拠点フェイズ4 華琳黙
やっぱこの外史の主人公は一刀と華琳さまですね。
その後、華琳さんが部屋に篭って三日が経ちました。
一刀ちゃんと凪さんたち以外には華琳さんが部屋に篭っているわけを知らずに、華琳さまに一体何が起きたのかと騒ぎました。
一度部屋に突撃しようとした春蘭さんは、部屋に入った瞬間華琳さんの凄まじい覇気(という名の毒気)に圧され、華琳さんの「閉じなさい」という氷のような言葉に、最後の力を振り絞って華琳さんの部屋の戸を閉じてからその場に倒れました。
春蘭さんはそのように倒れてしまって、次の日の昼頃に起きて、皆の肝を冷やしました。
特に一刀ちゃんの場合、最初凪さんたちに華琳さんが三人の誤解事を知った日、直ちに華琳さんの部屋に向いましたが、戸を開けることができず帰ってしまったので、自分があの時部屋を開けたらどんな目にあっただろうか考えるだけでも心臓が止まるような感覚に攫われるのでした。
一刀ちゃん、どうしますか?
「……」
こういう話言うのもなんですけど、今の華琳さんをなんとかできるのは、この城に一刀ちゃんしかいませんよ。
しかも、一刀ちゃんの場合と違って、華琳さんは食事もさっぱりほぼとっていないのですよ。このまま行くと命すら危険です。
「……」
そもそも、華琳さんが部屋に篭るほど悩んでいることは何なのでしょうか。
凪さんたちが一刀ちゃんを華琳さんの息子だと思ったことに何の問題が?ただの誤解で済ませることではないのでしょうか。そういうことをただで流せることは、華琳さん覇王としてのクォリティだったはずです。
というと、やはり一刀ちゃんが本当に自分の養子だったら、って考えているのでしょうか。それは流石にないと思いますがね。そこんところに関してはきっちりとしている人です。
あの頑丈な華琳さんが、今こんなところに母心に目を覚まして一刀ちゃんみたいに一刀ちゃんの本人がどう思うかに頭を悩ませている?考え難い話です。
寧ろ「自分があんな年の子がいるように見えるのか」って悩んでいるかと言うと寧ろのそのほうがありな気がするくらいです。
…もしくは、もっと根本的なことに葛藤している……?
…うん?一刀ちゃん?
一刀ちゃんどこにいったんですか?
しまった。悩んでいるうちに一刀ちゃんが動き始めてしまいました。早く追わなければ面白いことが起きた場合解説できなくなゲフンゲフン……
……
<pf>
向き先は秋蘭さんの部屋でした。
がらり
「?誰だ」
が、立っていた秋蘭さん、ふと見て戸の側に誰もいないことに頭を傾けます。
失礼ですよね。
ぐいぐい
一刀ちゃんが裾を引っ張ってやっと下に気がつく秋蘭さんでした。
「……あ、北郷か」
「……」『その自分の目線並を見てボクのことを認識できないふりをするのが、ボクをどれだけ傷つけるか400字以内で述べる?』
「いや…うん、すまん、北郷」
一刀ちゃん、案外気にしてるんですね。その辺り
正直今のは秋蘭さんがわざとやったのかと思いますが……
・・・
・・
・
「どうしたんだ?と…聞くだけ野暮だな。華琳さまのことなんだろ?」
「…(コクッ)」
秋蘭さんの部屋の椅子に座ってお茶をもらいながら二人は話を始めました。
今のところ、頼りにできるのは秋蘭さんぐらいしかいませんからね。
ちなみに桂花さんも春蘭さん並に心配していますが、春蘭さんがあの様になるのを見て、今には華琳さまがああなったのは自分のせいだとわけわからない自虐をしながら同じく部屋に篭っています。あ、仕事はちゃんとしていますので問題ありません。というか仕事さえしてくれればいつもとそう変わりません。
「華琳さまが何故あのようになったのは、おそらくこの前お前が悩んだことと同じ理由だろうな」
「…(コクッ)」『この前、凪お姉ちゃんが言った見たい』
何かこう見ると、凪さんマジで口軽いように聞こえますね。
秋蘭さんは黙りこみました。何かを考えるように見えましたが……
