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黙々・恋姫†無双  作者: TAPEt
黙々
16/54

五黙

「……」


荒野が見える絶壁の上で、


一刀ちゃんんはいつものように黙々と、下を見ていました。


その下には……





「押せ!押せ!押し切れぇい!」


「春蘭さま!敵、撤退していきます!」


「なに、もうか?」


「はい。見ての通りです」


「ちっ、益体もない」


「追撃はどうしましょう」


「そうだな。必要とも思えんが…まぁ、良い。隊列を整えた後、一応出しておけ、ゆっくりでいいぞ」


「はいっ!」


「相手はただの町人。殺さず追い払うだけにせよ。わかっているのな」


「はい、…今日でももう三度聞きましたから」


「そうか。もう三度目か……」






「……」


一刀ちゃん?


「……」


【皆、疲れてる】


……そうですか?


あの二人だとちょっと同意しかねるのですが……






「姉者、こちらも片付いたぞ」


「ああ、秋蘭。どうだった?」


「桂花の言うとおりだ。これを…」


「やはり黄色い布か」





まぁ、確かにそうかも知れませんね。


黄巾党が発生し始め、


最近は皆さん、ちゃんと休む暇もなくああして騒ぎを起こす若い群れを蹴散らすために東奔西走していますから。


最近は城に全員が集まっていることを見たことがないほどです。


【ねぇ、さっちゃん、ボクずっと考えたんだけどね】


はい


【華琳お姉ちゃんは、ボクのことを必要だと言ってた。こんな戦が続く日々で、皆、我を失って有らされていくって。そんなとき、ボクがいてくれたら、そうならずにいられるって】


でも、解らないんですね。自分がどうすればいいのか。


「……(こくっ)」


笑ってあげたらいいと思いますよ。子供ですから。…子供じゃなくても人の笑顔が嫌いだという人はありませんよ。人が幸せだと、側の人も幸せになれますよ、きっと。


「……」【そうなの?】


少なくとも、子供の笑顔にいらっとする人はいませんよ?


【桂花お姉ちゃんはボクが笑うといつも馬鹿にしてるの?って怒るけどね】


あはは……


「……」【帰ろう】


はい。



スッ



<pf>



スッ


「一刀?」


「(びくっ)!?」


「はぁ……まったく」


あぁ…


部屋に戻ってきていれば華琳さんがベットの上で足を組んで座って、一刀ちゃんのことをお待ちしておりました。


「………」


まぁ、いつかはこんな日も来るだろうと思ってはいましたけどね。


「どこに行ってきたのはちゃんと説明してくれるかしら?」


「……」


一刀ちゃん、華琳さんがこう出る時は、全部知っていながら聞いてるんですから嘘とか言っちゃダメですよ?」


『…お散歩』


「どこへ・お散歩に・行ってきたのかしら」


「……」


一刀ちゃんは何も言わずに華琳さんの手を掴まえました。


「…何?」


「……」『最近、皆城にちゃんといないから』


「……」


『お姉ちゃんたちの体の心配とか、そういう問題以前に、ボクが寂しい』


「一刀…」


『だから……見ていた。危ないことは、しないから、見るのもダメとか言わないで』


長々と続くこの頻繁な出立によって、疲れているのは華琳さんたちだけではないのです。


一刀ちゃんだって、いつも皆と一緒にいたい。


だけどそれは無理だと言うことを承知している上でも、


今の状況はあまりにも酷いものでした。


一緒に行きたいといっても危ないからって許されないから、せめて遠くから見ている。


それが、今までの一刀ちゃんが取った行動なのですが……





「…(フルフル)」『ううん、ごめん』


「え?」


『もうしない。だから……』


そう言いながら、一刀ちゃんは掴んでいた華琳さんの手を放そうとしましたが、


「!」


放した手を、逆に華琳さんの方から握られてしまいました。


「…そうね」


そして、その手を引っ張って一刀ちゃんは自分の元に来るようにした華琳さんは一刀ちゃんを軽く抱きしめてくれました。


「…ぁ……」


「あなたがあまり優しくていい子だから、時々忘れてしまうわ。あなたがまだ子供だということも、あなたがどんな子だったのかもね……」


「……」


「ごめんね、寂しい思いさせてしまって」


「……ぅ…」


一刀ちゃんは何も言えない口からただ漏れる言葉と共に、華琳さんの方でもっとくっつくのでした。



<pf>



「あの、ボク、本当に休んじゃっても大丈夫なのですか?」


「ええ、寧ろ季衣の場合、最近働きすぎて強引にでも休ませたいぐらいだわ。あまり無茶をするといざとなった時こっちの方が困ってしまうわよ」


「……ボクそんなに無理していません」


「…あの子が最近皆のことを心配しているわ」


「北郷がですか?」


秋蘭さんが華琳さんの言葉を受けました。


「ええ、最近、皆ちゃんとしろで休んでいる時がないから、あの子も心配しているのよ」


「ふん、あのような子供に心配されるようなものでもありません」


春蘭さんがなんともないように言いますが、


「そう、それでもあの子は皆のことを心配しているわ。だから、ぐれぐれも無理はしないようにね」


「はっ」


「御意」


・・・


・・




一方城壁の上。


今日は何だか上機嫌ですね、一刀ちゃん。


「……ん……ん…ぅん♪」


何か、鼻歌とか歌っていますし、何かいいことでもあったのですか?


