*プロロ―グ
争いが絶えない“空虚の世界”フォ―クスに唯一つだけ争いごとがやまない国があった。本当は他にもあるそうなのだけれど、私は知らない。国の名はフェニックス。不死鳥と言う名が冠されたその町は、その名の通り人、龍、様々な生物が行き交う、四六時中大変賑やかな国だ。そして、悪意が生まれ、古来から“争いの発祥地”と言われ続けてきた地でもある。その南側には“空虚の世界”を取り巻く大海。偉大なる海が位置し、北は果てしなく山が続いていた。また、その偉大なる海と取り巻く港町からは日々他の国から魔法使いや武闘家。暗殺者から浮浪者まで船に乗せやって来ていてその人口は数知れず、しかし、その反面出て行く人も多かった。そういった人の中には盗賊になったり、浮浪者になった人が多かったがどれもこれも国が発祥してからずっと小物止まりで世間を騒がすような大犯罪者になったり、偉大な貢献を成し遂げた人もいなかった。しかし、丁度二十年前、王族であるメディフィフス家の没落が始まると同時期にアレクと言う巨大な魔法使いが姿を現した。彼は、黒く長いマントを羽織り、手に冥王の書を持っていた。彼はその書に記載されている禁忌の呪文を唱え、同盟国である水色の国を滅ぼすと、ドラゴンを操り、大戦争へと世界は突入した。第一の戦場になったのはその昔太古の町セロがあったとされる地区で実に三万人以上の死者をだした。それから暫く事件の余韻を残すも彼は音沙汰無しで事件は収束したかに見えた。だが、それからさらに十五年後の春(今から五年前)、占いババのお告げを受けた子供が十歳と言う節目に時期に達すると、また彼は現れ、その子供の住む村の近くで一度町を荒らした。当然、近くの民衆は力を合わせて立ち向かったが全くの無勢。そんな中お告げを受けた子供は立ち上がった。彼の名はタグラスといい、この話の主人公となる人物である。彼に出会うと、アレクは龍の動きを止め、彼に向けて問うた。
『汝、今問う。荷物を軽くして欲しいか?頭を軽くして欲しいか?それとも故郷に帰りたいか?答えぬば、汝、一番大切なものを失うであろう。』
龍に乗る者は杖を掲げた。
『――――。』彼は答えなかった。何を聞いているのかわからなかったからだ。
『答えぬば―――、汝の一番大切なものを奪うとしよう。』彼の頭には、その言葉が響き、消えていった。その後、僕は宙に吹っ飛び、海辺の町であるエリンスに倒れていた。しかし、彼の記憶は微塵も無く、ただただ頭を抱えていた――――。