届かぬ声
…ああ
"凍ってしまう"
…早く眠らなければ
嗚呼-ーーー。
余りの寝心地の悪さに青年は目を覚ました。
ゴツゴツと身体に当たる"それ"は硬く、試しに持ち上げてみるならば、ずっしりとした重みと冷たさが感じられた。
??
不思議と"それ"は強く握るごとに小さくなっていく。
同時に"それ"を握っている自身の掌もじわじわと痛み始めてきた。
……??
やがて、"それ"は形も残さず無くなってしまった。
掌には残留した痛みと
----
を残して。
…この気持ちをなんて言うのだっただろうか。
思い出せない、忘れてしまった。
じんじんと痛む自身の掌をただ見下げ、考えに耽るが一向に思い出せないのだ。
………。
ーそしてどのくらい経っただろうか。
いつの間にか数十メートル先には闇一色だった世界に光が差し込んでいる。
あの光の先には何があるのだろうか、、、
暗いこの世界は嫌だ。
ああ、この気持ちもなんて言うのだっただろうか。
たが、考えと同時に足は動いていた。
少年は先程まで考えていた事を忘れ、ただその光を求める本能に従い必死に足を進めた。
だが、たった数十メートル走っただけで息が切れる。
身体が重い。
光の先は視界がぼやけ、まだはっきりと目に映すことは出来ない。
仕方なく少年は一度頭を下げて、その間に乱れた呼吸を整える事にした。
そして、落ち着きをとり直した所で膝に乗せていた手を離しゆっくりと顔を上げた。
目が慣れていくつれその感情は高ぶり始める。
その光景は、山々と広大に広がった草原、聴覚には鳥の歌唄と川の伴奏。
そして嗅覚には風と共に木々や草花の甘い匂いが運ばれる。
ああ、この気持ちだけは分かる。
「…美しい」
というのだろうか。
この美しさはどれだけ見ても飽きない。
自身の髪を揺らす風の匂いも。
ただこの光景じっと眺め、感じる。
それだけでなんともいえない気持ちになる。
先程の暗闇の世界にいた時には無かった思い。
もっと感じていたい、と。
だが、その思いは長く続く事はなかった。
ーガサッ