「言いたいことはわかった。だからつまり、華琳さまが前に北郷がしていたような悩みと同じようなことをしていると思っているのだな」
「……」『あえてそこに限るつもりはないけど、とにかくボクが華琳お姉ちゃんの息子だという誤解をされるような状況に問題があるというのは確かでしょう?』
「…今のところじゃ、そう考えるのが妥当だな」
「…秋蘭お姉ちゃんも確信できないの?華琳お姉ちゃんがどんな考えしているのか」
「今回ばかりはな。…正直、お前に関してのことは皆知識の量が皆違っている」
あ、そういやそうですね。
一刀ちゃんは普通自分の昔のことを言ったことがありません。
でも、一刀ちゃんと一緒に寝ていた華琳さんと秋蘭さん、そして桂花さんは、何故か夢に一刀ちゃんの昔のことを見ることがありました。まるで睡眠学習ですね。
そういうわけで、ぶっちゃけて言うと、寝た回数が多いと知識がもっと濃くなります。
そして、僕が知ってる限り一番一刀ちゃんと寝た回数が多いのは華琳さんです。
だから、秋蘭さんが知らないことでも、華琳さんは知っているかもしれませんね。
「……」『…そういえば、一度も聞いたことなかったよ。お姉ちゃんたち、ボクと一緒に寝るとボクの夢見るって言ったけど、それってどういう夢?』
「……それは…」
「…?」
「……たぶん、お前の周りにあった出来事の全般。時間はお前が事故にあった手先の時から孤児院に入る寸前までの中で、お前の周りにあったことだ。具体的なことは数が多すぎて分からん」
「……」
…その中には、一刀ちゃんが実は知らない場面とかもあります。
一刀ちゃんが知らないところであった医者さんとお母さんとの会話とか、お父さんとお母さんが喧嘩したこととか。一刀ちゃんを病院に帰らせた後一人で呟いたお母さんの独り言とか……そういうさまざまな記憶の欠片……
……っ
「?」【さっちゃん?】
あ、はい、どうしました?
【…大丈夫なの?】
大丈夫ですよ。ほら、秋蘭さんと話している途中だったじゃないですか。急に宙に見たらへんな目で見られますよ。
「……(コクッ)」
<pf>
取りあえず、一刀ちゃんが華琳さんの部屋にお粥も持っていってみることにしました。
流石に一刀ちゃんが入ったのに覇気出してこないでしょうね。
「……」
両手でおそおそお粥をもらって、一刀ちゃんが秋蘭さんを一度見つめました。
「大丈夫か?」
「…(コクッ)」
「私が華琳さまの部屋の前まで一緒に行くか?」
「…(フルフル)」
頭を左右に振って、一刀ちゃんは華琳さんの部屋で向おうとしました。
「…北郷」
そしたら、秋蘭さんがもう一度こっちを呼んで、一刀ちゃんがまた秋蘭さんのところを振り向きました。
「あの時、お前は結局どう結論をつけたのだ?華琳さまか?それとも元のお母さんか?」
秋蘭さん、そんなことを一刀ちゃんに聞くと…!!
「……(にしっ」
一刀ちゃんは苦笑いだけして、秋蘭さんを後にしました。
「……」
・・・
・・
・
華琳さんの部屋の前に止まった一刀ちゃんは、
「……すぅ」
先ず深呼吸をして、
「……(コクッ)」
心を決めたらしく片手で部屋の戸を開けました。
「!?」
……いや、覚悟決めたんじゃないですか?何目閉じてるんですか。
しかも、何も起こっていませんよ。
「……?」
「………」
どうやら華琳さんは寝ているみたいですね。
ベットの上で服を着たまま、一刀ちゃんが入ってきたことにも気付かずに寝ていました。
「……」
一刀ちゃんはお粥をテーブルにおいて、椅子をひきずって華琳さんが寝ているベットの前で座りました。
「……」
…そういえばですね。一刀ちゃん、結局あの時部屋から出てきた後からでも華琳さんと一緒に寝たことありませんね。
【…だって罰途中なのに来るとおかしいじゃない】
まあ、そこんところはきっと華琳さんも後悔しただろうと思いますけどね。
そういえば、その皆の署名もらった巻物持ってます?
