ギャルもどきはいい子だった!
ハーパン好きな方へ。ごめんなさい。最初は紺色ハーパンと長めスカートにしていたのを、別設定へと変更しました。
男子高校生のあなたは、校舎内の廊下を歩いている。
目的地のある最上階に行こうと、のぼり階段のほうへと曲がる。
この時、上のほうにいる同級生が、あなたの視界に入った。
ベージュのカーディガンの背中で垂れるのは、薄い茶色のロングヘア。
その女子は、紺と白のチェック柄のミニスカートの下に、深緑色の短パンを穿いている。
彼女のスカートは非常に短く、あなたのいる位置からだと短パンのお尻側が見えてしまっていた。
ちょうど彼女が階段をのぼり終えた頃に、あなたは階段をのぼり始める。
あなたは図書室に着くまでの間、ずっと疑問を抱いていた。なぜなら、あの女子の見た目はいわゆるギャルであり、下着を隠す短パンを着用するようには思えなかったからだ。
最上階の奥にある図書室にて、彼女と合流する。
あなたも彼女も、今日の放課後は図書委員の当番だった。お互い別のクラスなので、この時ぐらいしか二人の接点がない。
当番の間は割と暇で、特に何も問題は起こらなかった。
終了後、なんとなく一緒に横並びで歩いて、図書室を後にする。
あなたは彼女の姿を見ていた。
「……なんで私のほうをじっと見てんの?」
そんなふうに思われてしまったらしい。
言ったらきっと変に思われる。そうあなたが話したら、
「別に気にしないから、話してくれる?」
と返されたので、あなたは彼女に伝えた。
図書室に向かう際、たまたまスカートの中を見てしまって、ギャルでも短パンをはくのかと疑問に思ったことを。
「あー、そういうことぉ」
あなたが正直に話しても、彼女は本当に気にする様子はなかった。それどころか、
「まず間違ってるんだけど、私、ギャルじゃないよ?」
意外な事実が判明する。
でもギャルっぽく見えるじゃないかと、咄嗟にあなたは反論した。
「私の見た目がこんななのは、ただ、だらしないだけ。私なんかと本物のギャルが同じにされたら、本物に失礼だよー。髪もね、派手にしたいとかじゃなくて、好きなコーヒーの色だしー」
薄茶色の長い髪を少しつまんであなたに見せながら、彼女は話す。
そうなんだと口にしつつも、あなたはやはり、この女子の見た目がギャルにしか思えなかった。それっぽいアクセサリーを色々と装着しているし、一番上のボタンを開けたブラウスの襟の赤リボンはかなり垂れ下がっているし……。
途中、誰もいないところで彼女は止まった。
あなたも気づいてすぐに止まった。
彼女はあなたの前に来た。
背負っていたカバンを廊下に置いた。
「こういうの、もしかして好き?」
唐突に、彼女はあなたの正面でミニスカートをたくし上げる。
深緑色の短パンが見える面積が絶妙で、あなたは彼女の繊細な手つきに美しさも感じた。
見とれていて、つい返答を忘れそうになった。あなたは彼女に好きだと答えた。
「私のことも~?」
それは答えられなかった。
「今のは冗談ね。もしギャルならさ、下着が見えてもきっと気にしないから、下に短パンは穿かないでしょ」
スカートをめくったまま彼女は自論を語る。
「そう思うよね?」
疑問形だったものの、あなたに同調を強要する感じでもあった。まだたくし上げを続けている。
短パン着用だからギャルじゃないとは言い切れない。あなたがそのように答えると、
「ギャルじゃねーから」
彼女はむしろ不良っぽい口調になっていた。
ただ、ギャルかどうかは関係なく、かわいい。ということも、あなたは話した。
「ありがとー」
機嫌の良い声だった彼女は、ようやくミニスカートを元に戻す。
その後、彼女はカバンを持ち上げて、歩くのを再開した。あなたも同様にする。
やがて彼女の髪の色のコーヒーの話になり、あなたがおいしいのか気になると言ったら、
「学校から近いから、一緒に行こっか」
という展開になった。
到着した喫茶店は、代金が先払いだった。自分が誘ったようなものなので二人分を支払うと、あなたは彼女に申し出た。
「いいよー、気にしないで。そこまでしてもらったら悪いよ~」
そう彼女が言ってくれたので、お互い自分の分だけを払うことになった。思っていたより料金が高かったので、あなたとしては助かった。
彼女とは一緒に美味しいコーヒー……トッピングありのアイスがのった人気メニューを飲みながら、店内でくだらない話をした。
「マジでくだらねー」
実際、彼女もそんなふうに喋っていた。
思い返してみると、彼女は図書委員での仕事っぷりはいつもまじめだったし、今の雰囲気も明るい女子といった印象なので、ギャルという先入観はもう消えつつある。ギャルにも良さはあるのだろうけど、今は彼女の良さのほうが気になった。
「どうだった? 私のおすすめ」
彼女の問いに答えるのは簡単だった。美味しかったとあなたは即答する。
「でしょ~っ!」
想像以上に好ましい笑顔が返って来た。
本日、あなたは単純かつ重大な事実に気づく。――彼女はかわいかった。
別に彼女の短パンを見たり、見せてもらったりしたことだけで、そう思っているわけではない。あの記憶は薄れそうにないけれど。
彼女が魅力的だと分かったことは、本日最大の収穫だろう。
しかも今日一日で、彼女からの好感度はだいぶアップしたっぽい。
そうでなければ、
「また来ようね」
帰りにこんな優しい朗報を耳にはしない。
(終わり)
ギャルっぽい女子、造語『ギャルぽじょ』を書きたかった、というのが本作の執筆理由です。あと、ミニスカート短パンも。
最後までお読み下さり、ありがとうございます。