「…(フルフル)」


何もないのにそういう顔なのですか?


「……?」


いや、キョトンとしましても聞いたこっちが困るんですけど……いや、もう何でもないです。


「……(てへっ)」【実は今日、季衣お姉ちゃんを休ませるって華琳お姉ちゃんが言ってたの。一緒に街にでも出掛けようかなぁと思って】


あ、そうですか…って、僕をからかいましたね?


「……(にしっ)」


まったくもう……


「……ぅん…ん…ぅん…ふぅん♪」


・・・


・・




「ふぅ……」


あ、一刀ちゃん、季衣さんが来ましたよ。


「………?」


「…はあ」


何か、元気がないみたいですね。


「……」


どうしましょう。街行くの、やめますか?


「……」



<pf>



「……」


暫く季衣さんが来るのを見ていた一刀ちゃんは、


「…ぅん…んん……ふぅん♪」


季衣さんを見てないふりをして、また城壁で鼻歌を歌い始めました。


「……うん?一刀ちゃん」


「…ぅん…ふん♪」


季衣さんが呼んでも、一刀ちゃんは城壁の上に座って足で宙を蹴りながら鼻歌を歌っていました。


「こんなところで何してるの?」


「……」


そしたら、一刀ちゃんは季衣さんの方を振り向いて、


『待ってる』


「待ってるって何を……?」


その時、風が吹いてきました。


一刀ちゃんは風が吹く方に顔を向きました。


「……」


風を浴びた一刀ちゃんは季衣さんの方を振り向きました。


『機嫌を直したい時は、高いところに行って風を浴びるの。そしたら、風が苦しい事も、寂しい事も全部持っていってくれるの』


「……」


『何かあった?』


「あ……いや、その、一刀ちゃんが心配することじゃないよ」


『誰かに話すときっと楽になるよ。口を飾りにしない方がいいよ』


その発言、一刀ちゃんが言ったら凄く痛いですね。


「……実は、ボクも今日出立したかったのに、華琳さまに休みなさいって言われちゃって」


『……休み、ヤなの?』


「いやとかじゃなくて……ボクの村が盗賊たちに苦しんでいた時みたいに、他の村の人たちも苦しんでいるかと思ったら、こうしていたくないのに、華琳さまも春蘭さまも、休みなさいっていうから……」


「……」


それを聞いた一刀ちゃんは、突然手をあげて季衣さんの頭を撫でました。


城壁に座っていたら、丁度高さが合います。


「うん?<<なでなで>>……なんだよ、もう…一刀ちゃんにまで子供扱いされたくないよ」


「…(てへ)」『ごめん。季衣お姉ちゃん、優しいなって』


「優しいって?」


『自分の事よりも人のことを考えて行動するとか、ボクにはできないから』


嘘おっしゃい…


いつも人の事しか考えないから皆呆れさせるのは誰ですか?


『でも、自分自身の世話もできないまま人を助けようとするのは、それはただの馬鹿だよ。誰も褒めてくれないよ、そういうの』


「一刀ちゃん…」


『休んで、休んでからもっと元気出したら、今日自分の手ですくえなかった分まで明日助けてあげたらいい。今日の分は、秋蘭お姉ちゃんや秋蘭お姉ちゃんたちがしてあげるから』


「………うん」


『……(にこっ)』


「…なんか、一刀ちゃんにそんなこと言われたら、私の方が妹分みたいじゃない」


優しい笑顔になる一刀ちゃんを見て、季衣さんは何だか不満そうに口を尖らせました。


『ボクは別に季衣お姉ちゃんの身体のことなんて気にしないんだからね。ただ、今日季衣お姉ちゃんが休んだら、ボクと遊んでくれるかなぁって』


あ、それツンデレですか?


……あれ?デレしかなくね?


