拠点フェイス1 華琳黙
陳留の平和な朝。
まだ露店や店らも開けていないこの朝に……
??「きゃああああああああああああああああああああ!!!!」
何、この嬌声
(嬌声× 悲鳴○)
がたん!
春蘭「華琳さま!!」
春蘭さん、部屋の門を壊さないでください。
秋蘭「華琳さま!」
でも、嬌声、もとい、悲鳴をあげたのは華琳さんみたいですね。
一体なぜ……
ヘ?
一刀「……すー」
春蘭「な、ななななな…!」
秋蘭「なんと!」
華琳「はぁ…はぁ…びっくりしたわ」
悲鳴上げたの、華琳さんだったんですか?
一刀ちゃん?何故華琳さんのベッドで寝てますか?
いや、僕ももうちょっと驚きたいですよ。もっとこう、あああああああああ!!僕も悲鳴あげたいです。なにやってるんですか、
一刀「……すー」
起きろ!!
一刀「………」
春蘭「こ、こいつがどうして華琳さまと一緒に寝ているのですか」
華琳「私も解らないわよ……ね、一刀、ちょっとおきてみなさい」
でもまあ、子供にこんな朝早く起きなさいといっても無理なんですよね。
それにしてもよく寝ますね、この騒ぎで。
春蘭「このぉぉ!!」
あ、でも、早く起きないと春蘭の剣に真二つになっちゃいますよ?
華琳「春蘭?私の寝台まで切っちゃうつもりかしら」
春蘭「えっ?あ、いや、それはその……」
華琳「…一刀、…一刀起きてみなさい」
だけど起きない一刀ちゃんです。
華琳「(ピキッ)」
あ
㌧!
あ!華琳さん、シート飛ばした。一刀ちゃん吹っ飛んだー!!
どかっ!
一刀「!? !?」
床に落ちてパッと起きた一刀ちゃん。
何事かとあっちこっち見回ってます。
華琳「一刀!!」
一刀「!?(ぴくっ)」
華琳「(ゴゴゴー)どうして私の布団の中にあなたが入っているのかしら?」
一刀「ぁ…ぅ…(あわあわ)」
いや、僕を見ても…私も聞きたいですよ。
一刀「……」
春蘭「ええい、早く吐かんかー!」
秋蘭「姉者、落ち着け。北郷、竹簡をあげるからちゃんと説明するといい」
・・・
・・
・
『悪夢見た』
全員「………」
一刀「…(カタカタ」
正座いたまま、頭を守るようにして開いてある竹簡にはそう書いてありました。
華琳「そう…だから私のところに来たの…私に断りもなく潜んで」
当然まだ怒っていらっしゃる華琳さん。
一刀「…ぅ……」
華琳「……」
城に来て三日目、一刀ちゃんの大ピンチです。
華琳「はぁ……今回だけは許してあげるわ。今度また人の部屋に勝手に潜りこんだ容赦なく首を刎ねるわ」
一刀「……(こくっ)」
春蘭「華琳さま!」
華琳「何?」
春蘭「うぅぅ……」
この前の事件のせいで罰をもらってあまり経ってない春蘭さん。それ以上文句を言えずに下がります。
華琳「あなたの部屋に戻りなさい」
一刀「……」
予想以上に軽い叱りで終わり、一刀ちゃんは華琳さんの部屋から出ていきました。
華琳「二人も、もう行っていいわよ。朝から騒ぎになったわね」
春蘭「華琳さま、どうしてあの子にだけそんなに優しいのですか?」
華琳「子供が悪夢を見て頼りになりそうな人の部屋に来たというのに叱るわけにもいかないでしょう。ただ、私に断りもなく入ってきたのは許せないけど」
春蘭「なら…!」
華琳「…そういえば春蘭、前あなたの部屋に行ったら、私に断りもなく私の等身大人形を作ったみたいね」
春蘭「なっ!どうしてそれを…!!」
華琳「私の人形を作って、一体何をしたのか今夜に詳しく聞かせてもらうわよ」
春蘭「は、はいっ」
秋蘭「……」
華琳「秋蘭、どうかしたのかしら?」
秋蘭「いえ、特に問題は…」
華琳「そう、なら二人とも仕事に移りなさい」
春・秋「御意」
