愛してると言われても、頭上の数値は『殺意MAX』ですが?
「なんでみんなソラリスを愛してくれないの!? なんでみんなソラリスを抱きしめてくれないの!? 本当のソラリスを好きな人なんていないッ。嘘ばっかり嘘嘘嘘ッ! おかしい全部おかしいおかしい愛されるべきなのにソラリスは絶対みんなに愛されるべき存在であって痛だだだだだだだっ——!?」
剥き出しの脳みそをマシンガンで打ち抜かれているような、そんな強烈すぎる痛みに襲われる。
同時に、雪崩のように流れ込んでくる前世の記憶。
「——私がソラリス? 乙女ゲームのソラリス?」
ソラリスは、有名キャラの名前だ。
一世を風靡した『ソラリス令嬢は独りぼっち』というゲームの主人公。
ひとまず、頭痛は治まった。
そして、日本人としての人生を取り戻した。
不思議なことに、ソラリスの十六年の人生も思い出せる。
周囲を確認すると、豪奢な部屋の中だった。
かなり暗く、開けっぱなしの窓から入ってくる風がカーテンを揺らしている。
嘘でしょ?
窓開けっぱなしで、さっきのを叫んでたの……?
唯一の救いは、部屋に誰もいないことか。
しかし、私はソラリスに転生したのか。
死んだ記憶はないのに……。
幸いなのは、死ぬほどやりこんだゲームということだ。
「システムオン」
なにも起動しない。
あぁ、そっか……。
これはゲームの本当に最初の部分だ。
人から愛されないことに悩んでいたソラリスが、暗い部屋で発狂する。
その後、神に祈ることから彼女の人生は大きく様変わりする——
「確か裏庭に……」
私は部屋を飛び出し、階段を下りて裏庭に向かう。
真っ暗闇の中、ある存在を探す。
「にゃーお」
いた!
野良猫だ。
「こっちに、おいで」
手まねきすると、野良猫とは思えないくらい警戒心なく近づいてくる。
「猫ちゃんはいいね、わかりやすくて。人の心も同じくらい、わかりやすかったらいいのになぁ……」
そう、確かこんな感じのセリフだった。
そして猫がここで鳴く。
「にゃーお?」
ここまでは完璧にシナリオ通りだ。
「なに? 叶えてくれるの? ありがとう」
「にゃーお!」
カァァ——と私の全身が熱くなる。
明らかに、なにかが起きた。
猫が去り際、こちらを振り向く。
目が金色に光っていた。
その姿を見送った後、私は部屋に戻ってベッドに入る。
さあ、どうなる。
☆
翌日、目が覚めると同時、天井を見ながら口を開く。
「システムオン」
【Gap(乖離)メーター】オンにしました。
虚空に浮かんだ文字を見た瞬間、私はベッドから跳ね起きた。
きたきたきた!
これで大きく色んなものが変わりだす。
【Gapメーター】の乖離度は何パーセントに設定しますか?