まいっか。


<pf>


「ぅん……ふぅん…ぅん…♪」


街に手を繋いで出てきてからも、一刀ちゃんはずっと鼻歌を歌っていました。


「あ、何、その鼻歌?どこかで聞いた覚えがあるような気がするんだけど」


季衣さんが何だか興味を持ったようです。


「この前この街にいた芸能人のお姉ちゃんたちが歌ってた歌。ボク、歌詞は言えないから鼻歌だけだけど」


「うーん…ボクも聞いたことあるな。確か……~~♪飾りじゃあないのよ、あたしたち♪…そういうあれだったっけ」


「(こくっ)」『歌上手だった。名前、なんだっけ…』


「確かに名前は張角……」


その時、季衣さんは足を止めて、


「??」


そして、




「あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


「(びくっ)!?」


「ねぇ、一刀ちゃん!ごめん、ボク、ちょっと華琳さまのところに行ってくる」


「!? !?」


何か重要なことを思い出したようですね。急いでるみたいですし。


一刀ちゃん。


【え?ん……でも、季衣お姉ちゃんはちょっと危ないかも…あ、もう知らない】


ぐいっ


一刀ちゃんは走っていこうとする季衣さんの服を掴みました。あまり掴むところもないんですけど、季衣さんの服。


「あぁ、一刀ちゃん、今はちょっと…」


ぐっ


【あ】


え?


スッ




・・・


・・




場所を変えて、ここは華琳さんの部屋です。


「……」


スッ


あれ?現れる場所が何故か華琳さんの頭の上……


「……いそいでぐわっ!」


「なぶぐぁっっ!」


「!!」


ガダダタン!!


あっちゃあ………


突然襲って(?)きた季衣さんと一刀ちゃんによって、椅子に座っていた華琳さんは後ろに倒れました。


…って、華琳さん、今「なぶぐゎっ!」って叫びませんでした?





「もうー、何なのよ、一体!一刀ー!!」


『ボクのせいじゃないもん!季衣お姉ちゃんが急に動くから』


「えっ?ボクのせい?ボクのせいなの?」


そうですよ、季衣さん。


瞬間移動というのは停止している状態でするのが基本なのですよ。


急に動いたりしたら、そりゃ的確度下がりますよ。




<pf>



とんだハプニングはおいといて、


季衣さんは華琳さんに張角について説明しました。


「それは本当なの?」


「はい、間違いありません」


「もし、黄巾党の張角と芸能人という張角が同一人物だとしたら、本拠地が解らないことも説明できるわね。あっちこっちを回り旅芸人なのだから」


「……」『でも、あのお姉ちゃんたち、ただ歌っていただけだよ。なのに盗賊の首魁だなんて、何かも間違いだよ』


「さぁ、どうでしょうかね。実際どうなのかはまだ解らないけれど、とにかくその張角という者が、人を惹く能力に優れていることはよく解ったわ」


「……」


他の子たちにも話したほうがよさそうね。本当に同一人物かどうかの確認も必要だし、二人は今日はもう遅いから帰ってもいいわよ。


「あ、はい」


「……」


季衣さんが先に部屋を出て行ってから、一刀ちゃんは暫く華琳さんのことを見詰めていました。


「何?まだ言いたいことがある?」


「……」『殺すの?』


「…張角を?」


「(こくっ)」


「まだ解らないわ。殺すか、それとも、あなたや季衣みたいに私の元に置くか。その者の成り次第よ」


「……」


「殺さないでって言いたいのかしら?」


「……」


一刀ちゃん?


「……(ふるふる)」


「??」


あれ?以外ですね。僕もそんなことだろうと思いましたけど。


「……」


スッ


そして、一刀ちゃんは振り向いていなくなりました。



<pf>



一刀ちゃんが戻ってきたのはまたまた城壁の上です。


ふぅいぃい~~


風を浴びる一刀ちゃんの顔は、複雑な顔になっていました。


「……」


一刀ちゃん?


【実はね、華琳お姉ちゃんたちが戦うことなんて、見たくない。だから、戦うのはやめてって、いつも言いたくなる】


…そうですね。当たり前のことです。


大切な人がいつも戦場に立つことが、好きであるはずがありませんから。


【だけど、ボクが言ってもきっとそうはならないから……私が華琳お姉ちゃんたちに会うずっと前から、華琳お姉ちゃんたちは戦っていたから】 


直接言って断れるのが怖いんですか?


「……(こくっ)」【それもある】


断れると知っていても、一度言ってみたらどうですか?少しは一刀ちゃんの意見を聞いてくれるかも知れませんよ。


【……さっちゃん、ボクのお母さんが再婚した時のこと知ってる?】


突然なんですか。


…いえ、解りませんよ。


【あの時ね、病院にお母さんが来てたの。他の人と会ってるって……】



【あの時、もしボクが行かないでって言ったら、お母さんそのおじさんと行かなかったかもしれない。でも言わなかった】


…どうしてですか?


【…それを言ってるお母さんの表情の裏で、幸せを感じたから】


………


【今日も華琳お姉ちゃんも、なんとなくそんな感じだった】


……


風が…寒いですね。



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