12.小悪魔怪人リリスティ
「へんしん!」
こはるがステッキを掲げる。
光が広がる。
服がふわりと宙に舞う。
スカートがひらりと離れ、リボンがほどけていく。
体がくるくる回転する。
そして――
お尻が丸見えになる。
くるっ。
また回転。
やっぱりお尻。
白い光が腰のラインをなぞるように流れ、丸みのあるヒップの輪郭を一瞬だけ浮かび上がらせる。
きらめく光の中で、ピンク色の布が次々と現れていく。
胸元のリボン。
フリルのスカート。
袖の飾り。
光が形を作り上げていく。
そして完成。
魔法少女。
ピンクフリル。
プルンが誇らしげに言う。
「形式美プルン!」
こはるは軽くため息をついた。
「これ、やっぱり毎回なのね」
だがすぐに前を見る。
周囲を囲んでいるのはヌギーたちだ。
黒い全身タイツ。
奇妙なマスク。
そして同じ掛け声。
「ヌギー!」
「ヌギー!」
「ヌギー!」
こはるは周囲を見回した。
「……」
「何匹いるの?」
ざっと見ても十匹以上。
いや。
二十匹近い。
こはるは肩をすくめた。
「まあいいか」
そしてステッキを構える。
「ボーナスステージね」
ヌギーたちが一斉に突っ込んでくる。
「ヌギー!」
こはるは横に跳んだ。
フリルスカートがふわりと舞う。
「遅い!」
ステッキを振る。
ぴかっ!
光弾が飛ぶ。
ヌギー一体に直撃。
「ヌギー!」
黒いタイツが転がる。
さらに。
ぴかっ!
ぴかっ!
連続魔法。
ヌギーが次々と倒れていく。
こはるは軽やかに動く。
ジャンプ。
回転。
蹴り。
脚がしなやかに伸び、フリルスカートの下で太もものラインが一瞬だけ覗く。
ばしっ!
ヌギーが吹き飛ぶ。
プルンが叫ぶ。
「いい感じプルン!」
「今日は調子いいプルン!」
こはるは笑う。
「ステッキ強化のおかげね」
残りは数匹。
ヌギーたちが最後の突撃。
「ヌギー!」
こはるは魔法弾を放つ。
ぴかっ!
最後の一匹が転がった。
静かになる。
こはるは肩で息をする。
「ふぅ」
「終了」
そのとき。
ぱち、ぱち、ぱち。
拍手の音。
こはるが振り向く。
そこに立っていたのは――
小鳥遊りり。
街で会った時と同じ制服姿だが、
その口元にはどこか楽しげな笑みが浮かんでいる。
「へぇ」
りりは楽しそうに笑った。
「やるじゃん」
こはるは目を細める。
「……見てたの?」
りりは肩をすくめた。
「まあね」
「魔法少女って、本当にいたんだ」
こはるはステッキを握る。
「りり」
「あなた……」
りりはくすっと笑った。
「そんな怖い顔しないでよ」
そして一歩前に出る。
「でもさ」
「ここまで見ちゃったら」
「私も遊びたくなるじゃん?」
こはるが構える。
「遊び?」
りりが笑う。
「そう」
「魔法少女ごっこ」
そして指を鳴らした。
「じゃあ」
「そろそろ――」
りりがポーズを取る。
光が広がる。
黒い影のような光。
そして。
体が回転する。
長い髪がふわりと舞い上がる。
影の中で、体のラインが一瞬浮かび上がる。
くびれた腰。
すらりと伸びた脚。
小悪魔のようなしなやかなシルエット。
羽のような影が広がる。
角のシルエット。
しっぽの影。
そして光が消える。
そこに立っていたのは――
小悪魔怪人リリスティ。
黒い小さな角。
背中には小さなコウモリの翼。
腰にはハート型の尻尾。
そして体を包むのは――
小悪魔を思わせる妖艶な装備。
黒いリボン。
細いベルト。
露出の多いデザイン。
腰のラインを強調する衣装。
すらりと伸びた脚には黒いストラップが絡み、
太ももの曲線がくっきりと浮かび上がる。
足元は長いヒールブーツ。
