:03
その日、彼女たち三人のために用意された「桜」は、結局、誰の目にもふれられることなく、そして誰に利用されることもなく、その役割を終えることになった。
「どういうことかな? 説明したまえ」
憤りを隠すようにヤエが言った。言葉はヨシノへのものだった。
「通報が入ったようです」
ヨシノが短く応じる。
「通報?」
「今日という日に桜はふさわしくない、と」
「ふっ。笑わせてくれる。どうせ敵さんからの企みか何かだろうが」
「おそらくは」
「ちょっと」
カワヅが割って入る。
「何かな?」
不遜にもヤエが応じる。
「なんでヤエが偉そうにしてんのよ。リーダーでもなんでもないのに」
「ふっ」
「それに、センターはヨシノでしょ」
「センターがどれだけ偉いというのか」
「センターなんて偉くもなんともないよう」
ヨシノまでもがヤエに賛同する始末。カワヅとしては何も言い返すことができなくなる。
「一番に輝いている者が下の者に気を遣った振る舞いをするのは、勝者のそれとしては賞賛に値するのかもしれない。しかしだ、気を遣うそのことは、ある意味では残酷なことでもあるのだよ。常に輝いている者にはそのことがまるでわかってないようだがねえ」
「あのさ、ヨシノは、ヤエに気を遣ったの?」
「いえいえ。そんなこと微塵も」
「はっはっは、どうかな諸君」
「何がよ」
「つまり、そういうことだ」
ヤエの声が、基地内に響く。




