第2話 学園初日と「見えない序列」
王立魔武学園――初日。
正直に言おう。
空気がピリピリしている。
理由は簡単だ。
ここは「才能がすべて」の世界であり、
しかも学園という名の序列製造工場だからである。
「アルト・エル=ヴァイス。中位クラス、席は後ろから二列目だ」
指定された席は、
目立たないが埋もれもしない、
絶妙にコメントしづらいポジション。
(……学校側、絶対わざとだろ)
前方には上位クラスの生徒たち。
後方には下位クラス。
前からは見下ろされ、
後ろからは「上だ」と思われる。
板挟み。
社会の縮図である。
「ねえ、あいつ中位だって」
「でも伯爵家の三男でしょ?」
「つまり微妙」
ひそひそ声が普通に聞こえる。
この学園、防音魔法が弱い。
最初の授業は「魔法基礎理論」。
教師は白髪の老魔導士。
見るからに感覚派至上主義だ。
「魔法とは、考えるものではない。感じるものだ」
来た。
予想通りだ。
(まあ、そういう世界だよね)
ノートを取りながら聞き流す……つもりだった。
「では問おう。
なぜ魔法陣は円形が基本なのか?」
教室が静まり返る。
(あ、これ知ってる)
つい、手が上がった。
「安定性と、魔力循環効率です」
「……ほう?」
教師が一瞬だけ、興味を示した。
「角があると魔力が滞留します。
円形は最短距離で流れを――」
「だが実戦では意味がない」
即、切られた。
「考えている間に、斬られるからな」
クラスがクスクス笑う。
(はいはい、そうですよねー)
ここで反論しても無駄だ。
今は“平均的な生徒”でいい。
次は実戦訓練。
五人一組の模擬戦だ。
俺のチームは――
剣士二人、魔法使い一人、回復役一人、そして俺。
「アルトは後衛な」
「了解」
この時点で、
俺はもう戦力として数えられていない。
(楽でいい)
戦闘開始。
敵チームが突っ込んでくる。
「左から来る!」
「右も!」
俺は一瞬で状況を判断する。
「前衛、下がりすぎ。
回復役は中央、魔法は牽制――」
「うるさい!」
剣士が叫ぶ。
「考えるより殴れ!」
そして突っ込んで――
秒で吹き飛ばされた。
(あ、はい)
結果。
完敗。
「やっぱ頭でっかちだな」
「指示が遅い」
責められる。
まあ、分かってた。
だが俺は、内心で別のことを考えていた。
(詠唱が長い)
(役割が固定されすぎ)
(情報共有が足りない)
――改善点が、山ほどある。
放課後。
俺は一人で訓練場に残っていた。
詠唱を短く。
動きと同時に魔法を組む。
昨日より、確実にうまくなっている。
(……伸びるの、早くないか?)
まあいい。
便利な体質だと思っておこう。
「ねえ」
声をかけられた。
振り向くと、
上位クラスの銀髪の少女が立っていた。
「さっきの指示、聞こえてた」
「どうも」
「間違ってはいなかったわ」
彼女は少し困ったように言う。
「でも、周りがついてこられなかった」
「よく言われる」
少しだけ、沈黙。
「……変な人」
「それも、よく言われる」
彼女は、思わず笑った。
ほんの一瞬。
でも、確かに笑った。
「あなた、無自覚?」
「何が?」
「いえ、何でもない」
彼女はそう言って、去っていく。
(なんだろうな……)
学園初日。
成果はゼロ。
評価も低い。
だが。
(この学園、攻略しがいがある)
俺はノートを閉じ、立ち上がる。
まずは――
“勝ち方”を、この世界に合わせるところからだ。
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