「30パーセント以上で警告お願い」
【Gap30%】で設定しました。
ここで、部屋がノックされる。
「お嬢様、朝です。登校のご準備をいたしましょう」
「ええ、入って」
ソラリスは金持ちの公爵令嬢だ。
当たり前のように、家には何人ものメイドがいる。
入ってきた二十歳くらいの女性は満面の笑みを浮かべる。
「あら、寝癖がついています。お嬢様は素敵だから、直さないといけませんね」
私が男ならうっかり惚れそうな完璧なスマイル。
でもシステムは誤魔化せない。
【Gap40%】
頭上に、赤文字で警告が出た。
表に出した感情・言葉に対して、本心が離れているときにこれが発動する。
30で設定したので、それ未満のギャップであれば、いまは発動しない。
つまりメイドは、そこそこ本音ではないことを言っている。
ゲームのメーターは二つある。
一つがこれ。
もう一つは……
【レーダーチャート(解析)】起動。
念じると、彼女のソラリスに対する感情や思考の総合値と、細かい感情が五角形チャートで示される。
リフォヌ・イリジー
【総合値−52】
【軽蔑】−40
【利用】−25
【嫉妬】−13
【献身】+18
【忠誠心】+8
正の感情は+、負の感情は−で表現される。
私に対する上位五つの感情で構成され、これは細かく変動していく。
最大は+−とも100で、総合値は+500、−500までの振れ幅だ。
要は、人間の生々しい感情や内心を数値化して、感覚に頼らずに把握できる。
以前、開発者インタビューを読んだことがある。
開発者は、人に裏切られ続けた人生で、一時は極度の人間不信になったと。
そのとき、こんなのがあればいいな……がゲームを作る原動力になったのだとか。
さて、私は身支度を手伝ってもらいつつ、リフォヌを観察する。
ニコニコと、実に楽しげだ。
一切、私を軽蔑してることなど出さない。
これがプロの仕事か……。
「オルディ学院の一年よね、私って」
「そうですよ。急にどうしました?」
同じで安心した。
校舎の構造、隠し通路、イベント発生場所、全部頭に入っている。
どんなバッドエンドも回避してみせる!
「昨日、ちょっと頭をぶつけてね。たまに変なこと聞くかもしれないわ」
「大丈夫でしょうか……」
リフォヌは心配そうな顔をする。
警告がないので、一応は本心に近いのだろう。
私がおかしくなると面倒だから、心配してるだけかも。
制服に着替えると、馬車に乗って出発した。
オルディ学院の門柱前で降りる。
校舎内にいく途中で、あちらこちらから声がかかる。
「おはようございます、ソラリス様」
「今日もお美しいです! 憧れますわ」
公爵令嬢という身分は強い。
誰もが好意的な態度だ。
表面上は……。
Gap警告があちこちで出現する。
正直、ソラリスは相当な美人だ。
美しいことに嘘はないだろうが、それを発する感情に問題があるのだ。
解析しようとして——
「おはよう、ソラリス。その髪型、すごく可愛いね。今日も最高の一日になりそうだよ」
ポンと私の肩を優しく叩くのは、金髪のキラキラ王子……アーサーだ。
顔もスタイルも良く、言葉も上手い。
王位継承の一位で、人望も人気も完璧。
ロルトニア王国の奇跡とまで言われている。
だが爽やかな笑顔の上には——
【Gap85%】
おおう……。
露骨に嘘つくじゃないの。
レーダーチャート起動。
アーサー・ロルトニア
【総合値−452】
【侮蔑】−95
【悪意】−92
【画策】−90
【利用】−88
【嘲笑】−87
酷すぎる!
これで、婚約者候補なのだから驚くよね。
この世界、一度婚約すると破棄のハードルが高い。
そのため、サブパートナー制度で、本物の婚約者を選ぶ猶予期間がある。
数人くらいは、候補を作れる。
ソラリスには四人いた。
その内の一人が、アーサーだ。
あちらにも、サブパートナーは複数いる。
ただ互いの親の意向もあり、ソラリスとアーサーは婚約のプレッシャーを強くかけられていた。
「アーサー様よ、素敵ねぇ……!」
女子たちが自然と集まってくる。
熱視線は、常にアーサーに送られている。
みんなに注目されたのを確認したアーサーは、私の前でなにかを取り出す。
「今日は大切な君に、大事なプレゼントがあるんだ」
蓋のされた小ビン。
厚めの吹きガラスで作られており、正面には金細工が施されてある。
