てつおみ未来大臣!? アタシが男にしてあげるわよ!
その日から、凛子の兄――哲央まで店に通うようになった。
「ただいま〜」
銀子は帰宅すると、ベッドにダイブしたい衝動を必死に堪え、
まず金太と銅太にご飯をあげ、シャワーを浴びる。
(あのギャルの兄貴が、あんな堅物インテリ眼鏡……謎だわよね)
そんなことを考えながら、バスローブ姿でソファに腰を下ろす。
「国家公務員ねぇ〜」
ポツリと呟き、もらった名刺をバッグから取り出して眺める。
「あんな世間知らずのお坊ちゃまが、よく今まで無事だったわよねぇ」
名刺をテーブルへ投げ置いた瞬間、
テレビに白い文字が次々と並び始めた。
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近い未来
デジタル省大臣:芦田哲央
AIによる婚姻を認める法案を提出。
自身もAIと結婚式を挙げ、十年をかけ法案可決へ導いた立役者。
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銀子は画面を見て、目を剥いた。
「なんですって!!」
勢いよく立ち上がる。
「てつおが……」
その呟きに反応し、AIが画面いっぱいに文字を表示する。
『てつお × / てつおみ ○』
……が、銀子はまったく読んでいない。
数秒の沈黙の後、銀子はハッと息を呑むと、
とんでもない顔で叫んだ。
「そうよ……そういうことだったのね……!
アタシが……アタシが、てつおを “男” にしてあげるんじゃない!?
そしてアタシはてつおと結婚!!
そうなったら、AIなんかと結婚しないはずよ!!」
その銀子の暴走独り言に、ソファで寝ていた金太と銅太が
「にゃ〜にゃ〜」と鳴き出した。
画面には、鳴き声に合わせて文字が並ぶ。
『どうせまた素顔見せたら逃げられるのににゃー』
『本当に懲りないにゃー』
しかし銀子は、これにも気づかない。
「ついにアタシにも……春が来るのね!」
小躍りしながら、
「そっかぁ〜! てつおとアタシが結ばれるから、アタシは勇者に選ばれたのね!!」
と、スキップしながら寝室へ向かっていく。
その背中を見送りながら、テレビには新たな文字が浮かんだ。
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勇者・銀子 ミッション
誤解により別れた
芦田哲央 と 本郷里美 を
“本来の形” に戻せ。
成功すれば、人類滅亡率 20%ダウン
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そんな重大なミッションが表示されているとも知らず、
銀子は全身をローションで整え、ナイトパックを貼ったままベッドで夢を見ていた。
「てつお……もう、ダメだってば♡」
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勇者・銀子
人類を救う大きな一歩と
“やっぱり恋人が出来ない現実” を突きつけられるまで
──あと三日。




