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第二章 フェニックス *9* 笛使い

城下町メッカ・紅い月が丸くなるとき――

僕は、あのサ―カスの公演を見に来ていた。

『ようこそ――“魅惑の絶技フリ―クサ−カス団メッカ公演”へ!今から始まる絶技はこの世では滅多に見られない不思議な不思議なサ―カスです。大変危険で怖いので、肝っ玉が小さい人、お一人の方はご遠慮下せぇ。お?さぁ、サ−カスが始まるようです。慌てず焦らずお座り下さい・・・・』

大弾幕が開けられとてつもなく大きな光に照らされた円形状の舞台が姿を現した。

『まず、最初は――鰐と人間の半獣のカラモス・バラックです。』

甲高い音――恐らくトランペットの音――が数回鳴り舞台に緑色の皮膚をした人間が現れた。叫ぶほどの怖さもなかったが手は鎖に繋がれていて、凶暴そうだ。

『おぉぉぉ!』僕は黄色い?歓声を上げた。昨日は野宿で少し疲れていたけど、始めてみる面白い怪物に好奇心が抑え切れなくて、疲れなんてもう吹っ飛んでいた。

『皆さん。ご覧下さい。彼は一見凶暴そうに見えますが、実は理性があり、少しお茶目――』途端に、

司会者の(遠くてよく見えなかったがあれは絶対昨日会った団長だと思った。)男が飛ばされた。男は必死にマイクを持ち直し、笑った。

『えぇ――少しお茶目なところもあります。』

会場がどっとが笑った。僕は投げられた司会者に怪我がないか目を細めてみたが、驚くことに血さえも出てないようだ。司会者は続けた。

『彼は――父親が鰐でして、時々発狂するのです!でも、ご安心ください。』司会者は軽く口笛を吹いた。途端彼は大人しくなり、口笛にあわせて踊りだした。『どうです?』

司会者は笑った。そして、指を鳴らすと半獣は踊るのを止めた。そして、彼は司会者に擦り寄った。

『彼はさっきはとても緊張していましたが、実は大変人懐っこいのです!』

ささっと彼を連れてきた女の人が彼の鎖を掴み舞台裏まで引っ張っていった。

『さぁて、お次のフリ―クは――死を呼ぶ男、ララバイ・ア・デルです!』

司会者はそれだけ言うと、ささっと舞台の端に寄った。プシュ―と煙が吹く音がして舞台の中央に真っ白な――血の気を失せた男が現れた。

『彼は――・・・・』司会者はそこまで言うと、ララバイのほうを見た。そして、口を閉ざすと変わりにララバイが口を開いた。

『僕の名前は――ララバイ。死を呼ぶ男。僕の家族は皆死んでいて、このフリ―ク団に会うまでは、関わってきた友人は皆死んでしまった。え?何が面白いのかって?特技は何だって?ふふ、知りたいなら教えてあげるよ・・・・』

彼は独り言のように呟くと、息を吸った。途端――背中に寒気がどっと走った。氷のように体が寒い。思考が奪われる――

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・・

叫び声が聞こえ、何処かで人が倒れる音がした。僕の体から力が抜けた。


あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛―――


ここは何処だ?誰かが死んでいる。ああああああああ

不意に何かが頭に流れ込んできた。痛い――今にも頭が割れそうだ。途端に吐き気がして僕はその場に嘔吐した。

『――』司会者はララバイの口を押さえた。それと同時に頭の痛さは薄れ、吐き気もおさまった。

『彼の能力は“死の風”生気をなくし、幸せの記憶を奪い、辛い記憶を蘇らせ脱力させる。アレを続けていると、その者は魂が抜け落ち、死に至ります。』

『そういうことだよ――』

ララバイはそう呟くと、舞台裏に去っていった。それと同時に担架に運ばれ、数人の人が観客席から出ていったが、気絶した人たち以外、皆ショ―に魅入っている様子で誰も席から立とうとしなかった。

『ったく、やってらんねぇぜ。金とはいえ。』誰かが僕の背もたれに足を置いた。

『馬鹿か?声が大きいぞ。』

どうやらカップルのようだ。僕は抗議するのは諦めて彼らを無視した。

『はいはい。イザベラさん、了解しましたぁ。ところで、あれはまだなんですか?アレは』

『あぁ』女のほうが答えた。『未だ、反応してない。』

『そうっすか――』

『どうでしたか?』パラパラと拍手が聞こえる。上のカップルに気をとられていているうちに一つフリ―クを見逃したようだ。『お次は今回のショ―の目玉――動物使いフロー・オ―ゼットォォォォォ』

舞台に一人の身のこなしのしっかりした男と数十匹の動物が現れた。男は言った。

『こんにちは。フロ―といいます。私は前の三人と違い――ちゃんとしたヒトです。』

ピュロロロロロロロ・・・・

男は笛を吹いた。途端に動物達は男に近づき擦り寄った。男は言った。

『今から彼らを操ります。私が提案してもつまらないので、皆さんどう操って欲しいか言ってください。』

『はい!』三列ぐらい隣の男が甲高い声を上げて手を上げた。『その中で一番大きなライオンの上に乗って会場を一周してみて下さい。』

『いいでしょう。』男は答えた。そして、笛を口につけライオンの上に跨ぐ。

ピュロロロロロロロロ・・・

笛の音と共にライオンが駆け出した。あっという間に会場の半分を過ぎ、僕の横も通った。

『アレだ!』上で声がしたが僕は無視した。

『ウォォォォォォ』と歓声が上がる。気付いたらもう彼は舞台にいた。

『どうでしょうか?』彼は観客に大声で訊ねた。『何でもできますよ?人間ができることはね』

わっと観客達が沸きあがる。今度は僕と反対側にいた女の子(恐らく)が手を上げた。

『ネコさんと踊って!!』

『勿論』男は彼女にお辞儀して答えた。『ピュロロロロ・・・・』

笛を口に銜えると、数匹の猫が彼に近づいてきた。猫は肩車のようにして彼と同じ高さまで繋がると彼の手をとった。最初は下のほうの数匹がフラフラしていたもののフロ―が笛を吹くと揺ら揺らも止まり、踊りだした――。

『ズンチャッチャズンチャッチャ・・・・』

お世辞にも彼の歌は上手いとはいえなかったが、凄く面白かった。暫くすると、他の動物達も彼の歌にあわせて踊りだした。

『ズンチャッチャッチャ――!』

彼の歌が終わりを告げると同時に動物達は踊るのを止め、舞台に並んだ。司会者は言った。

『いかがでしたでしょうか?お次は――』

僕は座席に乗っかっていた足が無くなっていたのに気付くと後ろを振り向いた。

『あれ・・・?』そこには誰もいなかった。僕はまぁ、いっか。と思うと次のフリ―クを見るべく、舞台に顔を向けた。


『いかがでしたでしょうか?私たちフリ―クサーカス団は年中無休!またのお越しをお待ちしております。司会は私・フリ―クサーカス団の団長フロン・マグナルでした!!』

最後の女の子の綱渡りが終わり、最初と同じく、甲高い音が数回鳴り、ショ―は終わりを告げた。

つかれましたぁ――


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