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インフィニティ ~美少女隣人にサークルを作ろうと強引に誘われました~  作者: ねくら


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1/6

1.出会い

俺の名前は光野(こうの)カヲル。

春から東京のK大学に入学予定だ。


入学に先立ち、地元を離れ、大学近くのアパートで一人暮らしを始めた俺は、引っ越し初日からトラブルに巻き込まれていた。

頭のおかしい隣人に絡まれていたのだ。


「だーかーらー!二人でサークル作ろうって言ってるの!!」


見た目はすごい美少女だ。

朝ドラ主演の清純派女優、と言われても信じてしまう程だ。

黒髪ボブに大きい目。

部屋着であろうTシャツからスラっと伸びた白い手。


その手の先が俺の目の前に突き出されている。

人を指ささないでほしい。


「あなたK大なんでしょ?じゃあ私と一緒よ!一緒に新しいサークルを作りましょう?」


この奇天烈美少女も数分前までは大人しかった。

たまたま部屋を出たタイミングが同じで、彼女とバッタリ遭遇した俺は、隣人がこんなに可愛い子なんてラッキーと思ってしまっていた。


さらに


「もしかして春からK大ですか?」


なんて話しかけられた時にはこんな展開あっていいのかと思った。


そこでYESと答えてしまったが運のつき、一緒にサークルを作ろうなどと言い出し始めたのだ。


正直、大学に入って何をやるかなど全く決めていない。

それでも俺は、初対面でいきなり一緒にサークル作ろうと言い出す方とは距離を置きたいのだ。


「すみません。間違えました。よく考えたら春からK大じゃなかったです。」


俺は部屋に戻ろうとした。

引っ越しの手続きが色々と終ってないので、一刻も早く区役所等に行きたいところだが、付いてこられてもたまらない。

後退だ。


ドアを閉めようとすると、彼女は半身をつかって、止めてきた。

まじか。


「あの!ほんと勘弁してください!間違えちゃったんです!」


「春から入る大学を間違えるバカがどこにいるのよ!話を聞きなさい!」


もういっそのことドアを思いっきり閉めて、コイツの細い身体を真っ二つにしてやろうかと思っていた矢先、廊下から声がした。


「あの~…」


大家さんだ。


「すみません、他の住人の方に迷惑なので~…出来ればお静かに~…」


二人声を揃えて謝った。


「「申し訳ございませんでした!」」


引っ越し初日から怒られてしまった。

なんという災難だ。


俺は鍵を閉めると、一旦お茶でも飲んで落ち着くことにした。


「私は紅茶で良いわよ」


「おっけー」



「ってお前いつの間に入ったんだよ!!!」


彼女は新品の座椅子の上に座り、これまた新品のローテーブルに両肘を乗せていた。


「油断したわね」


彼女はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

とても美少女がして良い表情ではないぞ。


俺は深いため息をついた。


「はぁ~…分かったよ。話だけ聞いてやるから、そしたら出てけよ?」


「初めからそうすればいいのよ」


イラっとしたがスルーだ。

早く話を適当に聞いて、出て行ってもらおう。


俺は彼女と向かい合わせに座り、尋ねた。


「で?サークルを一緒に作るって何だよ?初対面の人間に普通言うか?そんなこと」


「普通ってつまらないこと言うわね、あなた。私はまさにその『普通』が嫌いなの。だから、サークルも普通の所には入りたくない。だから自分で作るのよ!」


まあ理屈は分かる。

でも…


「何でそれに俺が巻き込まれるんだよ?」


「そりゃ、隣人が同じ大学の新入生と分かれば、誘うほかないでしょうよ!」


「それだけか?」


「それだけよ?」


俺は呆気にとられた。


こういう展開だと、何か並々ならぬ熱い想いとかあるんじゃないのか?

めちゃくちゃうっすい理由しか述べてないぞコイツ!!


もう話を聞く気が失せた。


「帰ってくれ」


「じゃあ一緒にサークル作るってことで良いわね?」


「良いとは一言も言ってないぞ!俺は知らないからな!ホントに!」


「そ、そんな…」


彼女は急に声を震わせ始めた。


今度は泣き落としか?

その手には乗らないぞ?


「そんな泣き真似したって知らんぞ俺は…」


彼女の頬を涙が伝った。


「お、おい…ほんとに泣くことないだろう…わかった。わかったよ。少し考える時間をくれ。今日すぐに返事は出来ない。まだ何のサークルかも聞いてないし、お前の名前だって…」


「今、考えるって言ったわね?」


彼女はパッと泣き止んだ。

コイツ…!


「はい!言質頂きました~!」


「いや待て、やっぱなし!ずるいぞ!」


「駄目よ。男に二言ないでしょ?」


彼女は玄関へと向かっていく。

俺は部屋からその背中を眺めながら思った。

嵌められた…


虎谷(こたに)リサよ」


彼女を開きながらつぶやいた。


「え?」


俺は思わず聞き返す。


「名前。虎谷リサよ。あなたは?」


「光野カヲル…」

 

「カヲルね。カヲル…ふふ。楽しい大学生活にしましょうね!」


彼女は笑った。


こうして俺の引っ越し一日目が終わり、大学生活は幕を開けたのだった。


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