表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

竜ちゃん逃亡の朝、ジュンコの店は大騒ぎ

「銀子……アンタ、また男に逃げられたんだって?」


カウンターの奥で煙草をふかすジュンコママが、ふっと呟く。


「言わないで!

アタシのクリスタルガラスの心にヒビが入るでしょう!」


銀子が反論すると、すかさずママの鋭い声が飛ぶ。


「誰の心がクリスタルガラスよ。

あんたの心は強化ガラスでしょうが。

いったい何人の男に逃げられてると思ってるの?」


「グハッ」


「二桁どころじゃないわよね?

……五十人は超えたでしょ?」


「ママ……それ以上言わないで!」


銀子が胸を押さえる横で、同僚のジュリアンが爆笑しながら言う。


「雑食の竜ちゃんにまでフラれるとか、逆に才能じゃない?

アンタの素顔、どんだけブスなのよ。

一生処女なんじゃない?」


「ちょっとアンタ!

言っていいことと悪いことがあるわよ!」


「いやぁ、でもクリスマスイブにフラれるとか……

銀子、完全に“お笑いの神”に愛されてるわよね?」


「ママ、それ言ったら……さすがに銀子が可哀想よ」


……と言いつつ、銀子以外の全員は腹を抱えて笑っていた。


新宿二丁目のオネェパブ『ジュンコの店』。

ケバケバしいメイクのオネェ様が集う、騒がしくも温かい店だ。


「もう、この界隈でアンタを抱く男なんていないわよ」


ジュリアンの言葉に、銀子は両手を胸元で組み、

わざとらしく空を仰ぐ。


「はぁ……神様……

憐れなアタシの運命の王子様はいずこ……!」


三文芝居にもならない嘆き。

だが、それもこの店の“名物”だった。


銀子はちょうどいいブス(?)で、話術は抜群。

男女問わず人気者で、『ジュンコの店』のナンバーワンである。


「え〜! じゃあ銀ちゃん、私と付き合う?」


「お黙り小娘。アンタ達じゃアタシの処女は奪えないわよ!」


「いや銀子……もう諦めなよ」


「え〜慎之介、冷たい〜。アンタでもいいのよ?」


「いや、俺は遠慮する」


「なんでよ〜!」


こんなやり取りが、今日も店内を飛び交う。



「はぁ……」


夜が明け、街が白む頃。

夜の蝶たちの仕事は終わりを迎える。


「銀子、アンタ今日もメイクしたまま帰るの?」


ケバケバしいメイクを落とす仲間たちの横を、

コートを羽織った銀子がすり抜け、店のドアを開けた。


「大きなお世話よ!

じゃあ、お先に〜」


銀子は肌寒い朝の空気に身震いし、足早に店を後にした。


本当は店でメイクを落として帰りたい。

でも、この店で働く条件はただひとつ。


「絶対に素顔を見せないこと」


銀子はため息をつく。


「アタシの素顔って……そんなに醜いのかしら……」


その呟きは、通勤客であふれる朝の雑踏にかき消された。

おはようございます!

朝更新に間に合ってしまいました、作者の古紫汐桜です笑


今日も読んでくださったみなさま、本当にありがとうございます。

そして……

「これってBL? え、BLなの……?」

と震えているそこのあなた!


安心してください。

健全なギャグSFです!!


メイクを落としたら、超絶イケメンの爽やか王子——それが銀子。

さて、この厚塗りオネェがいったいどんな経緯で“勇者”になるのか?


次話も楽しんでいただけたら嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