の影はどこ吹く風とでもいうような様子でまったく反応を見せない。
そのふてぶてしさに俺もだんだんイライラしてきた。
そしてついには俺も空に向かって怒鳴った。
「ふざけんな! こんな偽者の世界なんか楽しめるか!! さっさと俺たちを現実世界に帰しやがれ!!!!!」
俺がそう叫ぶと影が僅かに身を動かした。
影に目はない。だが俺は感じ取った。
こいつは今、俺を見ている。
『……君たちのいた世界とこの世界。どこに違いがあると言うんだね?』
影はそう答えた。おそらく俺に向かって。
まるでこの世界を偽者と非難されたことがとても不快であったかのように。
『どうしても元の世界に帰りたいと言うのならば是非もない。君たちにその方法を教えよう』
そう影が言うと右腕を挙げて人差し指でどこかを指差した。
その先にあるのはどこまでも続くかのように広がる草原の先にある山脈地帯を越えたさらにその先を指していたように見えた。
『この世界は複数の魔王によって分割され支配されている。君たち新人類の存在理由は旧人類と協力してその魔王達を打ち滅ぼし、そしてその先にいる大魔王を打倒することにある。君たち新人類がその目的を達成することができたなら私は君たちの願いを叶えてあげよう』
影は語り終えると薄気味悪い笑いをクツクツと出し始めた。
……つまりは今すぐ解放する気はないってことかよ。
ゲームクリアするまで返しませんってことだろ? ふざけたこと言いやがって。
それじゃあ現実世界に返れるのはいつになるのかまったくわからない。この世界がどれだけ広いのかわからないが少なくとも数ヶ月単位での勝負になるだろう。いや、あるいは数年……?
それだけ長い間現実世界に返れないってことかよ。
……それだけ長い間陽菜を一人にさせる気かよ!
「くそっくそっくそっ!!! ふざけやがって!!!!! そんな悠長なことしてられるか! さっさと俺たちを帰らせろ!!!」
『クックックッ、申し訳ないが、君たちが元いた世界に帰る方法はこれしかない。そしてもう一つ、君たちにとって残念な連絡がある』
影は人差し指で今度は空を指し、その指先から眩い光線が数十本放たれ、遠くの大地に降り注いだ。
『今の私の攻撃で街にある教会は全て破壊された。言うまでもないと思うが、これで死に戻りなどということはできなくなったと思ってくれて構わない』
な、なにをしたんだ? 教会? 死に戻り?
「な、なあユウ、一体どういうことだ?」
嫌な予感を必死で押さえ込んで、隣にいるユウに訊ねた。
いままで上を見ていたから気付かなかったが、ユウの顔色は相当悪くなっていた。
「……このゲームではプレイヤーが死んだ場合、しばらく待つと教会で自動的に復活されるんだ。だから教会がないっていうことはつまり……」
ユウはそこまで言うと息を大きく吸い、そして吐き出した勢いで続く言葉を放った。
「……死んだら僕達は蘇らない」
「……そうか」
影の説明でなんとなくわかってはいたが、こうも断言されるとやはり恐ろしく感じる。
つまりあの影は、この世界での死は現実世界での死と同等と言ったということになる。
ただのゲームだと思っていたのに現実の死がすぐ目の前に佇んでいる。
恐ろしい。自分の命がゲームで簡単に失われる。
そんなことがあっていいのか。
もしかしたらあの影のハッタリかもしれない。あいつはただ単に死に戻りができないと言ったに過ぎない。この世界で死ぬことは簡単でも、それに連動して元の世界の俺たちを殺す術はあいつにはないはずだ。
死んだら案外元の世界で意識を取り戻すかもしれない。そのほうが自然だ。いっそ試してみるか?
