第3話 固まり始める序列と「便利な人」
学園生活三日目。
このあたりから、
クラスの空気が変わってきた。
具体的に言うと――
誰が偉くて、
誰が使えて、
誰が便利か。
それが、自然と決まり始める。
「前衛はあの二人だな」
「魔法はリックに任せればいい」
「回復は後ろで待機」
役割分担という名の、序列。
そして――
「アルト?
……とりあえず後ろで指示出して」
(あ、俺“とりあえず枠”だ)
便利枠、再び。
便利枠というのは不思議なもので、
評価は低いが、
いないと困る。
褒められないが、
外されない。
地味に強い。
(いや、強くはないな。
便利なだけだ)
この日も模擬戦が行われた。
敵は、
同じ中位クラスの別チーム。
「アルト、後ろな」
「はいはい」
俺はもう慣れた。
後衛で、状況を見て、
最低限の仕事をする。
――はずだった。
「前衛、下がりすぎ!
今は押せる!」
叫ぶ。
だが――
「うるさい!」
「今いいところなんだ!」
前に出た二人が、
タイミングを逃して囲まれる。
結果、敗北。
「……また負けたな」
「まあ、仕方ない」
誰も本気で反省しない。
(ああ、これ)
俺は気づいてしまった。
このクラス、
負けに慣れ始めてる。
負ける理由を、
才能や運のせいにしている。
(伸びないやつの思考だなぁ……)
口には出さない。
出したら面倒だ。
だが、その日の午後。
事件が起きた。
「次はチームを再編成する」
教師の一言で、
クラスがざわつく。
「アルト・エル=ヴァイス。
今回はお前が、指揮を執れ」
――静まり返る教室。
「え?」
「なんで?」
「後ろのやつだろ?」
俺が一番驚いていた。
(え、俺?
なんで俺?)
教師は淡々と言う。
「負けた試合でも、
お前だけが状況を見ていた」
それだけ。
(評価、そこなのか……)
チームを組み直す。
前衛二人、魔法一人、回復一人。
顔確保メンバーは、正直あまり良くない。
(勝つのは無理だな)
――普通なら。
俺は深呼吸する。
「いいか、今回は勝たなくていい」
「は?」
「負けないことを目標にする」
全員が怪訝な顔をする。
「無理に攻めない。
相手の動きを削る」
「……地味だな」
「地味でいい」
戦闘開始。
俺は、細かく指示を出す。
「一歩下がれ」
「今は魔法を温存」
「回復はまだ早い」
派手さはない。
だが――崩れない。
時間が経つ。
相手が焦れる。
ミスが出る。
「今だ、前へ!」
一気に押し返す。
結果――
引き分け。
「……負けてない」
「え、負けてないぞ?」
クラスがざわつく。
教師は、口元を少しだけ緩めた。
「勝てなかったが、
崩れもしなかった」
その視線が、俺に向く。
「指揮としては、及第点だ」
その言葉に、
クラスメイトの視線が変わる。
尊敬ではない。
信頼でもない。
――警戒だ。
(ああ、始まったな)
序列は、
簡単には覆らない。
だが。
ひびは入った。
そしてその様子を、
少し離れた場所から見ていた銀髪の少女が、
小さくつぶやく。
「やっぱり……変」
その“変”が、
やがて“特別”になることを、
まだ誰も知らない。
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