【ある】
一刀ちゃん、人が話してるうちはちょっとこっち向いてください。
【うるさい黙れ】
うわぁ……そんな見とれてるように華琳さんの寝顔見ていなくても……
……
一刀ちゃん、もしかして、我慢してます?
「……」【別に……?】
今添い寝しても、きっと気付きませんよ、華琳さん。
【…そんなことして華琳お姉ちゃんが先に起きたらどうするの】
その時は僕が起こしてあげたらいいじゃないですか。
というか、やっぱり今添い寝したいという欲望はあるんですね。
【……っ】
ああ、そういえば、先は物騒なこと聞くと思ったのですけど、実は僕も気になりますね。
結局、どうなのですか?華琳さんがお母さんでも、一刀ちゃんが構わないのですか?
【……】
僕の話聞いた一刀ちゃんが、また辛いように苦笑しました。
【…華琳お姉ちゃんは、いい人だよ。この世界に来て、初めてボクのこと必要だって言ってくれたし、心配してくれたし、正直、お母さんにもこんなに愛されたこと、なかったと思う】
じゃあ…
【でも、華琳お姉ちゃんはこれから魏の王様になるんだよね】
…はい、そうですね。
【じゃあ…ボクだけじゃなくて、この世にいる皆のことを心配してもらわないとダメ。だから……】
一刀ちゃん、あの時占い師が言ったことを忘れたのですか?幸せも不幸も、これからは一刀ちゃんがつかまえるのですよ。
【……華琳お姉ちゃんも、…皆も、いい人たちだよ。皆優しいし、ボク、幸せ。だけど、お母さんは………それは別の話だよ】
どういう意味ですか?
【華琳お姉ちゃんは、他のお姉ちゃんたちのことも、街の皆のこともいつも考えている。そうじゃないとダメ。だけど……ボク欲張りだから、お母さんはボクだけのお母さんであって欲しい。誰のことも構わないで、ボクのことだけ見ていて欲しい。でも、華琳お姉ちゃんにはそんなお願いできない】
……
……
……自分のことだけを思ってくれる人、ですか……?
【……今考えたら、きっとお母さんはきっといいお母さんじゃなかったよ。でも、お母さんは…少なくてもあの時だけは、…ボクのことしか考えていなかった。ボクもお母さんのことしか考えてなかった。なのに今は、華琳お姉ちゃんがいて、秋蘭お姉ちゃんや桂花お姉ちゃん、春蘭お姉ちゃん、季衣お姉ちゃん、凪お姉ちゃんたちがいる。でも、お母さんは……】
一刀ちゃん
【お母さんは、別の話】
……
……
……
……
……
……
……
一刀ちゃん、
僕は、
僕は、今、
あなたをここまで連れてきたことを猛烈に後悔しています。
【…さっちゃん?】
<pf>
………ぅぅ…
「ここは…?」
真っ暗。
何も見えない。
私は……確かあの時凪の話を聞いてそのまま部屋に戻って……
そしてそらからずっと悩んでいて…
―――何をですか??
一刀ちゃんの事。
あの子が、あの子は私のことをどう思っているかって、
物事に厳しい人?
自分のことをただ守ってくれてる人??
頼れるお姉ちゃん?
………
それとも
―――お母さん?
っ……
あの子はそんな風にお母さんと別れても、お母さんのことを一度も嫌うとか恥かしく思ったことはなかった。
どれだけダメな人間だとしても、一刀がそう思っている以上、私がその代わりになるとか、そういう考えは何の意味もないわ。
―――その物言いは、あなたが彼のお母さんになりたい気持ちはあるのですね?
それは……
あの子のことを知って、守ってあげたいと思わない人はいないでしょうよ。
―――あなたなんかが彼のお母さんになれると思っているのですか?その体に血を浴びているあなたが?これから数えきらない戦争の中で、覇道の唱えながらその声で何万、何十万の人の命を奪わなければならないあなたが?妄想もそれほどだと重症ですよ?
っっ!!
―-―あなたは一刀ちゃんのお母さんにはなれない。
何ですって?
―――あなたは選ばなければなりません。一刀ちゃんか、それとも天か。大事な時、選ばなければならない時に、あなたはきっと自分が選ぶべきことを選ぶでしょう。
何故?何故そんなことになるのよ?
