修羅場が過ぎるのよ! 勇者銀子のとんだ惨劇
「騙されている?」
「そうよ! 私、今、脅されて……怖くて……」
凛子兄の胸に縋りつき、涙を落とす里美。
その芝居がかった様子に、銀子は馬鹿らしくなった。
「もう、なんだっていいわよ。早く連れて帰って、さっさと仲直りしたら?」
背中を向けたまま吐き捨てた銀子の肩を、そっと誰かが抱きしめた。
「……てつお?」
「てつおみです。私は……貴方がいい。
銀子さん、覚悟を決めてくれるんですよね」
その言葉に、銀子は思わず涙が出そうになった。
「てつお……」
「てつおみです」
二人が見つめ合った──その瞬間。
「ちょっと待ったぁぁぁ!!」
店のドアがバンッ!と開き、凛子率いるギャル軍団が乱入してきた。
「銀子っち、兄貴なんかやめて、あ〜しと付き合ってよ!」
「ちょっと! うちとでしょ! 銀子っち、絶対タイプだし!」
何故か鼻息荒い。
「ちょっと! アンタたち何言ってんのよ!」
銀子が慌てると、凛子がスマホを掲げる。
「だってさ〜兄貴から銀子っちの素顔の画像もらったんだもん」
画面には──寝顔の“素顔の銀子”。
「ちょっ……てつお!! ど〜いうことよ!」
銀子が胸ぐらを掴むと、てつおみは慌てて叫んだ。
「違うんです!
凛子から“本当に銀子さんと朝を迎えたか証拠写真送れ”って言われて……!」
凛子兄の必死の言い訳の横で、里美も画面を覗き込み──
「……マジ? すっごいイケメン!」
ギラッと目つきが変わった。
銀子は頭を抱える。
「アタシ、女を好きになるとか無理なのよ」
するとギャルが肩をすくめながら──
「えー! 今は無理ゲーでも、人生わかんないっしょ?」
「そうそう、銀子っちウチらの魅力に気づくかもだし?」
きゃははは、と自由な笑い声。
「無理だから!! とにかく、アンタたち全員そこに座りなさい!」
銀子がソファーを指差すと、全員がワタワタと腰を下ろす。
銀子は一人ずつ指差し──
「まず、凛子たち。アンタらはアタシから見たら“オムツ履いた小娘”なの。だから却下!」
「え──っ!」
「オムツなんか履いてないし!」
抗議の声が飛ぶが、銀子は完全スルー。
横目で見ると、里美がほくそ笑んでいた。
銀子はその顔を見下ろし、
「ちょっと、“偽装妊娠女”! アンタ、何余裕ぶってんのよ!」
里美はぷくっと頬を膨らませた。
「偽装……ちょ、ひどい!」
「アンタ、いい歳してそんな顔しても可愛くないわよ」
「いい歳って何よ!」
里美が怒鳴る横で、凛子たちギャルは「きゃははは」と大笑い。
銀子は腕を組み、じっと見下ろす。
「で? アンタ、いくつよ?」
里美はプイッと顔を逸らす。
「女性に年齢聞くなんて、非常識だわ」
銀子は冷ややかに笑った。
「はいはい。
女性に年齢聞くのが非常識なら──
“偽装妊娠”ってのは非常識じゃないのかしら?」
鋭い視線のまま、里美を見下ろした。




