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4.変態紳士現る

春から大学に通うため、桃瀬こはるは引っ越しの準備をしていた。


部屋の中には段ボール箱がいくつも並び、床には服や本、小物などが散らばっている。


「うーん……」


こはるは服を畳みながらため息をついた。


「一人暮らしってもっと気楽だと思ってたのに」


その横では、白くて丸い生き物がふわふわと浮いている。


妖精プルンである。


「荷物多いプルン」


「そりゃそうでしょ」


こはるは振り返った。


「誰のせいで生活が急に忙しくなったと思ってるのよ」


「プルン?」


「あなたよ!」


こはるは箱を閉じながら言う。


「魔法少女とかいきなり言われて」


「説明も雑だし」


プルンは首をかしげた。


「忙しかったプルン」


「絶対嘘」


荷物をまとめている途中で、こはるはふと手を止めた。


「そういえばさ」


「何プルン?」


こはるはプルンを見た。


「秘密結社ドレスティアって何?」


「ちゃんと情報教えて」


プルンは腕を組んでうなずいた。


「仕方ないプルン」


「説明するプルン」


そして胸を張る。


「秘密結社ドレスティアとは!」


「たしかこんな感じの組織プルン!」


「たしかって何よ」


こはるがツッコむ。


プルンは気にせず続けた。


「組織の野望は!」


「この街を支配し、可愛い女の子の衣装を展示する!」


「ドレスミュージアムを建設することプルン!」


「……」


こはるは一瞬固まった。


「それ本気で言ってる?」


「本気プルン」


プルンは続ける。


「声真似するプルン」


急に低い声になる。


「我々は秘密結社ドレスティア!」


「この街を支配し、可愛い女の子の衣装を展示する!」


「ドレスミュージアムを建設するのだ!」


そしてドヤ顔。


「どうプルン」


こはるはなんとも言えない顔をした。


「へ、へぇ〜」


「そ、そうなんだ」


「リアクション薄いプルン」


「だって変な組織だし」


「衣装は大事プルン!」


「そこじゃない」


そんな会話をしているうちに、荷物整理は終わった。


しばらくすると玄関のチャイムが鳴る。


引っ越し業者が来たのだ。


荷物をトラックに積み込んでもらいながら、こはるは説明する。


「学生マンションまでお願いします」


「ベッドとかタンスとか大きいものはホームセンターで買って置いてあるので」


「今回は服とか重いものだけです」


「了解しました」


荷物はあっという間に運ばれていった。


こはるは軽いバッグを肩にかける。


「荷物は明日届くんですよね?」


「はい」


「じゃあ私は先に行きます」


こはるは歩き出した。


学生マンションまでは徒歩十五分ほど。


新しい生活への第一歩である。


……のはずだった。


そのとき。


「きゃああああ!」


前方から女性の悲鳴が聞こえた。


「悲鳴プルン!」


こはるは走った。


角を曲がった先で、信じられない光景を見た。


そこにいたのは――


奇妙な男だった。


オールバックの髪型。


筋肉質な体。


そして。


変なマスク。


黒いネクタイ。


上下は黒いシースルー女性下着。


パンツはTバック。


さらに黒パンスト。


どう見ても。


変態である。


しかもその男は、小脇に女性を抱えていた。


こはるは思わず言った。


「……何あれ」


プルンも言う。


「すごい格好プルン」


怪人はこはるを見て笑った。


「おやおや」


「可愛らしいお嬢さん」


優雅に頭を下げる。


「はじめまして」


こはるは警戒する。


怪人は続ける。


「どうでしょう」


「あなたも私のところに来ませんか?」


「少々、お胸が寂しいようですが」


「それもまた一興」


こはるの額に青筋が浮く。


怪人は堂々と言った。


「美少女を水着にして!」


「フィギュアのように飾る!」


「それが私の趣味だ!」


「あなたのような可愛らしいお嬢さんは!」


「私のコレクションになるべきだ!」


こはるは冷静に言った。


「……変態」


怪人は胸を張る。


「私は変態ではない。……いや、仮に変態だとしよう。だが私は紳士だ。だから呼び名が必要なら――変態紳士と呼びたまえ!」


こはるはふと気づいた。


お尻のところに文字がある。


ジョニー


こはるは言った。


「えっと」


「ジョニーさん?」


すると怪人は激怒した。


「その名前で呼ぶな!!」


「私は変態紳士だ!」


「美少女の水着姿を愛する紳士なのだ!」


「二度とその名で呼ぶな!」


こはるは言った。


「とりあえず」


「その人を放しませんか?」


「無理だ」


変態紳士は即答する。


「これはもう私のコレクションだ」


「解放などありえない!」


こはるは小さくため息。


「そうですか」


「では」


「戦うしかなさそうですね」


こはるはプルンに聞く。


「これ倒したらポイントは?」


プルンは観察する。


「結構強そうプルン」


「たぶん200ポイントプルン」


こはるの目が輝く。


「200ポイント」


「胸アップに近づくプルン」


こはるは拳を握った。


「よし」


そして叫ぶ。


「へんしん!」


光が広がる。


制服が宙に舞う。


体がくるくる回転する。


そして――


お尻が丸見えになる。


くるっ。


また回転。


やっぱりお尻。


光の中でピンクのフリル衣装が形成されていく。


そして完成。


魔法少女。


ピンクフリル。


こはるは固まった。


「……ねえ」


プルンを見る。


「何プルン?」


「今の」


「お尻見える必要ある?」


プルンは即答した。


「あるプルン」


「なんで?」


プルンは胸を張る。


「形式美プルン」


「形式美!?」


「魔法少女変身は」


「回転」


「光」


「シルエット」


「お尻チラ」


「この四つで完成プルン」


「外せないプルン」


こはるは頭を抱えた。


「毎回これなの?」


「毎回プルン」


「嫌なんだけど!」


その横で。


変態紳士が目を輝かせていた。


「素晴らしい!」


「魔法少女!」


「これは最高のコレクションだ!」


こはるは指を突きつけた。


「悪いけど」


「私」


「胸のために負けられないの!」


プルンが叫ぶ。


「頑張るプルン!」


こうして。


ピンクフリルと変態紳士の戦いが


今、始まろうとしていた。

 

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