盾と咆吼する獅子を組み合わせたもので、これは王家の紋章を示す。
中には、薄緑色の液体が入っている。
「王家が愛用する香水だよ。君のために、特別に調合させた。好きに使ってくれ。君のような高貴な人に、ふさわしい」
【Gap100%】
このイベント、よく覚えている。
中身はスカンク草という、臭い草の絞り汁だ。
蓋を開けた瞬間、ソラリスが恥をかく。
この男は、ソラリスからパートナー解消するように仕向けている。
悲しいのは、原作ではソラリスは四人のパートナーたちに重度に依存していた。
いわゆる、メンヘラだった。
アーサーも、ソラリスを操れると高をくくっている。
「嬉しいですわ、アーサー様。でもその香水、とある草の絞り汁に似ていますわね」
「ッ!? ……し、絞り汁とは? 意味がわからないよ」
「失礼。そんなわけありませんわね。話は変わりますが、少し手首を見せていただけます?」
「……こうかい?」
話は変わってないんだよね。
私は素早くビンの蓋をあけ、ちょんとアーサーの手首に香水を少しつける。
「うわ!? なにをするんだ!?」
「あら、お揃いの臭いにしようかと思いまして」
「いや、その……お揃い——ウッ!?」
少し遅れてやってきた臭いは、想像以上にキツい。
馬糞にドブ川の水をかけ、さらに使い古した油を混ぜたような——要するに意味わからないほど臭い。
私はすぐに蓋を閉め、アーサーから離れる。
「あら、素敵な香りですわね〜」
ハンカチで鼻を抑えつつ、感想を述べた。
「そ、そうだろ……。気に入ってもらえて嬉しいよ。それじゃ、僕はもういくね」
アーサーは脱兎の如く走り出す。
すぐにでも洗い流したいのだろう。
彼に盲目な女子たちですら、残り香に顔を歪ませる。
「なんか臭くない?」
「アーサー様の……? そんなわけ、ないよね」
私は学校に入るとゴミ箱に小ビンを捨て——ようとして、手が止まる。
待てよ。
悪意が−92、画策が−90だった。
単なる嫌がらせにしては、数値が高すぎない?
イベントでは、これを回避すると小ビンをアーサーに返す内容だった。
でも私は回避したものの、まだ持っている。
もしや……。
捨てることまで考慮してるのでは?
誰かに捨てるシーンを見られたとして。
王子からの贈り物を捨てた不敬な女。
そういうレッテルを貼れる。
周囲を確認すると、物陰からこちらを覗いている男子がいた。
目が合うと、わかりやすく下を向いた。
「そこのあなた、動かないで!」
逃げられそうだったので、先制した。
相手は動揺している。
小走りで近づき、質問をぶつける。
「そこで、なにをしていたの? 私の行動を監視していたのかしら?」
「なんの話か、よくわかりません。僕は外を見ていただけです。失礼します」
【Gap100%】
嘘つきだと頭上に表示させ、彼は走り去っていく。
「ふー、危ない、危ない」
あやうく引っかかるところだった。
☆
昼休みになると、私は食堂の一番目立つ席を陣取った。
取り巻きのご令嬢たちが、周りを囲むように集まってくる。
本人の意志もあれば、親に私とは仲良くしろと命じられているパターンもあるだろう。
ソラリスの家は、王都のみならず、国の経済にも相当な影響を与えているからね。
取り巻きの【Gap】も酷いけれど、いまは利用させてもらおう。
「ソラリス様。アーサー様に、なにか頂いたと聞きました」
「これよ。素敵でしょう?」
私は例の小ビンを、懐から取り出して見せる。
高級な王家のビンに、どこか幻想的な薄緑色の液体。
開けたら地獄だと、予想できる令嬢がいたら友達になりたい。
「まあ! 幻想的ですわ〜」
「そうでしょう。アーサー様が、私のような高貴な人にふさわしいって!」
「きゃあ〜! 羨ましいです!」
これは嘘じゃない。
取り巻きたちのチャートは、いまのところ嫉妬がぶっちぎりで高いしね。
「ソラリス様は、やっぱり溺愛されていらっしゃるのね。もう婚約は確定みたいなものですわ!」
恋バナに色めき立つ令嬢たち。
どこの世界も、あんまり変わらないのかな。
私はニコニコと機嫌良さそうにしていると、視界の端にアーサーを捉えた。
食堂の入り口で、こちらを睨んでいる。
顔色が悪い。
まだ臭いが取れてないのかな。
気になるのは、チャートの項目が入れ替わっている。
【焦燥】−90
【困惑】−88
【画策】−86
ん?
