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第二章 フェニックス *7* 空の国の姫君

大国フェニックス・澄湖上空――

『大変だ。お嬢様が――エレナスお嬢様がいない・・・・』ボロロは叫んだ。

『探せ!探すんだ。幸いここは空中汽艇内だ。何処かにいるはず・・・・!!』

『どうした?ライオ・・・・・!!』ボロロはライオが見ていたほうに目を向けた。

『お嬢様――!!』

気付いた時にはもう遅かった―――、エレナス・ローワン空の国の姫君は、空中汽艇から飛び降りた。


大国フェニックス西部 タラス城下町メッカ――

僕はあんまりこの町の事を知らないけれど、エリンスの図書館にあった文献によればこの国で一番賑やかで治安がいいところらしい。とにかく僕はその町にたどり着いた。

『暗い(ネガティブ)方お断り!フェニックス一賑やかな町メッカへようこそ!』

町の入り口の門にでかでかと彫られた文字――。少なくとも静かな町でないことだけはそこからうかがえた。

一歩門の中へ足を踏み出す――

そこはまるで別世界だった。大きな谷のようになっていて、そこから町全体が見渡せる。町の大半を占める商店街、住居の数々・・・そして、サルゴ王が住むタラス城!

まさに絶景だった。絵でしか見たことない世界。これこそ、旅に出る醍醐味だ。

僕は階段を一目散に駆け下り、商店街へと入った。

『魔法の書店――なんでもあります。』

僕は一番傍にあった色あせたショ―ウインドウを覗く。端の方に薄れた文字が見えた。【フォ―クス暦0035年創業(アヴァロン暦に治すと紀元30年くらい)】

古い――僕は思った。図書室の本を読んである程度は知っていたつもりだったけれど、これほど古いとはさすがに思わなかった。


バリンッ

突然、ガラスの割れる音がした。僕は吃驚して振り向いた。

『あぁ?文句あるのかよ、この飲んだくれ。』怒鳴り声が聞こえた。耳を突き刺すようなかん高い声だ。どうやら、揉めてるらしい。

『俺の半分も生きてない若僧が。俺に切れるとはいい度胸してるじゃねぇか?』

『あぁ――?』

若者はナイフを取り出す。そして、酔い潰れた男に向けた。

『全く。近頃のガキは、刃物こんなものに頼らないと自分の身も守れないのかい?』

酔った男は酒瓶を殴り捨てて、若者に襲いかかった――

刹那、僕には何が起きたかわからなかった

唯、そこには若い男が倒れていた。

『安心しろ。死んでないさ――』酔いつぶれた男は誰に言うわけでもなく独り言のように呟くと、魔法の書店の向かい側の酒屋に入っていった。

僕は若い男に駆け寄った。脈はある。息もしている――。

あの一瞬に何があったんだろう?

僕はあの男にもう一度会いたくて――酒屋に入った。


《モリ―小母さんの愚痴酒屋》

とても大きな看板の下にWELCOMEの板がぶら下がっている。僕は中へ入ると、そこから見える一番奥の席に座った。

『やぁ・・・おや?見慣れない顔だね。名前なんと言うんだい?』バーテンが訊ねた。

『ザインっていうんだ。エリンスから来た』

『あの町から来たのかい。私の名はモリ―、この酒屋のオ―ナ―さ。よろしくね。ところで、ザイン、何頼むんだい?』

『何があるの?』

『牛乳に酒類全部――、大抵は何でも。』

『じゃぁ、ミルクで』僕は言うと、辺りを見回した。額に傷がある男――、いかにも金目当てで男を誘惑している女――ん?いた!酔い潰れた男だ

『モリ―・・・さん?』僕は戸惑いがちにモリ―に訊ねた。『あの、帽子を深くかぶったヒトって誰ですか?さっき、外で喧嘩してた』

『さぁね。名前はティムとか言ってたよ。なんでも、昔は彼も強いヒトだったらしいが、二人の子供が盗賊団セルに誘拐されて、行方知らずになって以来、ずっと飲んだくれさ。』

『誘拐された?』

『そうだよ』彼女は溜息をついた。『セルは何でもやるからね。金のためなら。』

セル――エリンスの町の図書館には“目的不明の謎の集団セル。その集団は全員特別な力がある。”程度の簡単な記述しかなかった。僕はまた訊ねた。

『でも――誘拐して何をするつもりなんですか?』

『さぁね。なんせ目的不明の集団だもの。彼らが何考えてるか誰も知らないさ。この前だって――空の国ウル―タミリアのお姫様が彼らに誘拐されたしね。』

『空の国ウル―タミリア?』

『あぁ――、そういえばあんたはエリンスから来たんだっけ?田舎町までは情報は行かないからね。空の国ウル―タミリアっていうのはね。誇り高き空民が住む、巨大空中楼閣国家さ。そこでは、地上とは比べ物にならないほど研究が進んでるらしいよ。まっ、詳しいことはわからないけどね。空民は謎の民族だから。』

空の国――、エリンスの本には彼らの記述は一文も無かった気がする。僕はつい、悪い癖で空民のことを知りたくなった。僕は訊ねたが、『これ以上詳しいことは他の人に聞いてくれ』だそうだ。僕は彼女にお礼を言い、お金を払って酒場を後にした。

出て行くとき、一度ティムに目を向けたが彼はまだ、酒を飲んで酔いつぶれていた。

長らくお待たせいたしました!


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