何故あの子にそんなことをさせなければならない?
―――あなたが覇王を目指すものだから…あなたがあの子を天の御使いとして選んだから…あの時、あなたがあの子を拾ったから……
そんな……どうしてそうなるのよ
―――……それとも、「僕」があの子をここにおいたから、か
!?
「誰!あなたは一体誰よ!」
―――僕はただ、あの子が真の幸せを与えてあげたかった。それだけだった。これが一番いい道だと思った。けど……結局あなたじゃ…
「何を言っているの?あなたは誰?答えなさい!」
―――…外史を彷徨う傀儡などに話す名前などありません
「何ですって?」
―――あなたにお願いするのではありませんでした。あなたなら…あなたならできると思ったのに……結局、僕には何もできなかった。
「あなた、一刀についてどこまで知っているの?」
―――……曹魏に王、いや、大陸の覇王になる者よ。どうか、これだけは約束してください。彼の、一刀ちゃんの目から涙が落ちないようにしてください。あの子が悲しむことがないようにしてください。僕の手であの子の幸せを掴まえてあげられないのなら、せめてその子がこれ以上不幸になりませんように………
<pf>
「待ちなさいー!!」
……
華琳さんが起きた時は、魘されたかのように体中に汗が一杯でした。
「……一体…なんだったの?」
「……すぅー、すぅー」
「うん?」
ふと温もりを感じて振り向いた場所には、一刀ちゃんが華琳さんの側で軽い息を吐きながら寝ていました。
「……」
テーブルにあるさめたお粥を見て、華琳さんは大体なことを思いつきました。
「…そうね…あまり心配をかけてしまったわ」
華琳さんは寝ている一刀ちゃんの顔に手を乗せてみました。
「……(にぱぁ)」
その感覚が気持ちよかったのか、夢の中の一刀ちゃんの顔は一層気楽そうになりました。
「……」
華琳さんは暫くその顔を見ていて、
「……いいえ、そんなはずがないわ」
何事が独り言で否定しました。
「私は曹孟徳よ。必ず、あなたも、天も手に入れるわ。あなたの幸せも、天下の民たちの幸せも、この手で掴まえてみせる」
その顔は、まるでこれから魔王を倒しに行く長い道を必ず乗り越えてみせると心を正す勇者のような顔でした。
「…いやな汗かいちゃったわね。今日風呂って空いてあったかしら」
<pf>
「……ぅ…」
「……うん?」【ボク、どれだけ…】
「あら、起きちゃったの?」
「…??!」
「何驚いてるのよ、あなたが勝手に寝ていたのでしょう?」
「……(あわあわ)」【さっちゃん!華琳お姉ちゃん起きる前に起こしてくれると言ったじゃない!】
え?はい?
ああ、そうですね。そういえばそんなこと言いましたね。
あはは、サーセン(笑)。
「……ぅ…」
困ったような顔をした一刀ちゃんは、自分をじっと見ていた華琳さんのことを振り向きました。
ベット中でくっついている華琳さんは、いつの間にか寝巻きの姿になっていました。
実は、今すっかり夜です。
「……」『ごめんなさい』
「あら、別に怒っていないわよ?それより、こんな時間なのに起きちゃって、また寝れるのかしら。せっかくだし、このままあなたのことを枕代用に使おうと思ってたんだけど」
「……?」
「?どうしたの?」
「……<<クンクン>>」『華琳お姉ちゃん、いいにおいする』
「汗かいてたからね。お風呂浴びてきたのよ」
「……<<クンクン>>」
いや、別にクンクンって匂い嗅いでいるわけではありません。ただの擬態語です、はい。
「どう?寝られそう?」
「……」『努力してみる』
「ゆっくりしていなさい。あなたが寝るまで、私が見ていてあげるから」
「……?」『華琳お姉ちゃん?』
「どうしたのかしら、一刀」
「…………ううん、なんでもない」
「変な子ね<<なでなで>>」
「……<<なでなで>>」
華琳さんの行動に何かの違和感を感じる一刀ちゃんでしたが、華琳さんからするいい匂いと、頭がなでられる感覚があまりにも気持ちよくて、それ以上思考を保てず、瞼を閉じてしまうのでした。
・・・
・・
・




