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黙々・恋姫†無双  作者: TAPEt
黙々
41/54

十四黙



『外史』というものは『生物』だ。

『外史』を『木』に比較すれば、外史の初なるところから『蜀』『魏』『呉』という大きく分かれる『枝』があって、その枝がまた細かく分かれてまた少しずつ外史を作り出


す。

ある時は『枝』の間で争いが起こる時もある。

『魏』から出てきた枝が『呉』から出てきた枝と絡まって二つのうちに一つは、枯れて死んでしまう。外史同士で『干渉』して、滅されるのだ。

『木』が大きくなると、こんなことがどんどん多くなって来る。

『管理者』はこんな『外史』同士の争いを仲裁し、事前に止める義務がある。

『外史』という大きな『木』をうまく成長させるためだ。



(<<管理者規則>>中)



「では、汜水関の攻略の作戦を再確認します。先ず、愛紗さんと星さんが関の近くまで行って、華雄さんを挑発させてください。そしたら、武将としての自尊心を傷ついた華


雄さんは篭城せず私たちを攻撃するために関から出てくるはずです」

「その中で私が、華雄と一騎打ちで討ち取り、敵軍を混乱させる。その後白蓮殿の軍と一緒に総攻撃に移る、それでいいな」

「はい、ただ、愛紗さんが華雄さんを討ち取った後の状況を見て、こちらから一度引くように伝令を出す可能性もありますので、それは承知の上に行動をしてください」

「分かった」

「気をつけてね、愛紗ちゃん」

「はい」

「にゃあ、鈴々が華雄というやつと戦いたかったのだ」

「ちゃんとジャンケンをして決めたことだろ。往生際が悪いぞ、鈴々」

「……」


軍議の進み方が、何だかうちのところと違う。

もっと、和やかで、皆これから戦争をして、命を失うかも知れない状況だということが信じれないほど真面目さがない。


「そもそもあれは絶対愛紗が遅く出したのだ」

「い・や。私はちゃんとお主と同時に「ぱぁ」を出した」

「む……でも、次は鈴々が先陣だから大丈夫なのだ。次にあるところには呂布というすっごく強いやつがいると言ったから、そいつは鈴々が相手するのだ」

「また無茶なことを……」


関羽お姉ちゃんと張飛お姉ちゃんは、姉妹なのに春蘭お姉ちゃんと秋蘭お姉ちゃんと立場が逆だ。


「鈴々ちゃんも後でちゃんと活躍するところがあるはずだよ。だから今回は後ろで待機。代わりに一刀ちゃんが遊んでくれるから」


あ、でも、劉備お姉ちゃんと関羽お姉ちゃんも姉妹だから、この場合は春蘭お姉ちゃんと秋蘭お姉ちゃんのところと結構似ているかもしれない。

って、え?


『なんでさらりとボクが張飛お姉ちゃんと後ろで遊んでいることになってるの?』


というか、今ボク『が』張飛お姉ちゃんと遊んでくれるって言ったよね、劉備お姉ちゃん


「え?ダメなの?」

「遊んでるといっても、護衛だな。北郷を一人においておいては後で曹操軍に何を言われるかわからん」


趙雲お姉ちゃんが言ったけれど、張飛お姉ちゃんの顔を見ると、あれは絶対ボクと一緒に鬼ごっこでもするつもりだよ。

この前一緒に鬼ごっこした時「ローラブレード」使ってまで逃げてたのに追いつかれちゃったよ。これどういうこと?

歩きの幅広さはほぼ同じなはずなのに、張飛お姉ちゃんが倍は早いよ。


「おー、今日も一刀と遊ぶのだ!」


わー、ヤだよ。子供としてこう言っていいのか分からないけど、張飛お姉ちゃんとは一緒に遊びたくないよ。



<pf>


紗江SIDE


――…北郷一刀に、未来を少し見せてあげました。「特定な場面」を……


――だけど、もし北郷一刀がそれを望んだら?




