第7話 伸びすぎた結果、限界が先に来ました
――調子が、良すぎた。
(昨日よりできる)
(今日も、たぶんできる)
そんな感覚が、
当たり前になり始めていた。
この日の訓練は、
連続実戦形式。
短時間の模擬戦を、
休憩を挟まず何本も行う。
「アルト、次もいけるか?」
「……いけます」
口に出した瞬間、
少しだけ胸が重くなった。
(まあ、大丈夫だろ)
――この判断が、甘かった。
一本目。
勝つ。
二本目。
引き分け。
三本目。
勝つ。
周囲の視線が、
明らかに変わってきている。
「……あれ、普通に強くね?」
「昨日までこんなじゃなかったよな」
分かっている。
でも――止め方が分からない。
(今、止まったら……)
期待を裏切る気がした。
四本目。
詠唱。
短縮。
発動。
――魔力の流れが、乱れた。
(あ)
一瞬の違和感。
次の瞬間、
視界が白く弾けた。
――足に力が入らない。
「アルト!?」
誰かの声。
地面が、やけに近い。
(……倒れるな、これ)
そう思った時には、
もう意識が遠のいていた。
目を覚ますと、
天井が見えた。
(……最近、このパターン多くない?)
保健室だ。
「目、覚めた?」
声の主は――
リーナだった。
「ここ、どこ?」
「保健室。
あと、三時間寝てた」
「……そんなに?」
体を起こそうとして、
止められる。
「動かない」
「はい」
素直に従う。
「魔力枯渇よ。
しかも、かなり無理してる」
彼女は、少し怒っている。
「自覚、ある?」
「……ちょっとだけ」
「嘘」
「結構あります」
訂正した。
彼女は、深く息を吐く。
「ねえ」
「何?」
「あなた、自分が壊れる可能性、
考えてないでしょ」
その言葉に、
胸が少しだけ痛んだ。
(考えてなかった……わけじゃない)
でも。
「できると思ったんだ」
「できたから、やった?」
「……うん」
彼女は、しばらく黙る。
そして、ぽつりと。
「それ、危ない」
声が、少し震えていた。
「あなたがいなくなったら、
困る人がいるの」
――それは。
誰のことを指しているのか、
聞かなくても分かった。
「ごめん」
珍しく、素直に謝った。
彼女は、少し驚いた顔をして、
それから微笑む。
「次からは、無理しない」
「約束する」
その時、
保健室の扉が開く。
「お、起きたか」
教師だ。
「倒れるまでやるとは、
感心しないな」
「すみません」
「だが――」
教師は、俺をじっと見る。
「限界を知ったのは、
無駄じゃない」
そう言って、
一枚の紙を置く。
「これは?」
「医務室からの指示だ。
しばらく実戦制限」
……うん、予想通り。
「それと」
教師は続ける。
「次の合同訓練、
お前は後方支援に回れ」
――後退。
だが、
不思議と悔しくはなかった。
(なるほど)
俺は万能じゃない。
成長は速い。
だが、器はまだ追いついていない。
(だったら)
――広げればいい。
体も。
魔力も。
判断力も。
ベッドに戻りながら、
俺は静かに決意する。
「次は……倒れない」
銀髪の少女が、
小さく頷いた。
「それでいい」
初めての限界。
初めての挫折。
だが――
これは後退じゃない。
確実に、
次の無双へ向かうための一歩だった。
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