……俺は一体何を考えているんだ。
たとえハッタリでもこんなことを試すべきじゃない。
万が一の事を考えたら試すことなんて絶対にできない。
『君たちにこの世界をより身近に感じて欲しいと願う私からのささやかなプレゼントだ。どうだい? これで君たちの言うところの本物に近づけたと思うのだがね?』
俺たちが絶句している中、影はさらに煽り立てる。
もはや怒声すらもない、9000人もいるはずのこの草原はしんと静まりかえっている。
『どうやら気に入ってもらえたようだね。さて、ではそろそろ我々は退散するとしよう。君たちの冒険がいずれ大魔王を倒すと信じているよ。では健闘を祈る』
そう言い放つと影は次第に薄れ始め、空に光が戻り始める。俺らはそれをただ呆然と見つめるしかなかった。
そして影が完全に姿を消すと、周囲は阿鼻叫喚の渦へと変化し始めた。
影の消えた空へひたすら喚く者、その場に崩れ落ちすすり泣く者、何が起きたのか認識するのを拒否してその場に呆然と立ち尽くす者。
反応はさまざまだが、それを見ていると今にも怒声を張り上げそうだった俺の心が落ち着いていくのを感じた。
そうだ。今やることは天に向かってつばを吐くことじゃねぇ。
俺はなんとしても絶対に帰る。そのためにやれることをやる。
そして一日でも早く陽菜のところへ帰るんだ。あいつを一人ぼっちにさせちゃいけねぇ。
「ユウ、いくぞ」
「……行くってどこに?」
そばで頭を抱えてうなだれていたユウに向かって俺は宣言する。
「決まってんだろ。……大魔王を倒しに行くんだよ」
俺は力強く、そしてはっきりとユウにそう告げた。
そしてユウは迷ったように目線を逸らし、俺に尋ねてきた。
「もしかしたら死んじゃうかもしれないんだよ? 死んだらもう蘇らないんだよ? リュウは……その、怖くはないの?」
「怖いさ、でもそれしか方法はねえんだろ? だったらやるさ」
ユウは俺のそんな台詞にハッと目を見開いて俺を見つめ返した。
「安全地帯に非難していればいずれ誰かがクリアしてくれるかもしれないよ? それにリアルで警察も間違いなく動いてる。明日になれば事件解決で全員解放されるかもしれないよ? それでもやるの?」
「そんな他人任せなことできるか。そんな確証のないものにすがるくらいなら自分の手で道を切り開く。それが俺の流儀だ」
俺はニヒルな笑みを意識して作ってユウに言い返すと、まるでそう言うとわかっていたよとでもいうようにユウは微笑を浮かべる。
「ははは、どこにいたってリュウはリュウのまんまなんだね。ちょっと尊敬しちゃったよ」
「うるへー、つべこべ言わずにとっとと行くぞ。時間が勿体ねぇ」
ったく変なところで感心してんじゃねえよ。
こっちが恥ずかしくなる。
とりあえず次は少し離れたところにいた他の5人の説得をしようと俺は近づいた。
こっちもこっちでしけたツラしてやがる。
「おい、いつまでもうじうじしてんじゃねえよ。さっさと大魔王倒しに行くぞ」
とりあえず俺はそんな言葉を5人にぶつけてみるが、どうも俺の言葉に反応が鈍い。
「なんだよてめえらテンション低いな。こんなところでグダグダしてるくらいならちゃっちゃか前に進もうぜ?」
「……せやかてリュウちゃん。そんないきなりデスゲームやりましょう言うてもはいやりましょうって即答できるくらいにワイらも覚悟完了できてないねん」
「そうだな。とりあえずここから南にある始まりの街というところでしばらく冷静に話し合ったほうが良いかもしれないな」
「ドラ、今の意見は消極的すぎ。私はリュウの意見に賛成。ここは東に行って2番目の街があるところまで進むべき」
「う~ん、おいちゃんはドラちゃんの意見を尊重するかなぁ。焦って誰か死んじゃったらおいちゃん泣いちゃうよ~」
「んー、わたしもドラさんとみみさん派かなぁ。ちょっと色々ありすぎてわけわかんないし」
話を聞いているとどうも意見が分かれそうだな。
これは全員が纏まるのは時間がかかりそうかと思っていたその時、誰かが俺の肩をたたいた。
ユウだった。
「ここは僕に任せてくれ」
ユウは俺にそう言うと、5人の前に立って大きく息を吸った。
