5.変態紳士のコレクション
「へんしん!」
光が広がる。
服が宙に舞う。
体がくるくる回転する。
そして――
お尻が丸見えになる。
くるっ。
また回転。
やっぱりお尻。
光の中でピンクのフリル衣装が形成されていく。
そして完成。
魔法少女。
ピンクフリル。
そして、戦いは始まった!
変態紳士は両手を広げ、感動したように言った。
「素晴らしい……」
「魔法少女!」
「しかもピンク!」
「完璧だ!」
「これは間違いなくS級コレクション!」
こはるは眉をひそめる。
「コレクションって言うな」
変態紳士は優雅に一礼した。
「改めて名乗ろう」
「私は――」
「変態紳士!」
「美少女を水着にしてフィギュアのように飾る紳士だ!」
「名乗らなくていい」
こはるはステッキを構えた。
「その人を離しなさい」
変態紳士は腕の中の女性を見る。
「うむ」
「これはまだ完成前のコレクションだ」
「今から水着にして飾る予定なのだ」
女性は涙目だ。
「た、助けてください……」
こはるは言った。
「もう十分聞いた」
「プルン」
「何プルン?」
「これ倒したら200ポイントだったよね」
「そうプルン」
こはるはニヤリとした。
「よし」
「胸アップのために」
「全力で行く!」
プルンが叫ぶ。
「動機が不純プルン!」
こはるはステッキを振る。
「ピンクフリル!」
「魔法攻撃!」
ぴかっ!
光弾が飛んだ。
しかし。
変態紳士は軽く横に動く。
光弾は壁に当たって弾けた。
「ほう」
「なかなかの威力だ」
「だが」
変態紳士は笑った。
「その程度では」
「紳士は倒せない」
そう言うと。
変態紳士は腕を振った。
すると。
空中に魔法陣のようなものが現れる。
そこから。
水着が飛び出した。
「え?」
こはるが驚く。
次の瞬間。
水着がこはるに向かって飛んできた。
「ちょっと!」
ばさっ!
水着がこはるの顔にかかる。
「なにこれ!」
変態紳士は誇らしげに言った。
「私の能力」
「スイムドレス召喚!」
「美少女に水着を着せる能力だ!」
「最低!」
こはるは水着を振り払う。
しかし次の瞬間。
また別の水着が飛んできた。
ばさっ。
「うわっ」
さらに。
ばさっ。
ばさっ。
「ちょっと待って!」
「なんでこんなにあるの!?」
変態紳士は胸を張る。
「コレクターだからな!」
プルンが言う。
「水着攻撃プルン!」
こはるは必死に避ける。
「こんなの当たるわけ――」
そのとき。
足元に水着が絡まった。
「え」
次の瞬間。
つるっ。
「きゃっ!」
こはるは転んだ。
変態紳士の目が輝く。
「今だ!」
変態紳士は腕を振る。
空中に魔法陣。
そこから巨大な水着が出現する。
「コレクションモード!」
巨大水着がこはるに覆いかぶさる。
ばさっ!
こはるの体が水着に包まれた。
そして。
体が動かなくなる。
「え?」
こはるは動こうとする。
「動けない!」
変態紳士はゆっくり近づく。
「それは特別製の水着だ」
「着た者の動きを固定する」
「フィギュア化用だ」
こはるの顔が青くなる。
「ちょっと待って」
変態紳士は言う。
「安心したまえ」
「君は特別だ」
「私のコレクションの」
「センターにしてあげよう」
こはるは叫んだ。
「嫌!」
プルンが叫ぶ。
「ピンチプルン!」
変態紳士はポーズを考え始めた。
「うむ」
「この角度がいいか」
「いや」
「こっちのポーズも捨てがたい」
こはるは必死に動く。
「くっ……!」
そのとき。
こはるのステッキが光った。
ぴかっ。
水着が少し裂ける。
「え?」
こはるはもう一度力を込める。
「うおおおお!」
ばりっ!
水着が破れた。
こはるは飛び上がる。
「自由になった!」
変態紳士は驚いた。
「なんだと!?」
こはるは空中でステッキを振る。
「さっきのお返し!」
ぴかあああっ!
巨大な光弾が飛んだ。
変態紳士に直撃する。
どーーん!
煙が上がる。
しばらく沈黙。
やがて。
煙の中から声がする。
「くくく……」
煙が晴れる。
変態紳士は立っていた。
「なかなかやる」
「だが」
「まだ私の本気ではない」
こはるは驚く。
「まだ余裕あるの!?」
変態紳士はネクタイを整えた。
「もちろんだ」
「紳士は常に余裕を持つもの」
そう言って笑う。
「だが今日はここまでにしよう」
「え?」
変態紳士は女性を地面に下ろした。
「君はまだ未完成だ」
「魔法少女として」
「もう少し育ってから」
「改めてコレクションにしよう」
こはるは叫ぶ。
「逃げる気!?」
変態紳士は空を見上げた。
「紳士は」
「無理な戦いはしない」
「また会おう」
次の瞬間。
煙玉。
ぼん!
煙が晴れると。
変態紳士の姿は消えていた。
しばらく沈黙。
プルンが言う。
「逃げたプルン」
こはるは悔しそうに言う。
「ポイント……」
プルンは言った。
「でも女性は助かったプルン」
こはるは助けた女性を見る。
女性は何度も頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「本当に助かりました!」
こはるは少し照れた。
「い、いえ」
「まあ」
「たまたま通りかかっただけです」
女性が去ったあと。
こはるは空を見上げた。
「変態紳士……」
プルンが言う。
「強敵プルン」
こはるは拳を握る。
「次は逃がさない」
「200ポイント」
「絶対取る」
プルンが言う。
「胸のためプルン?」
こはるは即答した。
「当然でしょ!」
そして。
新しい街での。
ピンクフリルの戦いは――
まだ始まったばかりだった。




