頼れそうな怖い人
あの後絶望を味わった俺は、姉ちゃんと別れた。
手当たり次第にやるしかないな。
まずは店に行く。
初心者用の武器を買うためだ。
初心者用の銃300G。
攻撃力の一番低い銃弾が100発で100G。
初心者用ポーション10個で100G
調合の基本セットが300G
俺の冒険priceless。
残金は200G
準備は整った。
「じゃあ早速練習でもしてみますか」
NTOには東西南にそれぞれのフィールドがある。
東の『深い森』
西の『鮮やかな花畑』
南の『底なし湖』
この中でも特に不人気なのが深い森だ。
地図が使えなくなって迷う。
迷ってしまえば最期、なかなか出てこられない。
死んでしまったら教会へ転送される。
ペナルティは3時間はスキルの効果を失う。
要するに、戦闘もモノを作る事もできないのだ。
それに巨大イモムシのようなモンスターも出てきて気持ち悪いのだ。
「無難に花畑に行くか」
俺は西に向かって歩き出した。
†☆†☆†☆†☆
やっと着いた。
思いのほか街が大きかったな。
付加のレベルも上げるために次からは速度付加でもかけようか。
着いたのはいいんだが・・・
「的がねえ!」
俺はゲーム音痴だ。
いきなりモンスターと対峙しても負けるだけだ。
だから今は非戦闘区。
モンスターはいない。
「だめだ、空中に撃っても危ねえし、狙いが定まってるのかすらわかんねえな」
的・・・だめだ木しか思い浮かばない。
「森へ行くか・・・」
花畑を出て街へ戻る。
「ねえ、見てあれ」
こっちみんなよ・・・
さっきもそうだったがこの赤髪のせいでやたらと目立つ。
「そこのキミ少し時間をくれないか」
やっぱこの街でけえぞ。
「キミっ」
あ、付加かけるの忘れてた。
「キミっ!!」
「痛っ!」
頭をはたかれた。
見ると身長は俺より低く黒い目に黒い髪の女性が立っている。
なんちゅーことするんだこの人。
「何ですか?初対面の人をはたくなんて言語道断ですよ」
「すまない。だが無視をするキミにも非があることは否めない」
「そうですね。すみませんでした。で、何の用ですか?」
「うむ、キミからとても大きな力を感じるような気がするんだ」
「力・・・ですか?」
「そうだ。私は街で主に武器を造っている者だが、私の工房へ来てはくれないか?話を聞いてくれるのならキミの武器を造ってやってもいい」
「んー・・・わかりました」
「では行こう」
†☆†☆†☆†☆
「ここだ、入ってくれ。では早速聴くが、キミの先天を教えてくれ」
「先天ですか、わかりません」
「わからない?」
「はい、今朝初めてプレイしたとき先天を開放したんですが、βテスターの姉ちゃんでもわからない先天でした」
「ほう、おもしろい。では先天を開放してくれ」
「分かりました」
足元に気を集める。
すると・・・
赤く大きい魔法陣が工房を照らす。
「これは!?」
「何だかわかりました?」
「ああ、正直驚いた。キミは炎の危険先天<豪炎>だ」
「やはり危険先天なんですね・・・」
「そうだ、危険先天だ。危険先天は仲間を故意でなくとも傷つける恐れがある」
「そんな・・・」
「大丈夫、危険先天は怒りや憎しみの感情で暴発する。普段はキミの力になってくれるだろう」
「では、冷静で居れば大丈夫ってことですか?」
「いや、興奮するのはいいことだ。<豪炎>のプラス能力も発揮されるだろう」
「興奮?」
「何か?」
いかんいかん、真面目な話の最中だった。
「いいやなんでもないです。ではどうすればいいんですか?」
「寛容な心を持て。器が大きければ感情が満ちて溢れることはないだろう」
「寛容ですか・・・」
大丈夫、俺は大人なはずだ。
「大丈夫とか思って気を抜くなよキミ」
「ちゃっかり心を見透かさないで!」
「悪い悪い、しかしキミには良いものを見せてもらった。私が今できる範囲内の最高の武器を造ってやる」
「本当ですか!?」
「ああ、キミの武器はなんだ?」
「銃ですよ。銃」
「キミは物好きだな。スキルは?」
「銃・魔法適性・炎魔法・付加・千里眼・調合・製造の7つです」
「本当に物好きだな。銃に魔法に援護に生産。実におもしろい」
「でも姉ちゃんはゴミスキルって」
「それぞれで見るとゴミスキルだな」
「え・・・」
「そうガッカリするなって。あ、銃は明日の昼には造っておく」
「はい・・・」
この人話話変えるの上手いな。
くっそ、どんなにゴミスキルと言われようが上手くなってやる!
「チャレンジ精神はいい事だな。別れる前にフレンド登録をしよう」
「フレンド登録?」
「フレンド登録も知らないのか?フレンド登録をすると便利だぞ。お互いにオンラインならチャットができるし、相手がオフラインでもメールを残してやることもできる。
「へぇ、でどうすればいいんですか?」
女性が手を差し伸べた。
あ、自己紹介してないんだっけ。
まあいいや、これは握手ってことか?
「そうだ、握手だ」
「人の心を読むなって」
「ははは、キミはおもしろいな。ほら早くしろ握手握手」
ガシッ
相手が女性だから躊躇ってしまったのは言うまでもない
「シャイなんだな」
「もういいですよ・・・」
超能力師か?怖いなこの人
「超能力ではないがな。まあいい、改めて自己紹介だ。私の名前は凪。街で店を開いている鍛治職人だ。」
「俺は火焔。まだ初心者だけど、今度こそ上手くなってみせる」
「そうかキミはゲームが苦手なのか。今度こそなんて。」
「まあそんなとこです。今日はありがとうございました。」
「いやいやそんな大層なことはしてないよ」
「じゃあ失礼します。」
「無理はしないようにな」
やっぱあの人怖いな
頼れそうなのも事実だけど。
†☆†☆†☆†☆
彼は去って行った
あのやたらと赤く大きい魔法陣を思い出す。
「火焔か・・・化けるかもな」
ゲーム音痴は絶望と期待の両方を背負った。
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