僕は………やはり


ひらっ。


「紗江」

「!?華琳さま!」


一人で考え事をしていたら、突然華琳さまがやってきました。

って


「何人の服の裾たくしあげてるんですか!」

「何、大したことじゃないわ。この前のことが気になってちゃんと下着つけているのか心配だっただけよ」

「私を痴女にするおつもりですか!?」

「あなたは十分痴女よ………ところで、そんな下着、どこで売ってたの?」

「教えてあげません!///」

「まぁ、それは後で話すして……」


まったく、この変態女は……一刀ちゃんという子が居るというのに恥も知らずにこんなことを…


「今回汜水関の攻略は劉備軍と公孫賛軍が努めることになったわ」


って、本当にスルーですか。…まぁ、いいでしょう。


「そうですね…そんな情報ならこっちからでも十分承知しています。それを言うためにわざわざ大将自らこの後方まで来てくださったのですか?」

「とぼけないで頂戴……一刀をそこにおいてきて本当に大丈夫だったのでしょうね」

「何度も言いますけれど、一刀ちゃんは安全です。劉備殿が一刀ちゃんを危険に晒すことをするような人物でないことは、僕が保証しましょう。そうでなければ、僕もそんな


ところに一刀ちゃんを任せてきてはいません。劉備軍が汜水関を前にしてるとしても、話は同じです」


華琳さまが心配になる気持ちも分からなくもありませんけどね。

ぶっちゃけ僕も確認していませんから分かりませんよ。僕だって地味に忙しいのです。

凪君が助けてくれてはいますけど、流石に他軍にふらふら会いに行くわけにもいかないし、それに、管路たちがここにいることを分かったからには妖術を使うには気をつけな


ければなりません。


「大体一刀ちゃんを他の君主たちに会わせることは華琳さまのお考えだったはずです。でしたら一刀ちゃんのことを信じて僕たちは僕たちのことをしていればいいのです」

「……あなたは心配にならないの」

「……そう一々心配しているといつまでも一刀ちゃんが成長してくれません。いつまでも僕たちが、一刀ちゃんのことを見守ってくれられるとは限れないのですよ」


いつまでも純粋な子供にいてほしい。そんな望みもあった。

けれど、乱世でそんなことはできない。増して、一刀ちゃんは管路や貂蝉に常に狙われている。

しかも管路の場合、その狙われる原因が他でもなく、一刀ちゃんのことを誰よりも守りたいと思っている僕の存在というわけだから、笑えない現実だ。


「紗江?」

「…なんです?」

「…あなた、変わったわね」


……


「どういう、意味ですか?」

「最初にあなたが私に、一刀の幸せを自分の手で守ってみせると言ってたあなたよりも、今のあなたは後退しているように見えるわ」

「……」

「何かあったの?」







「僕はあなたたちが羨ましいですわ」

「??」

「『真実』が何なのか知らない。だから勇敢にも死地で身を突っ込むこともできるのです」

「紗江……?」

「でも僕は違った。全てを知っている上で、それを変えることもできずにただ見ていることすらできなかった。そういうことならいっそ、何も知らないほうが良かった。あな


たたちみたいに、僕も普通の人間だったなら、一刀ちゃんとももっと違うような関係になれたかもしれない、もっと親しくなれたかもしれない」

「……」

「なのに僕は……僕は」


ぽすん


「あ」





「あなたも色々と背負っているのでしょうね。気付けなかったわ」


次の瞬間、僕の頭は華琳さまの特に埋まるところもない胸の中に埋まっていました。


「あなたは一刀ちゃんのことを誰よりもよく知っているっていた。だけど、あなたを知っていてくれる人はあるの?」

「……」


いません。

そんな人、いるわけがない。

僕を覚えてくれる人なんて、

僕が何のためにこんなことをしてきたのか知っている人なんて……


「だったら、そんな人を作りなさい。あなたのことを全部理解できる人を、あなたの理想を分け合えるような人を。そうしないとそこに着く前に倒れてしまうから」

「……そんなの、もう遅いです。…もう誰も付いてきてくれないところまで一人で来ちゃったから。……ここで倒れても、誰も覚えてくれない」

「なら、私がなってあげましょう」

「!」

「私があなたのことを覚えていてあげるわ。あなたが何のためにここまで来たか、どうやってここまで来たか、全部私が覚えていてあげるわ」


この人は……自分が言ってる言葉の意味が分かっているんでしょうか。

いや、分からないでしょうね。

ただ『何も知らないから』、その先が絶壁の果だということもしらずに『突っ込む』だけなのです。



なのに、



なのに、悔しくも、



この人は、今僕が聞きたかったことを言ってくれた。誰でもなくこの人が、この外史の『傀儡』の中で一番多く背負っている人が……


「僕のことを『覚えて』くれますか?」

「ええ」







僕は、この世に生まれて来て初めて、ありったけ泣きました。


「うわああああああああああああーーーーん!!!!!!」

「……<<なでなで>>」

「うぅ…ぐ……ぇぐ……うぅ………!!!」


涙が、止まらない。

まるでこの世界止まらないみたいに、当たり前のように、涙が目から流され続ける。

今この場で、一生流す涙を流そうと思うがのように。


「僕は!……僕はただ……!!」



<pf>




三人称SIDE


ひらっ!


「うあぁっ!な、何!?」


突然天幕の入り口を塞いでいた布がなびく音がして劉備は驚いた。

だけど、一歩遅くそこを確認したところで、誰もいない。


「…ただの風かな」


だけど、そんなはずはなかった。

ちょうど風が強かったため、天幕の布は風にうごかないように固定されてあったのだ。

人が手で動かさないと、こんなになびくわけがない。

もちろん、劉備がそんな些細なことまで気付くわけはない。


彼女は入り口に向ってなびいている布を固定して、席に戻ってきた。

そしたらそこには、


「うわぁっ!!」

「!」


劉備の驚く声に一緒にびっくりする一刀ちゃんの姿がいた。


「か、一刀ちゃん?鈴々ちゃんと一緒にいたんじゃなかったの?」

「……」


でも、一刀ちゃんは口で答えることなく、持っていた竹簡と筆を出して何かを書いた。


『かくれんぼ。張飛お姉ちゃんがオニ』


「そ、そうなんだ……」


ひらっ!


