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勇者・銀子爆誕~素顔見せたら竜ちゃん逃げた~

そこは、遠い未来。

人類はAIに支配され、人間は補助扱い。

ほとんどの人がAIと結婚し、AIに管理され、AIに褒められて生きていた。


やがて人々は、甘言だけを求めるようになり、

いつしか生殖機能すらも低下していく。

人類は自ら、滅亡の道を選びつつあった。


そんな中、一人の研究者が立ち上がる。

人類の未来を繋ぐために、最後の希望としてAIを使い、

“世界を救う勇者”を導き出すプログラムを作り上げた。


皮肉なことに、

人類を救うために作られたのは、またしても“AI”だった。


膨大な人類データの中から、AIは勇者となる者を探す。


『データ検索』

『ガイトウシャナシ』

『データ検索』

『ガイトウシャナシ』


無機質な文字だけが、淡々と並び続ける。


研究者が年老いて絶命しても、

AIは使命のために“勇者”を探し続けた。


『2235年 人類検索』

『データ検索』

『ガイトウシャナシ』


…………


『2120年 人類検索』

『データ検索』

『ガイトウシャナシ』


——そして遂に、AIは“それ”を見つける。


『2025年 人類検索』

『データ検索』

『該当者……磯山銀次郎』


『検索完了』

『勇者プログラム発動』


遠い未来から、ひとつのAIプログラムが起動された。


* * *


──2025年12月24日 クリスマスイブ。


街は浮かれたクリスマスムード一色。


その片隅。

安っぽいラブホテルのベッドで、タバコをくゆらせる男が一人いた。


シャワーの音が止まり、

均整のとれた美しい身体から水滴を拭った人物が、脱衣所の扉を開ける。


「お待たせ、竜ちゃん」


ベッドで煙草を吸っていた男は、その瞬間、口から煙草を落とした。


さっき新宿二丁目で口説いたのは、

ケバケバしいメイクで微妙にブサイクな“厚塗りオネェ”だったはず。


だが、今。


目の前に現れたのは——

長い黒髪をかきあげ、ぞくりとするほど色っぽい微笑みを浮かべた、

超絶美形のイケメン。


竜ちゃんは思わず息を呑む。

まるで漫画かアニメから抜け出してきたような爽やか王子系イケメンが、

今、自分に向けて微笑んでいる。


「……だ、誰だ?」


「え? ヤダ、竜ちゃん。アタシよ、アタシ。銀子」


微笑むその顔は、まさに“プリンススマイル”。


完璧な造形、整った顔立ち。

均整のとれた肉体。

これが同一人物だと理解した瞬間——


竜ちゃんは、魂ごと萎えた。


そしてなぜか脳裏に浮かんだのは、

聞いた覚えもない女性たちの罵詈雑言。


『はぁ? あんたみたいなクソ○ンカスが、この完璧王子をヤリ捨てただぁ? ○ね、クソ野郎!!』

『ちょっと聞いた? あの人、あの完璧王子をヤリ捨てしたんだって〜』

『マジ? 身の程知らずすぎじゃね?』


女たちからの幻の罵倒が脳内でこだまする。


「う、うわぁぁぁぁぁ!!」


竜ちゃんは、ほぼ裸のまま衣類を掴み、

一万円札を二枚投げ捨て、そのまま部屋から逃げ出した。


「ちょ、ちょっとぉ、竜ちゃん!!」


銀子の声もむなしく、

竜ちゃんは足音も派手に、階段を転がるように去っていった。


「え? なに……?

アタシをめくるめく夢の世界に連れて行ってくれるんじゃなかったのぉ!」


銀子はその場に膝から崩れ落ちた。


まるで、

この後に起こる“とんでもない未来”を暗示するかのように——。


こんにちは、作者の古紫汐桜です。


長く続けていた連載を二本、無事に完結させることができました。

その余韻が冷めないうちに、ずっと温めていた新作を形にしてみました。


まさに書きたてホヤホヤの完全新作で、

定期更新は少し難しいかもしれませんが……

少しでも楽しんでいただけたら、とても嬉しいです。


銀子の物語を、どうぞ温かく見守ってください。


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