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(ゆ)  作者: 七宝
3/6

健一

 なんで俺が捕まらなきゃならねぇんだ。俺は娘を殺したやつを殺しただけじゃないか。なんで俺が⋯⋯


「健一さん⋯⋯私はね、思うんですよ」


 なぜか目の前には袈裟を着たハゲ頭のジジイがいて、なにやら説教くさいことを延々と話してやがる。カウンセリングってやつなのか?


「こんなことをして、娘さんは喜ぶのでしょうか。お父様が殺人犯になってしまって、喜ぶのでしょうか」


 こいつらに俺の気持ちなんか分かりっこねぇし、こんな奴らに分かってほしいとも思わねぇ。


「だからですね、もう人を殺してはいけませんよ。2人目を殺してしまう前で良かったです。仏様がそうしてくださったのでしょう」


「娘を殺されたんだ。なんでその相手を殺しちゃいけねぇんだよ⋯⋯」


「彼らは殺してないでしょうが!」


「殺したも同然だ!」


「復讐は何も生まないんです! 娘さんはそんなこと望んでいないんです!」


「あんたが娘のなにを知ってるっていうんだ! 声すら知らねぇくせに!」


「うるせーバーカ!」


「なんだと!」


「あ? やんのか!? あぁん!?」


「坊主がそんな態度でいいのか!」


「いいのだ!」


「殺してやる!」


「上等だコラ!」


「死ねぇ!」


「お前が死ねバーカ!」


 坊主と取っ組み合いの喧嘩をしていると、部屋の扉が開いた。


「2人ともおやめなさい」


 変なババアが入ってきた。


「林健一さん、座ってください。私は霊能力者のユメコと申します」


「霊能力者がなんの用だ」


「娘さんの霊を降ろしました」


「はぁ?」


 なんのつもりだ? 何を言うつもりだ? こいつ。


「私はもう大丈夫だから、もう人を傷つけないで、と言っています」


「大丈夫なわけねぇだろうが!」


 ババアに掴みかかると、後ろから警官に棒で殴られた。頭が割れそうに痛い。俺が悪者なのかよ。


「こんな自制の効かない暴力マシン、救いようがありませんわ!」


 霊能力者はそう言って俺に唾を吐き、部屋を出ていった。


「バーカバーカ! あっかんべー!」


 坊主も続いて出ていった。


 なんでどいつもこいつもガキの味方をするんだ。どう考えたってかわいそうなのはこっちじゃねぇかよ⋯⋯


 こうなったら、法廷で洗い(ざら)いぶちまけてやる。絶対に許さねぇ。寿樹も道連れだ。地獄の果まで追いかけてやる。

 自殺じゃねぇんだよ。あいつらに殺されたんだよ。


 自殺じゃねぇんだよ。


 どいつもこいつも法律法律。人の心なんか残っちゃいねぇ。


 誰がなんと言おうが自殺じゃねぇんだよ。なんで分かんねぇんだよ。

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