「!」

「お姉ちゃん!一刀ここに来たのだ?」

「うん?」


と、見ると一刀ちゃんが先いたところにいません


「ううん、ここには来てないけど?」

「そっか、わかったのだ」


張飛が頷いて他のところに一刀ちゃんを探しに行ったら、いつの間に隠れていたのか寝台の下にいた一刀ちゃんが出てきました。


「…はぁ……」

「いつの間にそんなところに……」

「……」


一刀ちゃんは劉備の前に戻ってきました。


『何してたの?』

「私?特に何もしてないよ。朱里ちゃんが次が指示があるまで待っていてって言ったから」

「………」『劉備お姉ちゃんって、ここの君主なんだよね』

「うん、そうだね」

「…」『でも、別にあまり対して君主っぽい仕事してないよね』

「うぐぅっ!か、一刀ちゃんにそこを突かれるとは思わなかったよ」


劉備は本当に痛そうに肩をがっくりとしながら一刀ちゃんに言った。


「ね、一刀ちゃんの所の曹操さんは、やっぱもうちょっと君主っぽいかな?」

『良く分かんないけど…華琳お姉ちゃんはもうちょっと威厳とかあると思う』

「そ、そうなんだ…でも、威厳か。私はお偉いさん見たいにはするつもりないかな」

「?<<キョトン>>」『どういうこと?』

「私は、愛紗ちゃんたちみたいに戦いも上手じゃないし、朱里ちゃんたちみたいに頭が特にいいとかでもないから」

「……」『でも、他のお姉ちゃんたちは、劉備お姉ちゃんのために戦ってるんだよね?』

「そう、……ううん、それはちょっと違う」

「?」

「皆は、「私」のためじゃなくて、「皆」のために戦ってるんだよ」

「……?」


「自分は強いからって弱い民たちを苛める人たちのせいで、多くの力無き人たちが苦しむ。私は、そんな人たちを守って、皆が幸せになれるようにするために戦いたいと思っ


た。そしたら、一人二人、私のそんな気持ちを分かってくれる人たちが増えてきて、愛紗ちゃんや鈴々ちゃん、それから朱里ちゃん雛里ちゃん、星ちゃんみたいに強い仲間た


ちが私のことを支えてくれた」

「……」

「私一人だけじゃ何もできないよ。頭も悪いし、戦いもできないし、だけど、皆と一緒にならきっとできるよ。だから、私は皆と一緒に、私たちの「理想」のために頑張って


るんだよ」

「……あ」


<pf>



一刀SIDE



理想…


劉備お姉ちゃんは、華琳お姉ちゃんとは正反対の人だ。


華琳お姉ちゃんはすごく強いし、賢い。劉備お姉ちゃんは、自分だけじゃ頭も悪いし、弱いと言う。

華琳お姉ちゃんは天下を手に入れるために戦う。劉備お姉ちゃんは皆を守るために戦うって言う。

華琳お姉ちゃんの周りのお姉ちゃんたちは、『華琳お姉ちゃんの理想のため』に戦う。

劉備お姉ちゃんの周りのお姉ちゃんたちは、『劉備お姉ちゃんと同じ理想を見て』戦う。

華琳お姉ちゃんは自分のために戦う。劉備お姉ちゃんは人のために戦う。


もし、華琳お姉ちゃんが急に、戦いとかやめてしまうといったら、皆やめてしまう。

