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15.ドレスティア作戦会議1

夜。


街のどこか。


ネオンも少なく、人通りもほとんどない裏通り。


そこに一棟の古いビルが建っていた。


外壁は少し色あせ、看板もなく、昼間でもほとんど人が出入りしないような建物だ。


誰が見ても――

ただの古びた雑居ビル。


しかし。


その地下には――

秘密結社ドレスティアの拠点が存在していた。


地下へと続く階段を降りると、そこは別世界だった。


広い部屋。


深紅の絨毯が床一面に敷かれている。


天井からは柔らかな照明が降り注ぎ、

空間を落ち着いた光で満たしていた。


壁一面には無数のガラスケース。


整然と並べられたそれらの中には――


ドレス。

制服。

舞台衣装。

コスチューム。

アイドル衣装。

舞踏会のドレス。


様々な衣装が丁寧に飾られている。


まるで衣装専門の美術館。


いや――

一人のコレクターの

異様なほど執着のこもった宝物庫だった。


そしてその中央。


一段高くなった場所に、豪華な椅子が置かれている。


深い赤色のベルベット張りの椅子。


まるで王座のようなそれに座っているのは――

一人の女性。


長い黒髪。


腰まで流れる艶やかな髪が、照明の光を受けて静かに輝いている。


妖艶な瞳。


細い指先でワイングラスをゆっくり揺らしていた。


ヴェルヴェット将軍。


秘密結社ドレスティアを率いる将軍であり、

そして――

衣装コレクター。


彼女の視線は、まるで芸術品を眺めるように

ガラスケースの衣装をゆっくりと巡っていた。


やがて。


ヴェルヴェット将軍はグラスを静かにテーブルへ置く。


「……さて」


低く、落ち着いた声。


それほど大きな声ではない。


しかし。


その場の空気を一瞬で支配するような威圧感があった。


その前に跪いている人物がいた。


小鳥遊りり。


先ほどまで怪人リリスティとして戦っていた幹部である。


地下室の静かな空気の中、りりは頭を下げたままだった。


拳を握り、悔しさを堪えている。


「申し訳ありません……」


ヴェルヴェット将軍はゆっくりと椅子から立ち上がる。


長い脚。


ヒールが絨毯を踏む。


コツ。


コツ。


静かな足音が広い部屋に響く。


彼女はゆっくりと歩き、りりの前まで来た。


そして足を止める。


見下ろす。


ヴェルヴェット将軍は少しだけ微笑んだ。


「それで?」


「どうだったの?」


りりは顔を上げる。


「……思ったより強かったです」


「魔法少女ピンクフリル」


ヴェルヴェット将軍は興味深そうに目を細めた。


その瞳は、まるで珍しい宝石を見つけた収集家のようだった。


「そう」


「あなたが負けるほど?」


りりは悔しそうに拳を握る。


「油断しました……」


「次こそは!」


りりは顔を上げて言った。


「次の機会をください!」


「必ず仕留めてみせます!」


地下室が静まり返る。


ヴェルヴェット将軍は少し考えた。


そして。


くすっと笑う。


「ふふ」


「焦らなくていいわ」


りりが驚く。


「え?」


ヴェルヴェット将軍はゆっくり歩き出す。


部屋の中央。


ガラスケースの前で立ち止まる。


中には様々な衣装が並んでいる。


舞台衣装。

アイドル衣装。

ドレス。

メイド服。


どれも完璧に保存されている。


ヴェルヴェット将軍はその中の一着を指でなぞるように眺めながら言う。


「魔法少女ピンクフリル……」


「いい素材ね」


その声はどこか楽しそうだった。


「若い」


「柔らかい」


「可愛い」


「そして――」


ヴェルヴェット将軍の唇がわずかに歪む。


「とても良い体をしている」


りりが言う。


「……確かに」


ヴェルヴェット将軍は続ける。


「特に」


「太もも」


「腰のライン」


「そして背中」


「実に美しい」


彼女はゆっくり振り返る。


長い黒髪がふわりと揺れる。


「コレクションの目玉にしたいわ」


りりは思わず言った。


「では!」


「やはり私に!」


だが。


ヴェルヴェット将軍は軽く首を振る。


「いいえ」


「今回はあなたじゃない」


りりが固まる。


「……え?」


ヴェルヴェット将軍は静かに言った。


「次は」


「幹部」


「メイディア」


その名前が呼ばれた瞬間。


部屋の奥。


影の中から一人の少女が現れた。


黒髪。

眼鏡。

整った姿勢。

落ち着いた雰囲気。


白森めい。


メイド怪人メイディア。


彼女は静かに歩み出る。


そしてヴェルヴェット将軍の前で優雅に一礼した。


「お呼びでしょうか」


ヴェルヴェット将軍は微笑む。


「ええ」


「あなたに任せるわ」


りりが悔しそうに言う。


「ちょっと!」


「なんで!」


ヴェルヴェット将軍はりりを見る。


「理由?」


そしてゆっくり言った。


「あなたはもう戦ったでしょう?」


りりは黙る。


ヴェルヴェット将軍は続ける。


「それに」


「メイドと魔法少女」


「とても絵になると思わない?」


めいは静かに言った。


「光栄です」


ヴェルヴェット将軍はめいを見つめる。


「あなたなら」


「きっと綺麗に捕まえてくれるわ」


そして少し笑う。


「壊しすぎないでね?」


「衣装が台無しになるから」


めいは再び一礼する。


「承知しました」


ヴェルヴェット将軍は満足そうだった。


「楽しみね」


「魔法少女ピンクフリル」


その瞳はまるで

新しい宝石を見るコレクターのようだった。


そして静かに言う。


「その衣装」


「必ず私のコレクションに加えるわ」


一方。


りりは腕を組んでいた。


「むぅ……」


悔しそうだ。


めいが横を通る。


りりが小声で言う。


「負けたら笑うから」


めいは淡々と答える。


「負けません」


そして静かに言った。


「魔法少女の捕獲は」


「私の専門ですから」


ヴェルヴェット将軍はその様子を見ていた。


そして楽しそうに微笑む。


静かな地下室。


ガラスケースの中で衣装が静かに輝いている。


ドレスティアの作戦は

ゆっくりと

次の段階へ進もうとしていた。

 

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