・・・
・・
・
それから一週間後です。
秋蘭「なぁ、姉者、最近北郷の姿を見たことがあるか?」
春蘭「は?…いや、見てないが、それがどうかしたのか?」
秋蘭「実は、私もここ最近、北郷を見かけたことがないのだ」
春蘭「どこかにいるだろう。それに、あいつ急に姿を消して他の場所に行ったり来たりするのだろ?それを使えば中間行動なんて必要ないじゃないか」
秋蘭「それはそうなんだが…」
春蘭「ええい、あんな奴のことなんてどうでも良い。どこの馬の骨なのかも知れない子供に華琳さまをとられた気がして、あいつを見ると気分が悪くなるのだ。秋蘭はそう思わないのか?」
秋蘭「姉者も言うことはわかるが、北郷が華琳さまに頼ろうとするのは当然のことだ。あんな小さい子供が、突然親を失って一人になれば、他に頼りになるような相手に付いていこうとするのは当然のことだ」
春蘭「うぅぅ……」
秋蘭「それとも、姉者は華琳さまがあんな子供がいるからって、北郷にだけ贔屓するとでも思うのか?」
春蘭「それは……そんなはずはないだろうが…」
秋蘭「なら問題ないだろう。それに、最近は華琳さまも初めてそうだったほど北郷に気を使わないみたいだし。姉者が心配するほどではないと思うのだが」
春蘭「うぅむ……」
そんな風に言う秋蘭さんでしたけど、まぁ、確かに華琳さんは一刀ちゃんが初めて来た頃は、華琳さんほぼずっと一刀ちゃんといましたからね。
まぁ、それも別に華琳さんがそうしたわけじゃなく、どこに行っても何故か一刀ちゃんが近くにいる、という状態で、華琳さんが行くところにはいつも一刀ちゃんがいました。
春蘭さんがイライラするのも無理はないです。
それにしても、あの事件以来には、本当に一刀ちゃんが動きがあまりありませんね。
初めて来た時は城のあっちこっちで現れて、華琳さんたちだけではなく、侍女さんたちや城の文官たちを驚かしたり色々ありましたね。
最近はあまり部屋から出てくることも……
……
一度言って見ましょうかね。一刀ちゃんの部屋。
・・・
・・
・
一刀ちゃん?
一刀「……??」
なっ!
一刀「……」
えっ?ちょっと待って、一刀ちゃん、え?ええ?!
・・・
・・
・
秋蘭「うん?華琳さま」
春蘭「か、華琳さま!休憩ですか?」
華琳「ええ、二人も休み中かしら」
秋蘭「はい…あ、その、華琳さま」
華琳「なにかしら」
秋蘭「最近、北郷の姿の城の中で見当たらないのですが、華琳さまは知りませんか?」
春蘭「またその話なのか?あんな奴のことはどうでもいいだろ」
華琳「そういえば、最近は見てないわね。私のところにも来ないし、侍女にだけ任せていたからね」
秋蘭「……」
華琳「そうね…そう言われてみると少し心配になるわね」
春蘭「華琳さま、そんな奴はほっといて、せっかくだからお茶でもいかがですか?」
華琳「また今度にしましょう。それじゃあ……」
春蘭「ああ…、華琳さま……」
秋蘭「姉者、今回は譲ってやってくれ」
春蘭「秋蘭?」
秋蘭「何だか、嫌な予感がするんだ」
・・・
・・
・
一刀ちゃん、しっかりしてください!一体いつからこうだったんですか?
一刀「……」
一週間!?
一週間も寝てないんですか?
【寝てないわけじゃない。悪夢で眠れない】
一緒ですよ!一週間も魘されてるなんてどういうわけですか?
一刀「……」
あれですか?やっぱり不安なんですか?こんなところにいるのって?
一刀「……(こくっ)」
じゃあ、初めて来て三日ごろは?
一刀「……(こくっ)」
何一人で我慢してるんですか、この子は!!
それで、それで華琳さんの部屋に行ってたのですか?一人で眠れないから?