小ビンを捨ててないことに焦っている?
または、臭いと知ってて自慢している私が理解できないのか。
どっちにしても、この小ビンは絶対に回収したいはず。
そのために、悪巧みを考えている感じか。
逆に私の方は、監視の目を外したい。
「ねえ、一つお願いがあるの。あそこにアーサー様がいるでしょう。彼の注意を引きつけておいて」
「構いませんが、どうしてですの?」
「これをつけて、彼の前にいきなり現れたいの。だから、私を見ないように。ね?」
「任せてください。いきましょう!」
女子たちが一斉に立ち上がり、アーサーの元に駆け寄る。
わちゃわちゃとして、こちらの注意を逸らす。
その隙に反対側から出て、誰もいない体育館の裏庭に向かう。
あとは、アーサーに見つからないようにする。
少し、昼寝でもしようか。
☆
帰り支度をしていると、担任教師が言う。
「ソラリスさん、少し話がある。時間よろしいかな?」
「どんなご用件でしょう」
「アーサーさんの香水の件なんだ」
やはりね。
職員室に連れてこられた。
中にはアーサー、教師たちが待機していた。
これから断罪イベントでも始める気?
声をあげたのは、爽やかな笑みを貼り付けたアーサーだ。
「やあソラリス! 僕の贈った香水、気に入ったみたいだね。取り巻きに見せていたし」
「だって、素晴らしい香水ですもの」
「……実は、問題が生じててね」
アーサーの声のトーンが落ちる。
わざとらしく。
「侍女のミスで中身が劣化していた。つけてもらって気づいたんだ。酷い臭いだった。……君がつけてしまわないか、心配でね」
そうきたか。
あくまで侍女のせいにして、自分に責任はないと。
らしいと言えば、らしいけれど。
「でも君、素敵な香りって言ってたよね。本当にそう感じたの?」
眉尻をあげ、どこか挑発するような顔だ。
【侮蔑】−95
いつも通り、中身も戻ってきた。
先生たちも動揺を隠せない様子だ。
臭いものが好きな変態なのか?
そんな感じの目をしている。
心外だ。
「特異性という点では、素晴らしいと思いました。刺激も強烈で、なかなか見ないタイプです」
「君の鼻はどうかしてるよ……。とにかくアレは危険だ、処分する。さあ!」
渡してくれと、アーサーが手を伸ばしてくる。
そこで、私は目を瞑る。
死んだ愛犬を思い出す。
目頭が熱くなってきた。
「香水、もうないんです……」
「なん、だと? まさか捨てたのか? 僕の贈り物を!?」
「断じて違います!」
恥ずかしさを捨てて、大げさなくらい動作を大きくする。
「お父様が経営する『王都オークション』に出品登録してしまいました」
「オークション……に……!? なぜ……?」
アーサーは顔面蒼白になり、発する声も弱々しい。
あまりの不意打ちに、魂が抜けたようだった。
「私、アーサー様の優しさを多くの人に知って欲しかったのです」
「意味がわからない! まったく!」
「夜会などで、よく耳にするのです。王家の品が記念に欲しいと。ほとんどの貴族は、そう考えております。そこで、あれを殿下のご慈悲で出品したとなれば、良い噂も回るかと」
淡々と話していく。
アーサーはこめかみに指を当て、頭脳をフル回転させているようだ。
「ちょっと待て。なぜ僕の慈悲だとわかる?」
「だって、出品者はアーサー様で登録しましたから」
「はあ!? どういうことだ、僕はいなかっただろ!?」
「ええ。ですが鑑定して王家の品と判明。さらに、持ち込んだのはサブパートナーであり、お父様の娘でもある私ですから。簡単に信用してもらえましたよ」
にこっ、と満面の笑みを作ってみせる。
