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14.快走男

朝。


窓から柔らかな光が差し込んでいた。


桃瀬こはるはベッドの上で伸びをする。


「んー……」


春の朝。


静かな部屋。


そして。


胸を見下ろす。


「……」


「増えてる」


ほんの少し。


ほんの少しだけ。


でも確実に。


昨日よりふくらみがある。


こはるはにやける。


「ふふ」


「いい朝ね」


プルンがふわふわ浮かびながら言う。


「ご機嫌プルン」


こはるは頷く。


「当然よ」


「奇跡の一歩を踏み出したんだから」


そしてベッドから起き上がる。


「そうだ」


こはるは突然思い出した。


「ねぇプルン」


「幹部怪人200ポイント、将軍500ポイントだったよね」


プルンがうなずく。


「そうプルン!」


こはるは腕を組む。


「だったらさー」


「今ステッキ強化1.8倍で幹部と泥試合の上で勝利ってことは」


「5倍くらいまで強化しないと将軍きつくない?」


プルンは腕を組む。


「うーん」


「そうかもしれないし」


「違うかもしれないプルン」


こはるが眉を上げる。


「曖昧ね」


プルンは続ける。


「闇討ちできたらワンチャンあるかもプルン!」


こはるはため息をつく。


「闇討ち前提!?」


しかしすぐに考える。


「……」


「まあでも」


「今ポイント余裕あるし」


こはるは指を立てる。


「残り100ポイント」


「ステッキに使って2倍にする!」


プルンが頷く。


「いい判断プルン」


こはるはステッキを出す。


「じゃあ強化!」


プルンがステッキを受け取る。


「妖精界とパス繋ぐプルン」


ステッキが浮かぶ。


細い光の糸が空間に伸びる。


そして。


ピカッ。


光が収束。


プルンが得意げに言う。


「これで」


「2倍プルン!」


こはるが拍手する。


「おおー!」


「なんか強くなった感じする!」


プルンが言う。


「気分プルン」


こはるは笑った。


「まあいいや」


そして立ち上がる。


「じゃあ」


「張り切ってジョギングに行きますかー♪」


ご機嫌。


理由はもちろん――


胸。


おっぱい微増。


それだけで世界は明るい。


こはるは軽やかに外へ出た。


春の空気。


少しひんやりしていて気持ちいい。


「いい天気」


軽くストレッチ。


そして走り出す。


トントントン。


軽い足音。


こはるは中学・高校と陸上部だった。


だから走るのは得意だ。


「やっぱり朝は気持ちいいね」


プルンが横を飛ぶ。


「健康的プルン」


しばらく走る。


住宅街。


公園。


川沿いの道。


順調。


しかし。


順調だったのは――


ここまでだった。


「……?」


こはるが足を止める。


後ろ。


遠くで声。


「きゃあああ!」


悲鳴。


こはるが振り向く。


「……え?」


そして。


目を疑った。


こちらに向かって走ってくる男。


しかも――


全裸。


「………」


こはるの思考が止まる。


そして男はどんどん近づく。


速い。


かなり速い。


あっという間に並走。


こはるは目を細める。


「………」


男は爽やかに笑った。


「やあ」


「太ももからお尻のラインの綺麗なお嬢さん」


「僕のコレクションになってくれないかな?」


こはるは無表情で言った。


「………変態」


男は即座に否定した。


「失敬な!」


「私のこれは走るための正装だよ!」


こはるは完全に引いていた。


男は胸を張る。


「ちゃんと自主規制マークがどんな体勢になってもついて来るだろう?」


こはるは言った。


「知らない」


男は続ける。


「だから変態ではない!」


こはるはため息をついた。


「理屈がおかしい」


しばらく沈黙。


そしてこはるは恐る恐る聞く。


「ひょっとして」


「怪人だったりします?」


男が誇らしげに言う。


「その通り!」


「私は怪人!」


「快走男!」


こはるは顔を覆った。


「またか……」


快走男は続ける。


「私は伴走者をコレクションしている!」


「あなたの太ももと尻のラインは実に素晴らしい!」


「ぜひ私のコレクションに!」


こはるは真顔。


「うざい」


プルンが言う。


「怪人プルン」


こはるは聞く。


「プルン」


「これ何ポイント?」


プルンが答える。


「200ポイントプルン!」


こはるが頷く。


「了解」


そして。


ステッキを掲げる。


「へんしん!」


光が広がる。


服がふわりと宙に舞う。


パーカーが浮かび。


ショートパンツがほどけ。


スニーカーが離れる。


体がくるくる回転する。


そして――


お尻が丸見えになる。


くるっ。


また回転。


やっぱりお尻。


光が集まる。


ピンクのフリル。


黒いリボン。


細いベルト。


網タイツ。


腿リング。


腕飾り。


ヒールブーツ。


光が形を作り上げる。


ピンクと黒が混ざる。


魔法少女。


だけど――


かなり妖艶。


こはるはくるっと回る。


そしてポーズ。


光が弾ける。


完成。


魔法少女ピンクフリル。


快走男が目を輝かせる。


「おお!」


「素晴らしい!」


「その太もも!」


「そのお尻!」


「最高だ!」


こはるは言った。


「黙れ」


そして戦闘開始。


快走男は速い。


異常なスピード。


走る。


回り込む。


こはるの周囲を高速移動。


「どうした!」


「捕まえられるかな!」


こはるは歯を食いしばる。


「速い……!」


しかし。


ステッキ強化2倍。


こはるはタイミングを見る。


そして。


踏み込む。


魔法弾。


ドン!


快走男が吹き飛ぶ。


地面を転がる。


「ぐはっ!」


こはるが近づく。


「どうやったら勝ち?」


プルンが言う。


「衣装を剥ぐプルン!」


こはるはため息。


「またそれ……」


快走男はまだ変身中。


靴。


こはるは靴を脱がす。


しかし。


まだ変身が解けない。


「え?」


プルンが言う。


「まだプルン!」


こはるは残りを見る。


靴下。


「……」


しばらく迷う。


そして。


脱がす。


その瞬間。


光が消えた。


快走男の変身が解ける。


残ったのは――


普通の全裸男。


こはるは言った。


「……」


「知らない人」


プルンが言う。


「勝利プルン」


こはるは振り返る。


「じゃ」


「帰る」


そして歩き出した。


「200ポイントゲットだぜ!」


プルンが言う。


「順調プルン」


こはるは笑う。


「この調子で」


「おっぱい育成ね」


魔法少女の戦いは。


今日も。


どこか少しだけ。


おかしい方向へ進んでいた。

 

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