一刀「……(こくっ)」
ああ、…ああ、痛い、頭痛すぎる……
いえ、見てなかった僕も悪いんですけどね。最近ここじゃなくても行くところが色々とありまして……
一刀「………<<よろよろ>>」
最初から口がいえない子だから、自分が何か辛いことがあっても人にあまり言わなくて一人で唸っているばかり。
でもこのままだと本当に体を壊してしまいます。
取り合えず布団に戻ってください。
僕が華琳さん連れてきます。
タッ
【迷惑かけたくない】
あなたがこうしてるのがもっと迷惑です!
・・・
・・
・
一刀「……」
すー
どすっ
一刀「………すー……すー……
…
……
………
一刀「…ぅ…ぅぅ……ぅ゛ぅ」
コンコン
華琳「一刀?私よ」
一刀「………」<<魘されてる
華琳「部屋にいないのかしら」
がらり
一刀「……」
華琳「寝てるの?今が何時だと……ん?」
一刀「ぅ……」
華琳「何震えて……?!」
・・・・・・・・・・・
『悪夢見た』
・・・・・・・・・・・
華琳「まさか…一刀、一刀起きなさい」
一刀「……」
華琳「(ピキッ)おきなさい!!」
㌧!
どかっ!
一刀「!? !?(ぐすん)」
『何? 何!?』
華琳「それはこっちの台詞よ。一刀、あなた一体何をしているのかしら」
一刀「……」『何も…寝てただけ』
華琳「……正直に言わないと、切るわよ」
一刀「…ぅ…<<もじもじ>>」
華琳「言いなさい。あなた、ここ一週間どうしていたの?」
一刀「……」
『悪夢見た』
華琳「………」
一刀「……」
華琳「……誰が!!」
一刀「!?」
華琳「誰が頼りにしちゃダメだと言ったのよ!!」
一刀「……」
華琳「魘されてたならそうだって言いに部屋に来ればいいでしょう?誰があなたに一人で耐えていなさいって言ったの?」
『でも……』
華琳「でもじゃないでしょう?」
一刀「……」
華琳「呆れた。子供がそんなに控え目な性格は良くないわよ?」
一刀「…」『ごめんなさい』
華琳「はぁ…いいわ、今回だけは許してあげるわ。また一人で耐えていたら容赦しないわよ。何かあったら直ぐに私にでも秋蘭にでも言いなさい。いいわね?」
一刀「(こくっ)」
華琳「…じゃあ、私が仕事があるから」
一刀「ぁ……」
ぐいっ
華琳「……何?」
一刀「…」『今』
華琳「今?…先仕事があるって言ったばかりだけど……」
一刀「……」『華琳お姉ちゃん……』
華琳「ううっ……わ、私は眠たくないわよ?」
一刀「……(うるうる)」
華琳「………っ」
・・・
・・
・
夕方
春蘭「華琳さまー!!どこですかー!!」
秋蘭「姉者」
春蘭「秋蘭!華琳さまは」
秋蘭「まだ見つかってない」
春蘭「一体どこに…はっ!もしかしてあいつの部屋に……」
秋蘭「…いや、あそこにも行ってみたが、いらっしゃらなかった」
春蘭「…そうか、なら一体どこに……」
秋蘭「そう慌てることはない。それより姉者、先華琳さまに頼まれたこと、覚えているか?」
春蘭「おおっ?私たち、今日華琳さまに何か頼まれてか?」
秋蘭「忘れたのか?明日お茶会に使うお菓子を注文しておけと言われただろ?」
春蘭「そ、そうだったか?すっかり忘れてた!秋蘭、早く行くぞ!華琳さまを失望させてはいかん!」
秋蘭「ふふっ、了解した」
たったったったっ
うへー、秋蘭さん空気読みましたね。
それにしてもこの城、何かもののけ多いですね。
何かこう…華琳さんに怨望もってる輩って結構多いみたいですし。
こいつらのせいで魘されてたのか…ちょっと気が弱いとよくひっかかるんですね、こういうのって。
まぁ、今は大丈夫でしょう。
ぐっすり寝てなさい。一刀ちゃん、華琳さんも。
さて、二人が寝てる間、私はこいつらを片付けるとしますか?
華琳・一刀「……すー……すー…」