幸せになれない理由、教えてあげるわ
「アンタが何歳だろうとどうでもいいけどさ──そんなことして幸せになれると思ってんの?」
銀子が冷たく言い放つと、本郷里美はギロッと睨み返してきた。
「どうせアンタ、“選ばれない女”なんでしょう?」
そのひと言に、里美の肩がピクリと揺れた。
「わがまま言って“可愛い”って言われるのは……あいつらくらいまでよ」
銀子が親指でギャル軍団を指すと、里美は悔しそうにスカートの裾を握りしめた。
「じゃあ……どうすればよかったのよ……!
二十代前半の頃は、みんな私を“可愛い可愛い”って持ち上げてくれたのに……。
中盤すぎたら、周りはみんな結婚して……気付いたら私だけ取り残されてた。
だから、私を見下したやつらを見返したくて……!」
「それで──てつおを選んだ、と」
「てつおみです」
横から凛子兄の鉄板ツッコミが入るが、銀子は完全に無視した。
「だったら、料理が趣味の男キモいなんて言わなきゃよかったんじゃないの」
呆れた声に、里美は顔を赤くしながら叫んだ。
「だって……悔しかったんだもん!
私、料理なんてしたことなくて……一生懸命作ったのに……。
翌日、私より哲央さんのほうが上手で……バカにされた気がして……!」
涙混じりに訴えるその姿に、銀子は心の中でつぶやいた。
(……二十代後半にもなって “だもん” は無いけど。
まあ、これも日本社会の歪みよね。
“若い女”が持ち上げられて、“大人の女”が蔑まれる。
キャリア積んだ女が損する構造……。
ま、この女にキャリアがあるかは別として)
銀子は親指で、なぜか靴を脱いで正座している凛子兄を指した。
「アンタさ、てつおを選んだ目があるなら分かるでしょ?
こいつがそんなことでバカにする男じゃないってことくらい」
「てつおみです」
「てつお、今はツッコミいらない」
「……はい」
しゅんとする凛子兄を横目に、銀子は静かに続けた。
「で、後悔したわけね。
どうせ“追いかけてくれる”って思ったんでしょう?」
その言葉に、里美がビクリと震えた。
銀子は深くため息をつき──
ギャル軍団と里美全員を見渡し、言った。
「アンタたちみたいな女はさ。
若さとか可愛さとか──“女である”ってだけで優位に立ってきた。
誘惑したり、女の武器を使う努力はしても……
人間力を磨く努力をしてないのよ」
みんなが息を呑んだ。
銀子はさらに静かに続けた。
「確かに、バカな男はアンタらみたいなのを選ぶ。
でもね──そういう男は大抵、女を“自分の言いなり”にしたいだけ。
アンタらを一人の人間として見てない。
そんな男に“選ばれる女”で、アンタは満足なの?」
その場に沈黙が落ちる。
銀子はふっと視線を凛子兄へ向けた。
「てつお……」
「……てつおみです」
相変わらずの訂正に、銀子は小さく笑ってから──
「アンタ、里美と復縁しなさい」
そう告げた。
里美も凛子兄も、弾かれたように顔を上げた。




