無意味
三題噺もどき―よんひゃくななじゅういち。
足元に蕾が落ちてきた。
「……」
膨らむ前の。
なりきれなかったもの。
美しい花を咲かすこともできずに。
ただ落ちていくだけでのその生を終えたもの。
「……」
ぼとりと、落ちてきたそれは。
もうどうしようもなく。
救いようもなく。
ただそこで朽ちていくだけ。
美しく咲き誇る同じ花をただただ見ることしかできない。
「……」
成功していくモノを。
なっていくモノを。
自分は何もできずに。
なすすべもなく見せつけられて。
「……」
羨ましいとも。
悔しいとも。
妬ましいとも。
想わずに。
仕方ないと諦めて。
ただ朽ちるままに身を任せるだけ。
なんとなく。
ぐしゃりとつぶした。
足元に骨が一つ落ちていた。
「……」
目の前にはたくさんの骨格標本が並んでいる。
陸海空ありとあらゆる生き物の標本。
生きた時代も問われずに並ぶ。
大きさもまばらに並ぶ。
死んでも尚、見世物にされるなんて。
だれも考えたことはないだろうな。
「……」
しかしさて。
この落ちている骨は何の骨だろう。
どの生物にもありそうな骨だ。
サイズも微妙で分からない。
そもそもこうもたくさんの骨格標本が並んでいては、探しようもないだろう。
専門家でもない限りすぐには見つけられない。
「……」
まるで、パズルのピースだ。
いくら探してもピタリとはまる場所がない。
確かにどこかにあるはずなのに、だれにも見つけられない。
そのまま忘れられていくだけなんだろう、こんなもの。
最悪捨てられるのが落ちだ。
使えないものは、そこにはいらない。
なんとなく。
からんと蹴った。
「……」
ズキズキと痛みがして。
目が覚めた。
「……」
頭痛で目覚めること程最悪なことはない。
気分が悪くて仕方ない。
まだ吐き気までしないからましか。
「……」
重たい体を持ちあげる。
妙な夢を見たような気もするが、覚えても居ないので大したものでもないんだろう。
少し気分が悪いが……これはきっと頭痛のせいだ。
「……」
なんとなく、深呼吸をしてみる。
これで治るわけでもないんだが。
さて。
今日も無意味に。
お題:骨格標本・深呼吸・蕾