そして胸元。
Bカップのラインがはっきりと出ている。
リリスティはくるりと回った。
スカートの代わりに揺れる小悪魔の装飾が、腰の動きに合わせてふわりと揺れる。
背中から腰、そしてヒップへと続くラインはしなやかで、
まるで踊るように軽やかだった。
「どう?」
「似合う?」
こはるは言った。
「……」
「趣味悪い」
リリスティは笑う。
「ひどいなー」
「可愛いと思うけど?」
そして指をくいっと曲げる。
「じゃあ」
「本気で遊ぼうか」
次の瞬間。
リリスティが消えた。
「!?」
こはるの背後。
「遅いよ」
ひらり。
リリスティが空中で回る。
しなやかな脚が振り下ろされる。
蹴り。
こはるが防ぐ。
「くっ」
リリスティの動きは速い。
小悪魔のように軽い。
そして距離を取る。
「ねえねえ」
「魔法少女ってさ」
「こんな格好で戦うの恥ずかしくない?」
こはるが怒る。
「余計なお世話!」
リリスティが笑う。
そして指を動かす。
「くすぐり魔法」
こはるの体に小さな光が触れる。
「ひゃっ!?」
思わず体が揺れる。
リリスティが笑う。
「ほら」
「隙だらけ」
そして突進。
ばしっ!
こはるが吹き飛ぶ。
地面に転がる。
「くっ……!」
リリスティが近づく。
ヒールブーツが地面を軽く蹴る。
その歩き方すらどこか挑発的だった。
「ねえ」
「魔法少女」
「もっと楽しもうよ」
こはるが立ち上がる。
「まだよ!」
ステッキを振る。
ぴかっ!
光弾。
リリスティが回避。
だが。
その瞬間。
びりっ。
こはるの衣装が裂けた。
「え?」
スカートの縫い目。
そして胸元。
布が破れる。
リリスティが楽しそうに笑う。
「おっと」
「壊れちゃった?」
こはるは赤くなる。
「この……!」
怒りの魔法。
ぴかっ!
連続攻撃。
リリスティが少し驚く。
「お?」
「本気?」
こはるが突進。
蹴り。
パンチ。
魔法弾。
リリスティがバランスを崩す。
その瞬間。
こはるが掴んだ。
「捕まえた!」
びりっ!
リリスティの衣装を引っ張る。
「え!?」
黒いリボンが外れる。
細いベルトがほどける。
レースの布が裂ける。
次の瞬間。
ぱしゅん!
黒い光が弾けた。
怪人の姿が崩れる。
そこにいたのは――
普通の小鳥遊りり。
そして同時に。
怪人衣装が完全に消えた。
つまり。
りりは一瞬でスッポンポンになった。
「……」
数秒沈黙。
次の瞬間。
ぽんっ!
空中に
丸い黒い自主規制マークが出現した。
胸の位置。
そして腰の位置。
ぴったりガードしている。
しかもなぜか
「自主規制」
と書かれている。
りり
「……」
顔が真っ赤になる。
「きゃああああああ!!」
慌ててしゃがみ込む。
だが。
自主規制マークが空中で追従するので
何をしてもガードは外れない。
プルンが言った。
「怪人変身が解けるとそうなるプルン」
こはる
「なんで!?」
りりは涙目で叫ぶ。
「こんなの聞いてない!!」
そのまま立ち上がり――
ダッシュ。
「覚えてなさいーー!!」
自主規制マークを前後に浮かべたまま
全速力で逃げていった。
こはるは息を整える。
「……」
プルンが言う。
「勝利プルン」
こはるは破れた衣装を見る。
「また壊れた……」
プルンが言う。
「自腹プルン」
こはるは空を見上げた。
「はぁ……」
そして地面を見る。
そこには。
リリスティの装備の一部が残っていた。
こはるはそれを拾う。
「……」
「これ」
「使えそうね」
こうして。
小悪魔との戦いは終わった。
しかし――
その小悪魔は
まだ諦めてはいなかった。