もし、劉備お姉ちゃんが急に、戦いとか疲れたからやめるといったら、皆に叩き直されるだろう。


華琳お姉ちゃんは強い。劉備お姉ちゃんは弱い。



同じく戦っているのに、戦う理由は全然違う。


やり方は同じなのに、目指す場所は違う。

結果が同じなのに目標が違う。









ボクは?

今のボクは何がしたい?


ボクは弱い。

何もできないと思っていた。

こんな戦争なんて、ボクとは関係ない、早く終わったらいいと思っていた。戦争なんて嫌だって思っていた。

だけど、目標がある限り、皆戦うことをやめない。

戦いが続くとたくさんの人が傷つく。たくさんの人が死ぬ。

だけどどんなにたくさんの犠牲があっても、「叶えたい理想」があるから、皆止まらない。


ボクは何がしたい?

ボクはこの戦いが早く終わってほしい。

この戦いが早く終わって、皆が幸せになれたらいいと思う。


これは、劉備お姉ちゃんと同じ理想?

違う。ボクは、ボクは他の人のことなんて構わないと思っている。

らくようというところで人が苦しんでいるとか、他のところで人が苛められるとか関係ない。

ボクはただ、華琳お姉ちゃんたちが幸せになれると思っていた。

そしたら、







……ボクも幸せになれそうだから。







そんなことのためには、誰も戦いを止めてくれない。



「…ぅ」


タッ

カラッ


「か、一刀ちゃん?」


持っていた竹簡と筆で落としてしまった。そんなことはどうだっていい。


「………ふえぇ…」

「!?一刀ちゃん?」

「ふえええええええーーーー!!!」


何も変わらない。

止められない。

こんなんじゃ、この戦いは終わらない。

ボクがいくら言っても、誰一人戦いをやめてくれない。

どうしても、この戦争は終わらない。

この戦争が終われば、また誰かが自分の理想のために戦争を起こす。

どんな犠牲があっても、叶えたい理想がある。

それを叶うまで、誰もやめようとしない。




ボクは、ボクはただ、華琳お姉ちゃんたちと一緒に幸せに暮らしたいだけだったのに。

それができない。


「ふええ…!!」

「ねえ、一刀ちゃん!どうしたの?もしかしてどこか痛いの?朱里ちゃん!鈴々ちゃん!誰でも良いから来てーー!!」


ボクは、ボクは…


















「ただあの子と幸せにいられればそれで良かった!」


【ただ皆一緒に幸せにいられればそれで良かった!】










<pf>







汜水関での戦いで、関羽は見事華雄を討ち取り、その後一度様子見に後退。

その隙を突っ込んで汜水関に突撃した曹操軍により、汜水関は落とされた。








(前略)故に『管理者』は、外史の存在に直接的な被害を与えず物事を進める必要がある。

これは『管理者』全員の安全のためである。

『管理者』たちの規律に逆らう『管理者』は即刻『外史』から『排除』される。


(管理者規則中)


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