戦闘デビュー
再び襲う奇怪なものを見るような目線。
まあ俺が他人側だったとしても見ちゃうけどね!
・・・だめだ耐えられん。
「速度付加」
歩きが早歩きに変わった程度の効果。
あんま変わんねー。
なんか緑っぽいベールに包まれてる。
すげえ透明に近いけど。
カッコいいんじゃね?
はいはい、どうせカッコよくなんかないですよ。
要らないことで気を紛らわせる。
速く森に着け・・・
†☆†☆†☆†☆
やっと着いた。
ここで付加の効果が切れた。
5分ってとこか。
レベルが低いと効果も時間も少ないって事か。
付加のレベル上げの為にももう一度かけておくか。
「攻撃付加」
力が体の底から湧き出てくるようだ。
ベールの色は赤。
やっぱりほぼ透明。
うん、非戦闘区だからモンスターも襲ってこないし安全だ。
的の木もある。
「じゃあ練習するとしますか」
初心者用の銃はリボルバーで装弾数は6発だ。
とにかく撃ってみよう。
銃弾をリロードして、両手で構えてと・・・
ダンッ...
反動があってなかなか狙いが定まらない。
こりゃあ片手で撃つなんて当分かかりそうだ。
50メートル離れた木に撃ったがかすってもいない。
(...ステータス)
『銃Lv.2 魔法適性Lv.1 炎Lv.1 付加Lv.3 千里眼Lv.1 調合Lv.1 製造Lv.1』
銃と付加のレベルが上がってる。
続けて五発撃つ。
ダンッダンッダンッダンッダンッ...
手が痺れるぜ。
おお木にかすり傷がついてやがる。
もういっちょ!
構えて・・・
カチャン...
リロード忘れてた・・・
戦闘中にリロードする時間なんてあるのか?
リロードだけで10秒はかかる。
これを改善する方法はないのか?
まあそれは後々考えるとしよう。
「ん?今何時だ?」
やべえ、1時だ昼飯作んねえと。
俺は『sense』の電源を切ってキッチンへと向かう。
「カップ麺でいいか、面倒だし」
姉ちゃん呼ばねえとか。
姉ちゃんの部屋に行ってと。
家具にやたらとピンクが多くて目眩が・・・
NTOは外部から接続を切ってもなんら問題はない。
ポチッとな
「弟くん何するんだ!いまモンスターと戦ってたのに!」
「もう飯の時間だろ」
「弟くんのケチ!」
ほっぺた膨らましても飯は飯だ。
「はい、どうぞ」
「えぇ~カップ麺ですか」
「そうですがなにか?」
「NTOにハマったんでしょ!」
「まあな」
「ゴミスキルばっかなのに?」
「泣くよ!?」
「銃は試してみた?」
「おう、なかなか当たらない」
「リロードにも時間かかるらしいね」
「そうなんだよな・・・あ、姉ちゃん。フレンド登録しようよ」
「あれ~してなかったんだっけ?」
「してないよ」
「じゃあ街の中央広場で待ち合わせね」
「わかった」
俺たちはカップラーメンを食べ終えて各自の部屋に戻る。
起動してと・・・
†☆†☆†☆†☆
~Loading~
ん?ここは森か。
どうやらNTOはログアウトした地点からスタートするみたいだな。
姉ちゃんと待ち合わせたのは中央広場だったっけ?
(...マップ)
まずは街に出る。
もう目線はいいです。
慣れました。
地図の通りに歩いて行くと大きな噴水がある広場に出た。
「お~いこっちだよ~」
ロングで茶色い髪の背丈の低い女性が呼んでいる。
姉ちゃんだ。
現実とほとんど変わんねえ。
「姉ちゃん、朝は気にしてなかったけど凄い装備だな」
「まあβテスターだからね」
白いローブに白い杖。
俺の防具のただの布とは天と地ほどの差がある。
「魔法使いか」
「そうだよ~」
俺なんか魔法スキルがあるのに使えねえんだよな・・・
それはそうとフレンド登録だ。
「フレンド登録しようぜ」
「う、うん!分かった!」
ガシッ
なんか姉ちゃん嬉しそうだな。
「ねえねえ弟くん」
「なんだ?」
「一緒にモンスター倒しに行こっ」
「足手まといになるぞ?」
「大丈夫、弟くんのために行くんだから」
「分かったよ、ありがとな姉ちゃん」
姉ちゃんが赤くなってる熱でもあんのかな?
「大丈夫か?」
「にゃ、なにが?」
「顔赤いよ?」
「だだ、大丈夫だよっ」
変な姉ちゃん。
どうやら花畑に向かってるらしい。
森はやっぱ避けられてるのかな。
†☆†☆†☆†☆
花畑に着いた。
「弟くん、注目の的だったね!」
「嬉しかねえよ」
「私は嬉しかったよ!恋人みたいで...」
「最後の方聞き取れなかったんだけどなんか言った?」
「べ、別に何も言ってないよっ」
やっぱ今日の姉ちゃんはおかしい。
「じゃあ今から戦闘区に入るよ?」
「おう、準備万端だぜ」
戦闘区に入った。
出てきたのは犬やら猫。
結構小さい。
攻撃すると可哀想な気もする。
姉ちゃんはというと・・・
なんかあっちの方で座って手を振ってる。
一緒に戦うんじゃないのか!
「もしものときは手伝うよ~!」
姉ちゃん・・・
まあ、いっちょやってみますか。
「攻撃付加!」
犬が3匹に猫が7匹合計10匹だ。
襲ってくる気配はないので負ける気はしない。
まあ用心だ。
1匹の犬に確実に当たる10メートルまで近寄って・・・
ダンッ...
やったか?
当たったけど消えない。
・・・
数秒の間で気付いた。
やばい!追ってきてる!
「速度付加!」
犬って意外と速い!
息を切らしながら俺は姉ちゃんを見た。
大爆笑してやがる。
あいつ・・・
とにかくもう一回撃たねえと!
俺は振り返って銃を両手で構え直す。
犬は俺の顔目がけて飛んできた。
慌てた俺は連射。
なんとか連射の2発目が当たって犬は消えて行った。
さて、あいつをどう始末しましょうかね。
「姉ちゃーん、ちょっとこっちにおいでー」
「弟くん、カッコよかった!じゃあね!」
笑いを押し殺した声で言う姉ちゃん。
このままじゃ逃げられる。
「待てっ!」
俺は姉ちゃんを追う。
しかし、|速度付加≪スピードアディション≫をかけてるにも関わらず差は離れるばかり。
まあかけててもあんま変わんないけどね。
やっぱりゴミスキルなのか・・・
結局姉ちゃんは街の中へ消えて行った。
ゲーム音痴は溜息をついた。
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