2.オリエンテーション
ぼっち入学式を経て、今日は学部別オリエンテーション。
新入生へ大学側から、学校生活に関する、あらゆるガイダンスが行われる日だ。
入学式、ぼっちだったのは仕方がない。
地方から上京してきた俺に、友達がいる方がおかしいのだから…!
入学式は親と来ている人も多く、誰が同じ学部かも分からなかった為、友達を作るような雰囲気ではなかった…
今日のオリエンテーションでこそ、俺は友達を作るのだ…!!
…そう企んでいました。
いざ、ガイダンスの為に、大きな教室に入ると、そこには奴がいました。
そう、あの様子のおかしい美少女、虎谷リサが…!
彼女は、Tシャツにジーパンと、実にどこにでもいる普通の女子大生の恰好をしていた。
普通じゃなかったのは声のボリュームだ。
「あっ!カヲル!こっちこっち!席とっておいたわよ!」
声がでかい。
めちゃくちゃ目立ってる。
てか、あいつ学部一緒だったのかよ…!
最悪だ!!
俺は聞こえないフリをして、別方向へと向かった。
捕まった。
「ちょっとアンタなんで無視するのよ!?」
「ナンデムシスルノヨ⁉、じゃねぇよ!うるさいんだよ!なんでお前ここにいるんだ!」
「そんなの同じ学部なんだから当たり前じゃない、馬鹿ね」
うそだうそだうそだ…
この間のサークルの話、うやむやにしようと思ってたのに…
「ちょっと!?聞いてるの!?アンタの席とっておいたから!ガイダンスの合間にサークルについて話しましょ!」
「ちょっと待て!なんでお前、俺と学部同じの知ってたんだ!?俺ひとこともお前に学部の話なんてしてないぞ?」
「あんたの部屋にあったパンフレット見たのよ」
「勝手に見てるんじゃねえよ!!!」
その時、俺は我に返った。
そして、恐る恐る周囲を見渡した。
めちゃくちゃ見られてる。
「…いっかい座る」
「最初からそうすればいいのよ」
俺は、イラっとした。
席に着くなり、奇天烈ちゃんは話し始めた。
「サークルなんだけどね、今日の朝、学生部に作り方聞いてきたわ!」
行動が早い…
「なんか、設立自体は何人でも出来るらしいのだけど、大学公認?になるためには、最低5人のサークル員が必要らしいの…」
なんか一丁前に残念そうな顔をしている。
「別に公認じゃなくてもいいじゃねえか」
「は!?あんたやる気あるの?」
「やる気もクソも、サークルの件、まだ返事もしてねえぞ!」
俺は言ってからハッとした。
ハチャメチャ少女は涙目になっていた。
周囲の目が一斉にこちらへ向いている、気がする。
正直、周りを見れない。
「わ、わかった!わかったから泣くな!な?」
すると彼女はケロリと無表情に戻り、続けた。
「公認じゃないと部室が貰えないのよ。欲しいでしょ?部室」
コイツ…!卑怯な…
「聞いてる?部室よ部室!」
「ああ…部室な…」
俺は諦めていた。
とにかく話を聞くしかない。
そして、ふと、単純にして当たり前の疑問が浮かんだ。
「そういえば、まだ聞いてなかったけど、結局何のサークルを立ち上げるんだ?」
すると、彼女は得意げな顔をし、口を開こうとした。
「はい、では皆さん着席して下さい」
いつの間にか教室の前に来ていた教授がマイクで語りかけた。
リサのサークル活動内容に関する重大発表は見事に遮られた。
彼女の顔は真っ赤だった。
艶のある黒髪とのコントラストが…綺麗…だった…




