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転生賢者は学園から世界を獲る ―知識無双から始まる成長覇道―  作者: 夜凪レン


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11/12

第11話 壊したのは派閥ではなく、「前提」だった

 それは、

 本当に小さな事件だった。


 大騒ぎになることもなく、

 剣が抜かれることもない。


 だが――

 確実に、何かが壊れた。


 発端は、

 共同課題の不正だった。


 学園では定期的に、

 クラス・派閥を超えた合同課題が出される。


 目的は建前上「協調性」。

 実態は「実力の可視化」だ。


 今回の課題は、

 模擬都市の運営。


・人員配置

・資源管理

・治安維持

・突発イベント対応


 期間は三日。


 失敗すれば減点。

 成功すれば加点。


 そして――

 派閥ごとの評価に直結する。


(来たな)


 俺は、内心でそう思った。


 なぜなら。


 この課題、

 “正直者が損をする設計”だからだ。


 案の定。


「資源が足りない?」

「記録では足りてるはずだぞ」


 現場が、混乱する。


 原因は単純。


 上位貴族派閥が、

 裏で資源を横流ししていた。


 理由は明快だ。


 他のチームを失敗させ、

 自分たちだけが成功する。


 よくある話だ。


(普通なら、告発する)


 だが――

 それは悪手だ。


 証拠は消される。

 逆にこちらが睨まれる。


 だから。


(壊すのは、“行為”じゃない)


 前提だ。


 俺は、

 淡々と動いた。


 まず、

 課題の規定を読み込む。


「……なるほど」


 そこには、

 こう書かれていた。


「資源は、各チームが

自由に管理してよい」


 だが、

 その次の行。


「ただし、

都市全体の安定性は

全チームの連帯責任とする」


(ここだ)


 俺は、

 教師に一つだけ質問した。


「資源不足が発生した場合、

 原因の特定は評価対象になりますか?」


 教師は、少し考えて答えた。


「……なる」


 それだけで、

 十分だった。


 俺は、

 何もしないことを選んだ。


 資源を探さない。

 騒がない。

 告発もしない。


 ただ、

 記録を取った。


・いつ

・どこで

・何が不足したか


 事実だけ。


 感情は、入れない。


 三日目。


 評価会議。


 当然、

 複数のチームが失敗した。


「なぜ、こうなった?」


 教師の問いに、

 誰も答えられない。


 そこで、

 俺が手を挙げる。


「報告があります」


 空気が、張りつめる。


「原因は、

 資源管理の偏りです」


 淡々と、

 記録を提出する。


 そこには――

 誰が、

 どのタイミングで、

 どれだけ多く資源を使ったか

 が、全て書かれていた。


 名前は出さない。


 だが、

 見れば分かる。


 教師たちは、

 すぐに理解した。


「……なるほど」


 評価結果。


・上位貴族派閥:大幅減点

・中立派閥:評価据え置き

・一部チーム:加点


 理由は、

 「都市全体を不安定にした」。


 不正という言葉は、

 一切使われなかった。


 だが――

 結果は同じだ。


 放課後。


 リーナが、

 少し呆れた顔で言う。


「えげつない」

「合法だよ」


「一番怖いやつ」


 彼女は、肩をすくめる。


「あなた、

 敵を直接潰さないのね」

「敵を作るのは、

 最後でいい」


 噂は、

 一気に広がった。


「アルトに逆らうと、

 直接やられない」

「でも、

 気づいたら負けてる」


 ――最悪の評価だ。


 だが、

 これでいい。


(派閥は壊れてない)


 ただ、

 “絶対に安全”という前提が、

 壊れただけだ。


 それだけで、

 十分な抑止力になる。


 帰り道。


 リーナが、ぽつりと言う。


「あなた、

 領地経営とか向いてそう」

「学園の生活で精一杯だよ」


 彼女は、少し笑う。


「でも、

 この学園って――」


 俺は、頷く。


「小さな国だ」


 そして、

 俺は今、

 その中で負けない位置を

 確実に確保し始めている。


 次の段階へ進む。


 ――

 “個人”から、“組織”へ。


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