AIのせいで人気爆発!? 勇者銀子の大誤解
今日は、どうにも様子がおかしかった。
なぜか銀子指名の客がわんさか押し寄せてきて、
普段なら閑古鳥が鳴く月曜日なのにこの大盛況だ。
もちろん銀子は店の人気No.1だ。
だが、それでも──
こんなに銀子目当ての客が集中する日なんて一度も無かった。
「銀子……アンタ、やっと本腰入れて営業電話したのね……!」
ジュンコママはハンカチで涙を拭いながら喜んでいた。
(いや……その感動を邪魔しちゃ悪いけど、アタシ何もしてないんだけど?)
首を傾げていた銀子は、ふと──
あのAIのことを思い出す。
「……まさか、ね」
思わず零れた独り言に、ジュリアンがすぐ反応した。
「ちょっと銀子! 変な宗教にハマったんじゃないでしょうね!?」
「何よそれ」
「ほら、信者仲間が押し寄せて〜ってやつ」
ジュリアンの的外れな言葉に、銀子は大きくため息をついた。
「馬鹿言わないでよ。宗教に献金するお金なんて、うちには無いわよ」
それにしても……やっぱり変だ。
銀子には“こんなに客が来る理由”が全く思い当たらない。
そこで銀子は、客の一人に声をかけてみた。
「ねぇ……久しく来てなかったわよね? どうしたの急に?」
客はおしぼりで顔を拭きながら、のんきに言った。
「いやさ〜……うちのAIが、銀子が勇者になったって言うからさ。
有名になる前に会っとこうかな〜って」
「……なんですって!!」
銀子は椅子をガタッと鳴らして立ち上がり、叫んでいた。
「え? 違うの?」
きょとんとした客の顔に、銀子は頭を抱える。
「まさか……他のお客様も?」
「多分そうじゃないかな?
銀子ちゃん、すっかり有名人だね。
で、何の勇者になったの?」
呑気に尋ねてくる丸いハゲ頭を、
一瞬、本気で叩きたい衝動 に駆られながらも──
銀子はグッと堪えた。
(あのクソAI……帰ったらタダじゃおかないわよ!!)
銀子は心の中で、盛大に叫んだ。