「いきなりこんなデスゲームになってしまってみんな動揺していると思う。死んでしまうことを恐れてしまうのもごく自然の事だ。だからトトさんやマキちゃんの気持ちもよくわかるしドラさんやみみさんの意見も正しいと僕は思う」
ユウはここで一拍おいて、再び声を張り上げる。
「それでも僕は2番目の街にいく案を支持する」
「……一応訳を聞かせてもろうてもええ?」
「うん。今ここには9000人のプレイヤーがいる。今はかなり混乱しているけど、落ち着いたらやっぱり拠点確保に動くと思う。そう思ってマップを見れば始まりの街が表示されているからとりあえずは基本そっちに行くよね。でも一つの街にいきなり数千人規模で押しかけたらまず間違いなくパンクする。ろくにモンスターを狩れなくてレベルが上がりにくいだろうし、多分アイテムの補給もままならなくなる。場合によっては寝床の確保も厳しいかもしれない。そしてそれらはまず間違いなくスタートダッシュを遅らせることになる」
「それでも一応モンスターからの危険にはさらされないわけやろ? 街の中ならセーフティーかかってHP減らんっちゅう話やし」
「そうだね。確かに安全だけは確保できると思うよ。でもその代わり、どこかの誰かに魔王との戦いの最前線を任せることになる」
そうか。
ここから始まりの街に行くとレベル上げがきつくなる。そうすると大多数の中に埋もれるわけだからその後も埋もれ続ける可能性が高い。
平等な今だからこそ他のプレイヤーより前に進んで効率的なレベル上げを行っていこうという事か。
「幸いにも僕たちはソロじゃなくてパーティだ。未だ戦ったことがなくても皆が団結して協力し合えば序盤の敵なんて問題ないはずだ。一応ネットで出た先行情報を見るかぎりでは、戦闘方法は『クロクロ』に近いみたいだし序盤に脅威となりそうなモンスターはいなかった。冷静に戦っていけば必ず勝てる」
「なるほど。ユウちゃんの考えはよくわかったで。せやけどもひとつ聞きたいことがあるんやけど……そこまでして最前線にいる必要ってあるんかいな?」
「……正直言うと最前線に居続ける必要なんてないよ。でもさっきも言ったように最前線を降りたらその代わりに誰かが最前線に立たなくちゃいけないんだ」
ユウはそこまで言うと手をグッと握り締めて口を開く。
「誰かがやらなくちゃいけないのなら、僕はやる。僕は絶対逃げない」
ユウがそう言い放つと5人とも何か諦めたような、それでいて何かを決心をしたような、そんな意思が瞳の奥に宿ったのを俺は感じられた。
「あーあーもーしゃーないなー! こないな二枚目にそんなカッコイイこと言われて乗らないようじゃワイの立つ瀬がないっちゅう話やないの」
「ごめん。無理を言っているのはわかってる。だけど僕は本気だ。たとえ1人ででも2番目の街の方に行くよ」
「あほう、ワイもいく。一緒に大魔王ぶっ倒すで!!」
「私も2番目の街へ行くわ。ドラはどうするの?」
「……彼女を矢面に立たせるわけには行かないだろ。俺も行く。みんな絶対傷付けさせないからタンクは俺に任してくれ」
「私も行くー! さっきのユウ君すっごいカッコ良かったよー!!」
「やれやれしょうがないにゃあ。おいちゃんも付いていくよ~」
どうやらこれで全員一緒に2番目の街とやらに行くことに決定したみたいだな。
それと同時に最前線に立ってゲームクリアを目指すことも。
正直なところ最悪の場合、俺一人で前に進むことも覚悟していたがユウに助けられっちまったかな。
さっきのユウには間違いなく何か物語の主人公的なオーラが降りかかっていた。
説得するのに手間取るかと思っていたコイツらをこうもあっさり纏め上げるとは、案外ユウはリーダーに向いてんのか?
「うっし! じゃあ方針が決まったところでその2番目の街とやらにいくとすっか」
「ちょっとまって!」
俺が気合を入れなおして出発の合図を送ると、マキがそれに待ったをかけた。
「一体なんだよ。時間が惜しいからさっさと行こうぜ?」
「うん、行くのは別にいいんだけどその前に一つ良いかな?」
「おう、言ってみろ」
「えっとね、ちょっと言いづらいんだけど」
な、なんだよそんなモジモジして
言いたいことがあるならさっさと言ってくれ。
「リュウさん、私たちのパーティーから抜けてくれないかな?」
……は?
……はぁぁぁあああああああああああああああ!?!?!?!?!?