第一章 旅立ち *6* 旅立ち
貴方は何が欲しいの?
誰かの声がする。
『僕は何もいらない。何か自分の知らないものを知れればそれで十分だ。』
ほんとに?
『うん。ほんとにほんとだよ。』
じゃぁ貴方の夢って何?
『夢・・・、冒険して探検してあっと驚きたい。』
宝物を探してお金持ちになったり、強くなって魔物と戦ったりしたいの?
『ううん。知るだけでいいんだ。その過程で、記憶を取り戻したいな。』
知らないで記憶だけ取り戻すのは駄目?
『うん。嫌だな。それは――。旅に出てこの目で確かめたい。この世界のこと。』
そう。なら、私の声を覚えておいて。いつかまた会えると思うから。きっと運命がそうさせるはずだから。
『うん。わかった。』
“僕の名前はザイン・アイット。僕の夢は冒険家になること――”
ピピピピピピピピピピピピ・・・・・
目覚ましが鳴る。僕は夢から目覚めた、
『何の夢だろう?見たことある気がする。』僕は呟く。カ―テンをを開き窓を開けた。
『う〜ん・・・・いい天気だ。』
空を仰ぐ。再びこの地の空を眺めるのはいつになるだろうか?ふとそんなことを考えてしまった。
『そういやぁ、ザインが今日旅に出るんだってな――』
町中の人が僕の噂をしていた。照れくさかったが彼らに会うのは最後かもしれない。と思うと涙が出そうになった。扉のノックオンが聞こえた――
『押忍!、お前の最後の顔覗きに来たぜ!』オストルドだった。
『いつ出発?』
『そうだな。昼頃かな・・・・』
僕は笑う振りをする。彼らの顔を見たら益々別れが辛くなった。
『おいおい、どうした?冒険は前からしたかったんだろ?』オストルドが僕の顔を覗いた。
『あぁ――・・・』
『わかった。俺等と別れるのが辛いとか?』オストルドは鼻で笑う。『いいか?使命とか――運命だとか、ごちゃごちゃ考えちゃいけないの。行きたければ行く。行きたくなければ行かない。それでいいじゃん。運命なんて勝手に決められるもんじゃなくて、自分で切り開いていくものなんだ。お前は“冒険”がしたいんだろ?記憶を探すため――己の探究心を満たすため。でもな。もし嫌なら旅立たなくてもいいんだぜ。俺たちと馬鹿話して一生過ごしてもいい。』
オストルドは『それが決まってから旅立てよ。』というと手を振って家を出て行った。
そうなのかもしれない――オストルドの言う通りだ。僕は自分の心に訊ねてみた。
“ねぇ、僕――旅に出たいのかな?”
目を瞑って旅先のことを考える。魔法――怪物――巨大な森――湖、山・・・・。
心臓の鼓動が高くなる。胸に手を当てた。
ドクドクドクドク・・・・心臓が激しく脈打った。
ふと、今朝見た夢を思い出す。
“僕の名前はザイン・アイット。僕の夢は冒険家になること――”
冒険家――。ちっちゃい頃から憧れてたっけ・・・・・・
行きたい――旅立ちたい――使命とか、世界を救うとか、そんなの抜きにして。
僕は用意していた道具を持って一目散に家を出た――
衝動的?うん、そうかもしれない。
急に胸がドキドキして、今すぐ旅に出たくなった。
『決まったのか?旅に出るか出たくないか?』町の門のところまで来たとき、誰かが僕に声をかけた。長年付き合った仲だ――。僕にはそれが誰かわかった。
『決まったよ。オストルド・・・・エラノ―ル・・・。僕は行きたい』
『そっか。』オストルドは言った。『頑張れよ。』
『さよなら。なんて言わないよ。』エラノ―ルは抱きついた。『またね。』
こうして、僕のたびは始まりを告げた。
“旅立て――
困難に果敢に立ち向かい、進んでゆけ。
君の夢を叶えるために。
君の未来を描くために”
ノスは天を仰ぐ。
『神の子ザイン・アイットに幸あれ・・・・』
第一章 旅立ち最終話です。皆さんご愛読感謝です。
コメントくださった皆さんありがとうゴザイマシタ。
何日も間を空けて考えた割には全然なってませんね。
とてもへたくそです。
でも、頑張って書きましたのでどうぞ温かく見守ってください。