これは、作り笑いでもないけれど。
衝撃が強すぎたのか、アーサーの膝が笑っている。
「き、君さ、仮にもサブパートナーからの贈り物を出品って——人としてどうなんだ!」
「ご自分のお言葉を思い出してください」
「へ?」
「あなたは言いました。好きに使ってくれと。これが私の使い方です。自分一人で享受するのではなく、より多くの楽しんでいただきたい。あの素晴らしい香りを」
アーサーは言葉に詰まる。
【猜疑】−90
【恐怖】−86
【焦燥】−82
チャートが入れ替わっている。
私の敵愾心に、ようやく気づき始めた。
ダメ押し、しておきますか。
「かなりの高額が予想されますわね。競り落とすのは有力貴族でしょうか。きっと夜会でも噂になります。楽しみですね〜」
「ああぁあ……」
カリカリと爪を噛むアーサー。
高額であんなもの買わされた日には、購入者は怒り心頭だろう。
いくら相手が王族でも、不満を漏らすはず。
しかも買い手は、かなりの金持ち。
爵位の高い貴族だった日には王家(特にアーサー)は、信頼を損ねる。
「……頼む、ソラリス。出品を取りやめてくれないか?」
いまにも泣きそうなアーサーに、私は小首を傾げてみせる。
お馬鹿なので理解できません、という風に。
「頼むよ! こっちが本物の『王家の薔薇』だ。これを渡すから、あちらは返してくれ!」
アーサーが本物を渡してくる。
あれと同じビンでも、中身は淡い蜂蜜色だ。
まだ未開封か。
本命のパートナーにでもプレゼントするつもりだったのかな。
「考えなくもないのですが、一つ気になることがありますわ」
「な……なんだい?」
「謝罪、ありました? 手違いとはいえ、こちらは被害者です。誠心誠意が感じられない、というのが所感です」
面食らったような顔をするアーサーだが、そこは損得計算に聡い男。
すぐに謝罪に入る。
「侍女の手違いとはいえ、申し訳なかった……。今後、このようなことは、ないようにする……」
「……私かアーサー様であれば、出品の取り消しは可能です。ただし、それができるのはあと五分ほど……」
「——ッ!?」
「広場までは、馬車で二十分。でもアーサー様の脚なら、奇跡的に間に合うかもしれませんね」
タイムリミットに焦ったアーサーは、一目散に出口を目指す。
しかし急ぎ過ぎて、すぐそこにあるドアに全身をぶつける。
閉まっていることすら、失念していたようだ。
「グッ……ウゥ……」
「痛がってる暇はないかと。あと四分ですよ」
ずいぶんと青ざめた顔で、アーサーはフラフラと職員室を出ていった。
さて。
私は教師たちに、優雅に一礼をして部屋を出る。
廊下で立ち止まり、ゲットした香水を眺める。
——ゲームにはなかった展開だ。
もの凄いボリュームなので、隠しイベントだった可能性はある。
でも、それ以外も考慮すべきだ。
私自身が能動的に動くことにより、新しい展開が作られている可能性。
仮にそうであっても。
知識が死ぬわけではない。
チャート分析もできる。
私を、ソラリスを、見下した人たちを許さない。
徹底的に闘っていく。
「……プッ」
吹き出してしまう。
私はもう一つ、香水を取り出す。
中身が薄緑色のものだ。
オークションの出品なんて、全部嘘。
アーサーの出方、判断力を試した。
結果は不合格、といったところかな。
「目には目を。嘘つきには嘘を」
アーサーの身体能力は抜群に高い。
あるいは本当に間に合うかも。
そして急いだ先に、在りもしないオークションを取り消そうとして恥をかくだろう。
「走ってアーサー。そこにゴールはないけれど」
私は、独り歩き出した。




