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9.動き出す影

夜。


学生マンションの一室。


窓の外はすっかり暗くなり、街灯の明かりがぽつぽつと灯っている。


桃瀬こはるはベッドの上に座り、今日の出来事を思い返していた。


朝から戦闘。


しかもヌギー二十匹。


「はぁ……」


こはるは肩を回す。


「地味に疲れた……」


その横でプルンがふわふわ浮いている。


「でも勝ったプルン」


「まあね」


こはるは少し得意げに言う。


そして、ふと思い出した。


「ねぇ、プルン」


「何プルン?」


「さっきのポイントって、どんな感じだったの?」


プルンは少し考えるようにくるくる回った。


「そうプルンね」


「さっきはヌギーが二十匹だったプルン」


「だから――」


「200ポイントプルン!」


「200かぁ」


こはるは腕を組んだ。


少し悩む。


本当なら。


このポイントは――


胸アップのために取っておきたい。


しかし。


今日の戦闘を思い出す。


ヌギー二十匹。


囲まれたときは正直、少し焦った。


「うーん……」


こはるは真剣な顔になる。


「胸のために置いておきたいところではあるんだけど……」


プルンが興味深そうに聞く。


「どうするプルン?」


こはるは決めた。


「とりあえず」


「100ポイントをお金に!」


プルンがうなずく。


「換金プルンね」


「残りは強化に使う」


こはるは続けた。


「さっきみたいなのは正直キツい!」


「だから強化!」


「あと生活費のために換金!」


こはるは手を合わせた。


「これでお願いします!」


プルンはうなずいた。


「わかったプルン!」


「お金は明日用意するプルン」


「ステッキは今強化するプルン」


「ステッキ出してプルン!」


こはるは机の上に置いてあったステッキを手に取った。


「はい」


プルンに渡す。


プルンはステッキを両手で持つ。


「また妖精界にパス繋ぐプルン」


ステッキが淡く光り始める。


すると先端から、細い光の糸のようなものが空へと伸びていく。


こはるはその様子を見上げた。


「これ、毎回思うけど」


「すごい光景よね」


プルンは真剣な顔だ。


「接続中プルン」


しばらくすると。


ぴかっ!


光が弾けた。


プルンは胸を張る。


「強化完了プルン!」


こはるが聞く。


「今回はどのくらい?」


プルンは言った。


「これで1.4倍プルン!」


こはるはステッキを見る。


「1.4倍か」


プルンは偉そうに言う。


「すごいプルン」


こはるは少し笑った。


「なんか偉そうね」


プルンは胸を張る。


「技術者プルン」


「誰が?」


「プルン」


こはるは苦笑した。


「まあいいや」


ステッキを握る。


「強くなるのはありがたい」


こはるはベッドに倒れ込んだ。


「今日はもう休もう」


プルンもうなずく。


「休息も大事プルン」


しかし――


――その頃。


別の場所。


天井の高い暗い部屋。


壁には重いカーテンが垂れ下がり、部屋の中央には一脚の椅子が置かれていた。


黒い椅子。


玉座のような装飾が施された椅子だ。


そこに座っているのは――


長い黒髪の美女。


白い肌。


妖艶な雰囲気。


脚を組み、肘掛けに頬杖をついている。


ヴェルヴェット将軍。


その前に立つ三人の少女。


兎月みう。


白森めい。


小鳥遊りり。


三人は静かに立っていた。


ヴェルヴェット将軍がゆっくり口を開く。


「それで?」


静かな声。


だが、その場の空気を支配する声だった。


みうが一歩前に出る。


「報告」


「魔法少女ピンクフリル」


「ヌギー部隊二十体を単独で撃破」


ヴェルヴェット将軍の口元がわずかに緩む。


「へぇ……」


「思ったよりやるのね」


めいが続ける。


「変態紳士とも交戦」


「互角以上の戦闘能力を確認」


りりが肩をすくめた。


「ちょっと強そうだよね」


ヴェルヴェット将軍は脚を組み替えた。


長い脚がゆっくりと動く。


「そう」


そして小さく笑う。


「面白くなりそうじゃない」


みうが言う。


「どうする?」


「潰す?」


ヴェルヴェット将軍は少し考えるように目を細めた。


「いいえ」


「まだよ」


そして三人を見渡す。


「せっかく現れた魔法少女よ」


「すぐ壊してしまうのは、もったいないわ」


りりが笑う。


「遊ぶってこと?」


ヴェルヴェット将軍はうなずく。


「そう」


ゆっくりと言った。


「まずは――」


「あなた達で試しなさい」


みうの口元が少し上がる。


「了解」


めいも静かにうなずく。


「作戦を立てます」


りりは楽しそうに笑った。


「同じマンションだしね」


ヴェルヴェット将軍の目がわずかに細くなる。


「そう」


「逃げ場はないわ」


そして静かに言った。


「魔法少女ピンクフリル」


「どこまで踊れるか」


「見せてもらいましょう」


部屋の中に、静かな笑い声が響いた。


――その頃。


また別の場所。


奇妙な部屋。


壁一面に並ぶガラスケース。


その中には――


水着姿の女性マネキン。


ポーズを取った人形。


奇妙なコレクション。


その前に立つ男。


オールバック。


マスク。


ネクタイ。


シースルー下着。


黒パンスト。


変態紳士である。


変態紳士は腕を組んで、うっとりと眺めていた。


「美しい……」


「実に美しい」


そして、ふと思い出したように言う。


「しかし」


「やはり」


小さく笑う。


「ピンクフリルのお尻は格別ですね」


コレクションを見ながら言う。


「形」


「バランス」


「美しさ」


「まさに芸術」


変態紳士は深くうなずいた。


「ぜひとも」


「私のコレクションに加えたい」


そして、指を鳴らす。


「次こそ」


「捕まえてみせますよ」


変態紳士は楽しそうに笑った。


「ピンクフリル」


「我が好敵手」


そして静かに言った。


「その美しき姿」


「必ず私のコレクションに」


こうして。


魔法少女ピンクフリルを巡る戦いは、


少しずつ


確実に


大きく動き始めていた。

 

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