本名で呼ぶな!コラァ! (ヤダ、アタシったら)
明日用の原稿を、うっかりアップしてしまいました……(T_T)
今日は二話続けてお楽しみいただければ嬉しいです。
ちょっとしたハプニング、どうかお許しください
ふと物思いに耽っていた自分に、自嘲気味の笑いが漏れた。
「あらヤダ、アタシったら……らしくない」
独りごちながらため息を吐いたその時、急にガラケーが震え出した。
「え? こんな時間に電話? 誰よ!」
通知を見ると番号の表示がない。
だがコール音だけはしっかり鳴っている。
「ヤダーッ! ホラーじゃない!」
ガラケーをベッドに投げ捨てた瞬間、今度は銀子が唯一持っている最新家電──テレビが勝手に点いた。
「え? ちょっと何!? コワいコワい!」
銀子が怯えたその瞬間、テレビから
『テッテレー』
と、やたら陽気なジャングル風BGMとともに、
『おめでとうございます。
磯山銀次郎様、勇者に選ばれました』
AIの無機質な声と、ライブ会場のような歓声が流れた。
「チョット! 本名で呼ぶのやめなさいよ!」
銀子は即座にテレビへツッコむ。
「アタシは銀子よ! 銀次郎なんて呼ばないで!」
さっきまでコワいと言っていたのが嘘のように怒鳴る銀子。その背後で画面には、
『……loading』
『検索』
『銀子……該当者なし』
『現住所……磯山銀次郎 二十八歳 独身』
と無機質な白文字が並んだ。
「チョットあんた! 勝手に個人情報出さないでくれる!?
しかも、オトメの年齢まで出すなんてサイテー!」
銀子の怒声にも構わず、文字は更新される。
『……loading』
『検索』
『乙女……該当者なし』
『磯山銀次郎 二十八歳 独身 男性』
「チョット! 誰よこんな悪質な嫌がらせする奴!」
『……loading』
『勇者 磯山銀次郎』
「誰が勇者よ! 何? ドッキリ企画? 何なのよ!」
テレビに叫ぶ銀子の前で、さらに文字が流れた。
『……loading』
『ドッキリ企画……』
『【ドッキリ企画とは】
対象者に予測不能な情報を提示し、
その反応・行動・精神状況を記録する試験である』
銀子は額に青筋を浮かべて画面を睨みつけ、
「誰がドッキリ企画の説明しろって言ったんだよ!!」
思わず野太い声が出てしまい、
「あらヤダ! アタシったら……」
と口元を押さえて微笑む。
その“爽やかイケメン笑顔”が眩しい朝の光に照らされた瞬間──
『……loading』
『磯山銀次郎 容姿・性格:規格外』
「チョット! それどういう意味よ!」
『……loading』
『理解不能』
『再検証』
画面の中央で白い輪がぐるぐる回る。
銀子はため息を吐いた。
「今度は何? ったく、付き合いきれないわよ」
軽くあくびをすると、
「悪いけど、アタシは寝るわよ」
とシルクのパジャマに着替え、寝室へ向かう。
だがその瞬間、
『勇者 磯山銀次郎』
「だから! アタシは銀子だってば!」
またもテレビへツッコむ。
『あなたは世界の未来を救う勇者に選ばれました』
再び拍手と歓声が響いた。
おはようございます。
なんとか……なんとか……
継続更新できそうです!
次回の更新は 明日の朝8時30分。
銀子は本当に勇者になるのか!?
どうぞお楽しみに。
また明日、お会いできたら嬉しいです。




